●螺鈿【らでん】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
螺鈿
らでん
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デジタル大辞泉
ら‐でん【×螺×鈿】
[補説]書名別項。→螺鈿
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らでん【螺鈿】[書名]
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世界大百科事典 第2版
らでん【螺鈿】
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家とインテリアの用語がわかる辞典
らでん【螺鈿】
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食器・調理器具がわかる辞典
らでん【螺鈿】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
螺鈿
らでん
漆工芸の加飾技法の一種。貝殻を荒砥(あらと)やグラインダーなどで各種の厚さに摺(す)ったものを文様に切り、木地(きじ)や漆地(うるしじ)の面に貼(は)り付けたり、はめ込んで装飾する技法。
螺鈿の名称は、天平勝宝(てんぴょうしょうほう)8年(756)の『東大寺献物(けんもつ)帳』に記載のものがもっとも古い。まだ文献にはみえないが、中国・唐の用語と思われ、後世宋(そう)代の『爾雅翼(じがよく)』に鈿螺の文字がある。類語として他の文献では坎螺(かんら)、(せんでん)、
嵌(でんかん)、鈿螺(でんら)、陥蚌(かんほう)と異称し、蜔(でん)、甸(でん)、填(でん)の文字を鈿にあてている。日本では、平安時代以降に、貝摺(かいすり)、青螺(あおかい)、青貝という用例がみられ、また螺鈿、鈿螺、螺填、蜔嵌(でんかん)と書いて「アヲカヒ」と呼称している。螺はもともと栄螺(さざえ)のような渦巻形の貝殻をさしたが、鮑(あわび)貝、夜光貝、蝶(ちょう)貝、鸚鵡(おうむ)貝、蜆(しじみ)貝、メキシコ貝なども用いる。摺った貝板の厚さは100枚重ねを単位とし、2分5厘(8.25ミリメートル)のものは薄貝、これより薄いものを絹磨(ず)りという。厚貝は4寸(132ミリメートル)のもので、より厚さを要するときは丸貝を用いることもある。鈿の原意は金華(かねかざり)で、黄金の髪飾りをさし、玉(ぎょく)や貝で飾ることをも称するようになった。
[郷家忠臣]
技法
まず貝板から文様をつくる方法は、大別して次の3種に分けられる。(1)切り抜き法 厚貝に適し、糸鋸(いとのこ)で挽(ひ)いたのち鑢(やすり)や砥石(といし)で仕上げる。(2)打ち抜き法 薄い貝板を型で打ち抜く方法で、鏨(たがね)を用いる。(3)腐食法 薬品(塩酸)を用いるもので、薄貝を貼ってから表面に文様を漆で描き、その上を塩酸のついた刷毛(はけ)でなでると、漆のない部分は腐食して消滅する。それをすぐ水洗いして漆を剥(は)ぐ方法。
次に貝板を木地に接着する方法としては、(1)木地を彫り込み、そこへ貝板をはめる嵌入(かんにゅう)法。(2)木地に貝板を貼り、周りを漆で塗り埋めたのちに研ぎ出す付着法。(3)厚く漆を塗った地に貝板を押し込む押し込み法などがある。
[郷家忠臣]
歴史
螺鈿の起源は明らかではないが、古代エジプトのハダク文化期(前3500ころ)の装身具や器物に、貝殻を細工した装飾例がみられるところから、地中海沿岸の諸国に伝わり、しだいに加飾法として進展したものと思われる。
東洋における螺鈿は、中国の殷(いん)代にすでにあったとする説と、ササン朝ペルシアをはじめとする西方の国々からシルク・ロードを経て唐に流入したとする説があり、後者が有力である。このことは、正倉院に伝わる西方系の楽器である螺鈿紫檀琵琶(したんびわ)や、螺鈿紫檀五絃(ごげん)琵琶、玳瑁(たいまい)螺鈿箜篌(くご)などから推測される。また正倉院の沈香木画箱にみられるように、紫檀材などの木地に琥珀(こはく)、玳瑁(べっこう)、水晶、珊瑚(さんご)、象牙(ぞうげ)、玉(ぎょく)などを併用している。正倉院宝物の漆地の螺鈿品は、螺鈿箱、箜篌の2点しかみられないので、螺鈿は本来、漆工よりもむしろ木工技術のもとにあったとする説もある。螺鈿はまた金工品にも施された。わが国では正倉院の平螺鈿背(へいらでんはい)円鏡をはじめ8面の遺例があり、中国には1962年に河南省洛陽(らくよう)の16工区76号唐墓から発見の花鳥人物文平螺鈿背鏡、韓国にも同種の鏡が出土するなど、国際化を証する好例である。
