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血友病【けつゆうびょう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

血友病
けつゆうびょう
hemophilia
血液凝固因子の第 VIII因子欠乏による友病Aと,第 IX因子欠乏による血友病Bに分けられる。ともに伴性劣性遺伝疾患で,わずかな外傷でも関節内出血,鼻出血,口腔内出血,消化器出血,腎・膀胱出血,脳出血などを起し,ときには致命的となる。また自然出血を起しやすい。外傷や抜歯,外科手術を避け,出血が起った場合には新鮮血の輸血を行う。血友病Aには第 VIII因子濃縮製剤 (クリオプレチピテート,抗血友病グロブリン) の補充,血友病Bには第 IX因子濃縮製剤 (コーナイン,PPSB) の補充療法により,すみやかに止血できるようになった。以前,抗血友病製剤がエイズ感染の原因になったことがあったが,現在では加熱製剤が使われるのでその危険はない。血友病は男子だけに起り,女子は遺伝因子の運搬者となるだけで,自身は罹患しない。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

けつゆう‐びょう〔ケツイウビヤウ〕【血友病】
血液凝固に関与する因子が欠乏していて、わずかな傷にもすぐ出血し、出血が容易に止まらない病気。遺伝性で主に男性に現れ、女性を通じて劣性伴性遺伝をする。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

血友病
 伴性劣勢遺伝による出血症.血液凝固因子の欠損による.

出典:朝倉書店
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家庭医学館

けつゆうびょう【血友病】
 関節内や筋肉内、皮下(ひか)、口腔内(こうくうない)、頭蓋内(ずがいない)などにささいな外傷で出血をおこす先天性の病気で、一度出血すると不足している凝固因子(ぎょうこいんし)の補充なしには止血することは困難です。
 治療は、血液専門医のいる病院で、血液凝固因子の補充療法を受けます。主治医の指導をもとに家庭での補充療法(「血友病(ヘモフィリア)」)を行なうこともできます。

出典:小学館
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世界大百科事典 第2版

けつゆうびょう【血友病 hemophilia】
古くから知られている遺伝病で,先天的に血が固まりにくいために異常に出血しやすい病気。原因は血漿中に血を固まらせる凝固因子が生まれつきないため。血液凝固因子のうち,第VIII因子欠如によるものを血友病A,第IX因子欠如によるものを血友病Bというが,血友病Aのほうがはるかに多い。病気は男性に出現し,女性は病的遺伝子を伝える(保因者)だけで病気は現れない。つまり赤緑色盲などと同じ伴性劣性遺伝病である。出血症状は生まれた直後から起こることもあるが,歩きはじめのころから現れることが多い。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

けつゆうびょう【血友病】
血液凝固因子の欠損のため出血傾向をきたす遺伝性疾患。伴性劣性遺伝のため、男性に現れる。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

血友病
けつゆうびょう
血液凝固因子のなかの第、第因子の欠乏によって、止血機能が障害をおこし出血しやすくなる病気。第因子(抗血友病因子)の欠乏を血友病A、第因子(クリスマス因子)の欠乏を血友病B、両方欠乏しているものを血友病ABという。Aは85%、Bは15%、ABでは1%以下の割合であり、またAは男性2万人に1人、Bは同じく10万人に1人の割合でみられる。患者の半分ぐらいに遺伝関係がみられるが、遺伝形式は伴性劣性遺伝で、女性は血友病の遺伝子をもっているが発病せず、男性に発病する。両親が血友病の男性と正常の女性の場合、男児は正常で、女児は保因者となる。両親が正常の男性と保因者の女性の場合は、男児の半分が血友病になり、女児の半分が保因者となる。血友病の男性と、保因者の女性が両親だと、男児はすべて血友病、女児はすべて保因者となる。また、第(スチュワート・パワー因子)、第、第(PTA)因子(ヘッグマン因子)欠乏を類血友病とよんだが、遺伝形式は異なっている。
 血友病の小児は、起立歩行して運動が盛んになる幼稚園から小学校のころになって、関節内、筋肉内に出血して、ついには関節が硬直し、筋肉の発育が悪くて歩行不能になる。紫斑(しはん)病のような皮下、粘膜への表在性の出血がないので、出血しやすい体質であることに気づかず、抜歯後に血が止まらないとか、頭部の打撲後に脳内出血がおきて死亡するなど、突然みまわれることがある。治療には、欠乏している因子を補給すればよく、そのために抗血友病グロブリン製剤がつくられている。[伊藤健次郎]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

