●街路樹【ガイロジュ】
デジタル大辞泉
がいろ‐じゅ【街路樹】
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世界大百科事典 第2版
がいろじゅ【街路樹 street tree】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
街路樹
がいろじゅ
市街地の道路の両側に列植された樹木をいう。日本では一般に並木と街路樹とが混同されることが多いが、外国では通常、市街並木すなわち街路樹と、地方並木(並木)とは区別されている。なお、並木とは高木を列植したものをいい、低木の場合は並木とはいわない。
街路樹は、普通、同一樹種が等間隔に植えられるが、ときには異なった樹種が混植されたり、不規則に植えられることもある。街路樹の効用としては、大気の浄化、炭酸ガスの吸収と酸素の供給といった環境衛生的な側面にあわせて、緑陰、寒暑の調節といった効用もある。さらには、風致美観ならびに保安、道標などの効用がある。しかし、路面の損傷、住居の日照、落葉の被害、交通障害、溶雪作業の妨害といったマイナス面の指摘されることもある。
世界でもっとも古い街路樹は、約3000年前にヒマラヤ山麓(さんろく)につくられた街路グランド・トランクであろうといわれる。これはインドのコルカタ(カルカッタ)からアフガニスタンの国境にかけての幹線の街路であり、一部は舗石を敷き詰め、中央と左右の計3筋に並木が連なっていたという。中国では約2500年前の周(しゅう)時代にすでに壮大な並木、街路樹がつくられていた。
日本の並木、街路樹の起源も古く、『日本書紀』によると、敏達(びだつ)天皇(在位572~585)のころ難波(なにわ)の街路にクワが植えられたとある。聖武(しょうむ)天皇(在位724~749)のときには、平城京にタチバナとヤナギが植えられている。さらに遣唐使として入唐(にっとう)した東大寺の僧普照(ふしょう)が754年(天平勝宝6)に帰朝し、唐の諸制度とともに並木、街路樹の状況を奏上し、759年(天平宝字3)に太政官符(だいじょうかんぷ)で街路樹を植栽することが決められた。これが行政上の立場から街路樹が植えられた始まりである。桓武(かんむ)天皇(在位781~806)時代には、平安京にヤナギとエンジュが17メートル間隔に植えられ、地方には果樹の植栽が進められた。その後、鎌倉時代にはサクラ、ウメ、スギ、ヤナギが植えられている。江戸時代になると、各地にマツ、スギ、ツキ(ケヤキの古名)などが植えられた。
近代的な街路樹は、1867年(慶応3)に横浜の馬車通りにヤナギとマツが植えられたことに始まる。74年(明治7)には東京の銀座通りにサクラとクロマツが植えられたが、木の成長が悪く、84年になってシダレヤナギに植えかえられている。1907年(明治40)になると、白沢保美(しらさわほみ)、福羽逸人(ふくばはやと)の街路樹の改良計画に基づいて、イチョウ、スズカケノキ、ユリノキ、アオギリ、トチノキ、トウカエデ、エンジュ、ミズキ、トネリコ、アカメガシワの10種が街路樹として選定・植栽され、ほぼ今日の街路樹体制の基ができあがった。のちにイヌエンジュ、シダレヤナギ、ソメイヨシノ、ミツデカエデが追加され、ミズキ、アカメガシワは成績不良で廃止された。
1977年(昭和52)の調査(林弥栄ほか)によると、東京都23区内の街路樹総本数は15万5000本、三多摩地区5万1000本、総計20万6000本である。このうち、本数の多い樹種はイチョウ、プラタナス、トウカエデ、シダレヤナギ、エンジュ、サクラ、ケヤキの順となっている。また、全国主要都市160の街路樹は、1967年の調査によると、105種、総本数52万本であった。本数の多い樹種を順にあげると、プラタナス、イチョウ、シダレヤナギ、ニセアカシア、カロリナポプラ、ソメイヨシノ、アオギリとなる(両調査以降、新しい調査は行われていない)。世界各国における街路樹種は200種に達し、もっとも広く用いられているのはポプラ類、プラタナス類、シナノキ類、ニレ類であり、これを世界四大街路樹とよんでいる。次いで多いのはニセアカシア類、カエデ類、トチノキ類である。
街路樹の選定にあたっては、その地方の気候風土に適応し、樹性強健で、大部分の土地で生育でき、乾燥に耐え、大気汚染などのいわゆる公害に対して抵抗力のあるものが望まれる。さらには、太陽熱、反射熱や病害虫に強く、深根性の樹種が選ばれる。
また、有毒、不快な臭気、刺(とげ)、有害液などを出さないという環境衛生的な面や、剪定(せんてい)、整枝によく耐え、上長成長が早く、まっすぐな樹幹をなし、下枝がよくそろい、樹形が整然として優美であるといった美観の面も考慮される。専門的には、大量な育苗栽培が可能で、しかも移植が容易で活着後の生育のよいものが街路樹としての条件となる。
[林 弥栄]
『本間啓監修『世界と日本の街路樹』(1982・日本交通公社)』
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精選版 日本国語大辞典
がいろ‐じゅ【街路樹】
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