平安時代には、唐風の木地螺鈿から漆地螺鈿へと主流が移ってゆくが、とくに表現・技法の面で和様化を遂げるのは、藤原道長が政治を支配した11世紀初めごろで、貴族の室内調度に蒔絵(まきえ)と螺鈿の技術の併用もみられるようになる。黒漆地螺鈿の代表的遺例に洲浜鵜(すはまう)螺鈿硯箱(すずりばこ)や鳳凰(ほうおう)円文螺鈿唐櫃(からびつ)、萩(はぎ)螺鈿鞍(くら)(ともに東京国立博物館)があげられ、蒔絵との併用では片輪車(かたわぐるま)螺鈿蒔絵手箱(国宝、東京国立博物館)、沢千鳥(さわちどり)螺鈿蒔絵小唐櫃(国宝、和歌山・金剛峯寺(こんごうぶじ))がある。日本の景勝、風物に基づく意匠が繊細優美な感覚によって表されており、10世紀末ごろにはすでに中国、朝鮮でも高く評価された。988年(永延2)に奝然(ちょうねん)が弟子嘉因(かいん)に託して宋の王室への進物品に螺鈿の品々を贈ったり、1015年(長和4)に藤原道長が宋の天台山大慈寺に螺鈿蒔絵厨子(ずし)などを寄進している。また1073年(延久5)、高麗(こうらい)の王室へ鞍、鏡箱、硯箱などを王則貞らが贈っている。とくに注目すべきは、北宋の方勺(ほうしゃく)が著した『泊宅編』に「螺鈿器はもと倭(わ)国に出(い)ずる。物象百態、頗(すこぶ)る工巧を極む」とあって、螺鈿技術のおこりが日本であり、多様な意匠が精巧を極めていると評価していることである。このことは螺鈿の中国での衰微をも示している。
鎌倉時代にはますます螺鈿の技術は進み、時雨(しぐれ)螺鈿鞍(国宝、東京・永青文庫)では不整形の曲面に螺鈿だけで絵画的な文様と文字を表した巧緻(こうち)な技にまで達している。朝鮮の螺鈿が著しく発達したのも高麗時代(918~1392)以降で、官営の「中尚署」で螺鈿匠によって制作され、中国宋朝で非常に尊重されたことが文献によって知られる。1272年には「鈿函造成都監」を設け、『大蔵経』を納める箱を大量に制作した。高麗(こうらい)螺鈿は、立菊や菊唐草の文様からなり、縁には連珠文や星形などを巡らし、境界線や茎などに銀、錫(すず)、真鍮(しんちゅう)の縒(より)線を用い、貝裏に彩色したり、玳瑁を貼るなどの技法もみられ、わが国にも菊花文螺鈿経箱(東京国立博物館)や花文螺鈿玳瑁合子(奈良・當麻(たいま)寺奥院)の遺例がある。
室町時代には日本の螺鈿は低迷したが、中国明(みん)代の薄貝を用いる技術が新たに伝わる。さらに桃山時代には、李朝(りちょう)期の朝鮮から割貝法や青貝法が伝わって、織田有楽斎(おだうらくさい)の考案という明月椀(めいげつわん)や、南蛮意匠の器物に応用されている。江戸時代には鮑の厚貝を使い独得な表現を試みた尾形光琳(こうりん)や、薄貝でモザイク文様を表した杣田光正(そまだみつまさ)、彫刻した貝を嵌入する芝山仙蔵などの精巧ではでな作品が世に出た。なお沖縄にも青貝法が伝わり、精緻な杣田細工が琉球(りゅうきゅう)漆器に活用された。
[郷家忠臣]
『荒川浩和著『螺鈿』(1985・同朋舎出版)』▽『河田貞編『日本の美術211 螺鈿』(1983・至文堂)』
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典
ら‐でん【螺鈿】

(2)「色葉字類抄」に「螺鈿 ラテン」とあり、「下学集」や節用集類には「螺鈿」に「アヲカイ」の訓があてられ、「日葡辞書」では「Auogai(アヲガイ)」の語のみを載せる。中世以降は、「アヲカヒ」で、その技法も表わすのが一般化していたと考えられる。
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旺文社日本史事典 三訂版
螺鈿
らでん
唐から伝わったもので,貝のほか琥珀 (こはく) ・瑇瑁 (たいまい) なども使用。正倉院宝物に『螺鈿紫檀五絃琵琶』などがある。平安時代から江戸時代にかけて流行。蒔絵 (まきえ) と合流してよい色彩を示している。
出典:旺文社日本史事典 三訂版
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