けつゆう‐びょう ケツイウビャウ【血友病】
〘名〙 (Hämophilie の訳語) 遺伝的に血漿中の抗血友病因子が欠乏しているために血液が凝固しにくく、小さい傷の出血もなかなか止まらない病気。劣性の伴性遺伝病で、母方から遺伝し男子が発病する。〔羅独和訳医学字典(1894)〕
[補注]ドイツ語 Hämo は血の意、philie は友の意。血友病は、古くから知られていたが、一九世紀の初頭、遺伝病であることが明らかになった。明治初期の医学用語集「医語類聚」(一八七二)や「漢洋病名対照録」(一八八二)には載せられていない。

出典:精選版 日本国語大辞典
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内科学 第10版

血友病(凝固線溶系の疾患各論)
定義・概念
 血友病は幼少期より関節内出血を中心にさまざまな出血症状を反復するX連鎖劣性遺伝性の出血性疾患である.第Ⅷ因子(FⅧ)の量的・質的異常症が血友病A,第Ⅸ因子(FⅨ)の異常症が血友病Bである.ヘテロ接合体である女性は保因者となる.発症率は男性5000~1万人に1人である.
病態生理
 活性型第Ⅸ因子(FⅨa)による第Ⅹ因子活性化反応は血液凝固機構における必須の律速反応である.活性型の第Ⅷ因子(FⅧa)は本反応系のVmaxを20万倍増幅する.したがってFⅧやFⅨの低下は結果的にはトロンビン産生障害をきたすために重大な出血傾向をもたらす.血友病Aの遺伝子異常は,点変異(ナンセンス,ミスセンス),逆位,欠失,スプライシング異常などが代表的である.中でもイントロン22の逆位は血友病Aの最も特徴的な遺伝子異常で,重症 型の約4割に検出される.逆位,欠失,ナンセンス変異ではFⅧは産生されず,ヌル変異といわれ,後述するインヒビターの発生要因になる.血友病Bの遺伝子異常は血友病Aと異なり90%以上が点変異である.
臨床症状
1)皮下出血:
指頭大〜貨幣大(ときにはそれ以上)の紫斑を呈し,しばしば,皮下硬結(bruising)として触知される皮下血腫を形成する.
2)関節内出血:
出血頻度は膝,足,肘関節の順に高いが,その他,肩や股関節などいずれの関節にも発症する.関節の違和感や倦怠感などの前兆のあと,激しい疼痛,熱感,発赤を伴う関節の腫脹が出現する.当該関節の可動域は制限される.関節内出血を反復すると,関節滑膜の変性や炎症が進行することにより出血頻度はますます増加し,標的関節(target joint)とよばれる.関節症が進行すると,関節軟骨が減少するために関節裂隙が狭小化する.さらに骨の破壊過程により骨硬化,囊胞形成,骨棘像などがみられるようになり重度の関節運動障害をきたす.
3)筋肉内出血:
腓腹筋やヒラメ筋,大腿筋,臀筋,腸腰筋などの下肢の筋や前腕の屈筋などに発生しやすい.外傷や過激な運動,筋肉注射後に出現することが多いが,原因が明らかでない場合もある.疼痛と腫脹が激しく,当該部位の運動障害をきたす.腸腰筋出血では股関節を屈曲する腸腰筋位(psoas position)を呈する.筋肉内出血は血管や神経を圧迫していわゆるコンパートメント(筋区画)症候群を発症することがある.また,骨膜下の筋肉内出血が漸次進行した場合,出血による壊死組織と凝血塊を内容とする囊胞が形成され,周囲の組織が進行性に破壊されることがある.これは偽腫瘍とよばれる.
4)血尿:
血尿は重症型患者で頻度が高い.出血は糸球体あるいは尿細管由来である.一般に,腰部の違和感や疼痛などの前兆を伴うことが多い.しばしば再発する.遷延化することもある.
5)口腔内出血:
軽微な切傷や咬傷によって歯肉,上口唇小帯,舌小帯,口唇および舌に発生する.しばしば血腫を形成する.日常の齲歯および歯周病の予防が必要である.
6)重篤な出血症状:
 a)頭蓋内出血:出血死の原因としては最も多い.軽微の外傷や原因不明の自然出血の場合もある.臨床症状は頭痛,嘔吐,痙攣,混迷,復視などの視力障害,昏睡などである.重症例で頭部外傷のあった場合には全例に補充療法の実施がすすめられる.通常,補充療法のみで治療できる場合が多いが,画像で明らかな出血巣が認められた場合には,外科治療も考慮して,早期に脳神経外科にコンサルトする. b)腹腔内出血:腹腔内出血は腹部の軽微な打撲でも発生することがある.進展は緩徐であるが,しばしば重症な貧血を呈する.腹部に皮下出血をみたときは常に腹腔内出血を留意する必要がある.腸管壁内出血もよくみられる. c)頸部出血:頸部出血は窒息をきたすことがあり,致命率の高い非常に危険な出血である.まず,補充療法を行い,耳鼻咽喉科にもコンサルトし,出血巣の範囲,気道圧迫症状の程度を判断することが必要である.
検査成績
