●規範【きはん】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
規範
きはん
norm
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デジタル大辞泉
き‐はん【規範/軌範】
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世界大百科事典 第2版
きはん【規範 norm】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
規範
きはん
norm
最広義には、人に一定のことを「すべし」、もしくは「すべからず」と命ずる規準。その目的は、特定の状況において人に当為を指定して一定の価値を実現するためであるから、究極的価値がなんであるかによって、規範の種類も分かれる。真を論証するための論理規範、善を実現するための倫理ないし道徳規範、美のための芸術規範、信仰のための宗教規範、そして社会に秩序を実現するための社会規範などである。ここでは社会規範について述べる。社会規範にはもとより固有のものもあるが、他の諸規範、とくに道徳規範や宗教規範などは同時に社会規範としての性質をもつことが多いので、社会規範はそれらを含むことがあり、また単に規範とよばれることもある。この意味の社会規範は次の四つの要素から成り立っているので、その個々も狭義で社会規範といわれることがある。
[千葉正士]
社会規範の要素
社会規範の主要な要素の第一は価値原理である。これは究極的価値を中心とし、これに付随する諸価値が全体として一つの価値体系をなすことが多く、人類社会にはその態様、種類も多様であり、したがって、それに応じて歴史的、社会的、宗教的、文化的に多様な型の社会規範がみいだされる。要素の第二は行動様式であり、社会に一般的に繰り返し行われる行動が型として特定されていることであるが、特定の態様、程度はさまざまである。第三の要素であるサンクションは、行動様式を保障するためになんらかの社会的な圧力、権威が行動を評価して是認または否認の対応行動をすることであるが、これもその圧力、権威の正統性と組織性の類型が多様である。以上の3要素を総合的に言語命題、とくに文字に表明したものが、第四の要素の準則ないし規則である。しかし、このような言語的表現は形式的要素であるから、社会規範の実体は前の3要素によって決定される。
[千葉正士]
社会規範の分類
サムナーとウェーバーに共通する社会規範の分類もこの3要素を顧慮したものと解される。まず、行動様式として定着しているが、価値原理が不確定でサンクションも不特定のものが慣習である。次に、価値原理が確立し、したがってそのためのサンクションも特定されているものがモーレスである。そして、サンクションが固有の機関によって担われて制度化し、したがって行動様式も明確に、そして価値原理も特殊な形で体系的組織化のなされたものが法である。いずれの内部でも連続的な段階が多様に分かれていて、法についても、もっとも組織化の進んだ現代の国家法のほかにも、公式的性質をもつ宗教法や少数民族の法や、非公式的なものとして慣習法、固有法、生ける法、未開法、フォークロアなどとよばれるもの、あるいは現代社会における大小の組織の自主規則など、多くのものがある。以上の3分類もまた実は連続的であるから、その全体を行動様式面の特殊性に着目すると慣行、そして常民の伝承的な衣食住の生活様式として理解すると民俗といわれたりする。ただしそれらの場合、組織化された国家法や宗教法は除かれる。
[千葉正士]
社会規範の機能
社会規範には、それが守られれば秩序が維持されるから社会を存続させるという社会的な面と、人はこれを守っていれば身が安全で欲求を達することができるという個人的な面と、両面の機能がある。したがって社会規範は、社会がある以上は当然の理として人の心に内面化され意識されていないことが多く、そのほうが有効であるともいえる。しかしそのことは、保守的傾向に傾くことにほかならないので、これを不当な拘束と感ずる人間の生の力が噴出して、しばしば意識的に既存の社会規範に抵抗し、これを改革することがおこる。このような規範の葛藤(かっとう)は、無限に多様な諸類型の間にも不断におこるものであるが、一定規範の時間的な継起においても生ずる。社会規範は、確立した規範として不動の形で存在するものではなく、つねにこのような葛藤と直面していて、これを克服し、あるいはそれと妥協し、ときには交代するからこそ存続するのであり、この試練を経ないものは因襲と化し、やがて消滅するほかなくなる。
[千葉正士]
『S・W・G・サムナー著、青柳清孝他訳『現代社会学体系3 フォークウェイズ』(1975・青木書店)』▽『M・ウェーバー著、世良晃四郎訳『法社会学』(1974・創文社)』
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