 内因系を反映する活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が延長するが,外因系を反映するプロトロンビン時間(prothrombin time:PT)は正常である.確定診断は第Ⅷ因子あるいは第Ⅸ因子の欠乏~低下所見による.von Willebrand因子は正常~上昇する.血友病の出血症状は第Ⅷ因子あるいは第Ⅸ因子の凝固活性によく相関する.活性が1%未満を重症,1~5%が中等症,>5%を軽症と分類される.
鑑別診断
 第Ⅷ因子低下を伴うvon Willebrand病,血友病A保因者,第Ⅷ因子第Ⅴ因子合併欠乏症,後天性第Ⅷ因子インヒビターなどが鑑別の対象となる(表14-12-1).
合併症
 製剤中の第Ⅷ因子あるいは第Ⅸ因子を非自己と認識して抗第Ⅷ因子あるいは抗第Ⅸ因子同種抗体(インヒビター)が発生することがある.インヒビターが発生すると以後の止血効果は激減~消失する.インヒビターは凝固1段法に基づくBethesda法により測定される.インヒビター力価(BU,Bethesda unit)が高値の場合(>5 BU/mL)をハイレスポンダー(high responder:HR),低値の場合(<5 BU/mL)をローレスポンダー(low responder:LR)とよぶ.HRの場合,補充療法製剤を投与すると投与5~7日後にインヒビターが急上昇する既応反応(アナムネスティック)反応をきたす.
治療
1)インヒビター非保有例の治療:
 a)止血療法:血漿由来製剤あるいは遺伝子組み換え型製剤による補充療法が基本である(表14-12-1).製剤の投与量は出血部位や出血症状の重症度により異なる(表14-12-2)(松下ら,2008).製剤は通常,間欠的(ボーラス)に経静脈的に投与するが,重篤な出血や大きな外科手術の際は持続輸注療法がより効率的である.
 b)予防的投与:あらかじめ製剤を投与して出血を予防する補充療法である.出血の発現リスクが高い場合にオンデマンドで実施する予防投与と,定期的に投与することにより長期間にわたって出血を予防する定期的補充療法に分けられる.一般に,30~40単位/kg,2~3回/週あるいは隔日に投与することで,トラフ(最低値)を>1%に維持できる.早期定期補充療法は血友病性関節症の発症と進行を防ぐことから,小児科領域では,血友病治療の主体はオンデマンド止血療法から定期補充療法へと移行している(Manco-Johnsonら,2007).
2)インヒビター保有例の治療:
 a)止血療法:インヒビターが検出された場合,インヒビター力価,反応性(HRかLR),出血症状の重症度により止血療法を決定する.インヒビターが<5 BU/mLでLRの場合は一般的に補充療法の続行が第一選択になる.HRではバイパス止血療法が第一選択になる.バイパス止血療法製剤は活性化プロトロンビン複合体製剤(APCC)と遺伝子組み換え型活性型第Ⅶ因子製剤(rFⅦa)の2剤が使用される(図14-12-1).インヒビター保有例の止血療法に関するガイドラインも日本血栓止血学会標準化委員会血友病部会から発表されている(田中ら,2008). b)免疫寛容療法(immune tolerance induction:ITI):免疫寛容療法(ITI)はインヒビター陽性例に凝固因子製剤の投与を継続してインヒビターの消失をはかる治療法で,インヒビター陽性例の最も重要な治療法になりつつある.過去のピークインヒビター力価とITI開始時のインヒビター力価が低いことが有意のITIの成功因子である.国際的には200 U/kgを連日投与する高用量投与法と50 U/kgを週3~3.5回投与する低用量投与法がある.高用量の方が免疫寛容にいたる期間が短いが,有効率は低用量と同等である(Hayら,2012).[嶋 緑倫]
■文献
Hay CRM, DiMichele DM, et al: The principal results of the International Immune Tolerance Study: a randomized dose comparison. Blood, 119: 1335-1344, 2012.
松下 正,他:インヒビターのない血友病患者の急性出血,処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン.日本血栓止血学会誌,19: 510-519, 2008.
Manco-Johnson et al: Prophylaxis versus episodic treatment to prevent joint disease in boys with severe hemophilia. N Engl J Med, 357: 535-544, 2007.
田中一郎,他:インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン.日本血栓止血学会誌,19: 520-539, 2008.

出典:内科学 第10版
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それぞれの用語は原書刊行時(2013年)の時点での最新のものです.常に最新の内容であることを保証するものではありません。また,権利関係の都合で一部表示できない図や画像があります。

血友病(血液疾患に伴う神経系障害)
(6)血友病(hemophilia)
 血友病はX連鎖劣性遺伝性の先天性凝固障害症で,第ⅩⅢ因子活性が低下する血友病Aと第Ⅸ因子活性が低下する血友病Bがあり,それぞれの原因遺伝子の点変異,挿入,逆位などが明らかになっている.血友病の臨床症状は出血であり,神経合併症も出血に伴うものである.中枢神経系では乳児期や高齢者に脳内出血が多くみられ,かつ初発症状となることがある.血友病患者での頭部受傷から症状発現までの期間は,硬膜下血腫を除く一般の患者に比較して無症状の期間が長いことが特徴であり,1週間程度の慎重な経過観察を要する.外傷による脊髄内および硬膜内外の出血も起こるが,脊髄組織への出血は高度の障害を残すのみならず,頸髄レベルでは呼吸停止などの生命への危険性もあるため早急な治療介入が必要である.末梢神経系では末梢神経周囲組織への出血,血腫形成によるコンパートメント症候群が起こり神経障害をきたす.補充療法を行いながら組織の減圧手術などの治療を早期に開始する.また慢性の被包化された血腫による神経の圧迫や,反復する出血は筋関節の可動制限なども起こる.[有村公良]

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六訂版 家庭医学大全科

血友病
けつゆうびょう
Hemophilia
(子どもの病気)

どんな病気か

 出血が止まるためには、局所の血管が収縮するとともに血小板が粘着・凝集し、引き続いて血液凝固反応が起こり、フィブリンという(のり)状の物質が形成される過程が必要です。血液凝固には血小板による一次凝固と、さまざまな凝固因子が段階的に活性化され進行する二次凝固があります。

 血友病は、この二次凝固に関わる血液凝固因子である第Ⅷ因子(FⅧ)あるいは第Ⅸ因子(FⅨ)が先天的に欠乏するために出血症状を示す疾患です。FⅧが欠乏している血友病AとFⅨが欠乏している血友病Bとに大別されます。

原因は何か

 FⅧ遺伝子とFⅨ遺伝子はともにX染色体に存在し、伴性劣性遺伝(はんせいれっせいいでん)形式をとるため通常は男性にだけ発症します。しかし明らかな家族歴を認めない孤発例が、約半数あります。

症状の現れ方

 まれに頭蓋内出血などで新生児期に発見されることもありますが、多くは運動量が増える生後6カ月以降に出血症状で気づきます。ハイハイをする時期には(ひざ)(ひじ)皮下血腫(ひかけっしゅ)、つかまり立ちができるようになると転んだ時に口内からの出血が止まりづらくなり、歩行が活発になると足の関節や膝の関節の出血が認められるようになります。

 長期的には同じ関節に繰り返して出血した結果、関節の変形や可動制限などの血友病性関節症が問題になります。しかし軽症型の場合は出血症状が明らかでなく、抜歯や外傷時に止血されにくいということで初めて診断されることもあります。

検査と診断

 凝固系検査では、外因系凝固を反映するプロトロンビン時間は正常ですが、FⅧとFⅨが関係する内因系凝固を反映する活性化部分トロンボプラスチン時間が延長した場合、血友病が疑われます。

 確定診断のためには第Ⅷ因子活性と第Ⅸ因子活性の定量(測定)を行います。健常人の各凝固因子活性を100%として、1%以下を重症型、1~5%を中等症型、5%以上を軽症型と診断します。

治療の方法

 凝固因子製剤の補充療法が行われます。在宅自己注射療法の普及により、従来の出血時投与から定期的予防投与へと治療の中心が変わりつつあります。適切な予防投与により血友病患児の生活の質(QOL)も向上し、健常人とほぼ同様の生活が可能になってきています。

高橋 良博, 伊藤 悦朗

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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血友病
けつゆうびょう
Hemophilia
(血液・造血器の病気)

どんな病気か

 血友病は、先天性出血素因(せんてんせいしゅっけつそいん)のなかで最も頻度が高く(男子出生1万人に約1人)、生涯にわたり皮下血腫(ひかけっしゅ)、関節出血、筋肉出血などの出血症状を繰り返す病気です。血友病A(第Ⅷ因子欠乏症)と、血友病B(第Ⅸ因子欠乏症)の2種類があり、その発生比は約5対1です。

原因は何か

 血友病の原因は、止血に重要な血液凝固第Ⅷ因子または第Ⅸ因子の欠乏ないし異常です。それぞれ、X染色体上にある第Ⅷ因子遺伝子あるいは第Ⅸ因子遺伝子のさまざまな変異(遺伝子の欠損、挿入、点変異(遺伝子塩基配列における1塩基置換による変異)など)に基づくもので、時に家系内遺伝のない突然変異による孤発例もあります。

症状の現れ方

 第Ⅷ因子の遺伝子および第Ⅸ因子遺伝子は、ともにX染色体(性染色体:女性は2本/XX、男性は1本/XY)上にあるため、血友病A、Bはともにほとんど男児に発症(伴性劣性遺伝(はんせいれっせいいでん))し、女性は保因者になります。

 重症型(因子活性1%以下)では、乳児期のささいな外傷、打撲に伴う皮下血腫、関節出血などで発症します。這行(しゃこう)(はうこと)や歩行を開始する乳児期後半からは、疼痛とはれを伴う足・膝の関節出血が多くみられ、何回も出血を繰り返すと関節症を来します。また、粘膜出血、筋肉出血、血尿、あるいは頭蓋内出血のように、生命を脅かす出血がみられることもあります。

 中等症・軽症の血友病では、出血症状はまれです。抜歯や外傷後の止血が困難な時に検査を受け、初めて診断されることもあります。

検査と診断

 特徴的な出血症状の観察や、家族歴をよく聴取することで、診断が可能な場合があります。血液凝固検査では、出血時間とPT(プロトロンビン時間)は正常ですが、全血凝固時間とAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)は延長します。確定診断には、血中第Ⅷ因子または第Ⅸ因子の活性を測定し、重症(1 %以下)、中等症(1~5%)および軽症(5~30%)に分類します。

 また、それぞれ第Ⅷ因子の遺伝子あるいは第Ⅸ因子の遺伝子の異常を調べる遺伝子診断も行われています。とくに保因者診断において、各因子の活性測定による診断が困難な場合の確定診断に威力を発揮しています。

治療の方法

 治療の基本は、凝固因子製剤の輸注(補充療法)による止血で、常に早期止血が重要です。1983年から導入された家庭輸注療法(自己注射)は極めて有用で、出血を繰り返す例では定期投与による血友病性関節症の予防を、また過激な運動・旅行などで出血が予想される場合には予防のための補充療法を行います。

凝固因子(ぎょうこいんし)製剤

 補充療法では、血友病Aでは第Ⅷ因子製剤、血友病Bには第Ⅸ因子製剤を使います。現在用いられている凝固因子製剤はすべてウイルス不活化処理がされており、止血効果は製剤間で差はありません。

 補充療法での投与量、投与間隔、投与期間は、それぞれ出血部位、程度、血中半減期(第Ⅷ因子は8~12時間、第Ⅸ因子は18~24時間)によって異なります(表17)。投与量の計算法は、血友病Aでは1%上昇させるために体重1㎏あたり2分の1単位の第Ⅷ因子を、血友病Bでは1単位の第Ⅸ因子を必要とします。

 また、治療中に10~20%の症例に、因子に対するインヒビター(抗体)が発生することがあり、このような症例にはバイパス療法として、活性型プロトロンビン複合体あるいはリコンビナント第Ⅶa因子製剤を用います。

②デスモプレシン療法

 本剤は、血管内皮からの内因性第Ⅷ因子の放出により血中濃度を上昇させるので、中等症~軽症の血友病Aに有効です。

③補助的薬物療法

 抗線溶薬(こうせんようやく)(トランサミン)は口腔内の出血や抜歯後の出血には有効ですが、血尿には水腎症(すいじんしょう)を併発する危険性があるため禁忌です。

 鼻出血に対して、鼻腔内タンポン(オキシセル綿型など)による圧迫止血を行う場合もあります。

病気に気づいたらどうする

 まず、専門医による正確な診断が必要です。血友病性関節症の防止のためには早期輸注による止血が重要で、家庭輸注療法(自己注射)が極めて有用です。

 いつもと違う頭痛、腰痛、股関節痛が現れたら、すぐに主治医と連絡を取り、必要に応じて補充療法などの治療を受けてください。

小嶋 哲人

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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