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詭弁【きべん】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

詭弁
きべん
sophistikē; sophistry
故意に行われる虚偽の議論をいう。弁の発生は,直接的な日常現実からの離脱としての論理的反省の機運が高まったときと期を同じくしている。そこに知的能力の用いられる可能性が開けたのだが,詭弁は次の2種類に大別されよう。 (1) 外見上は論理的に真理のようにみえながらも,実は論理則に背反した議論。 (2) 論理的真理をふまえながらも,前提となる命題の意味の多義性,曖昧さに乗じて,真とされる前提からも,とうてい真とはいえない結論を導く議論。なお歴史的に詭弁派と称されるのはギリシアソフィストたちで,これがそのまま語源となっている。元来ソフィステス sophistēsとは賢人を意味したが,前5世紀後半からは,町から町へ巡回しながら人々に知識を授けては謝礼金を取る一群の人々をさす言葉となった。代表的な人物にプロタゴラス,ゴルギアス,プロディコス,ヒッピアスがいる。彼らの共通点は弁論術を教えることであったが,論に秀でることが立身出世につながった当時では,多くの青年をひきつけた。しかし後期のソフィストたちは,哲学的問題よりも真偽にこだわらないで自己に有利に弁じ立てる才能を助長し,白を黒と言いくるめるような傾向を生んだので,詭弁派と称されることになった。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

き‐べん【×詭弁/××辯】
道理に合わないことを強引に正当化しようとする弁論。こじつけ。「―を弄(ろう)する」
sophism》論理学で、外見・形式をもっともらしく見せかけた虚偽の論法。
[補説]1は「奇弁」、2は「危弁」とも書く。また、「弁が立つ」との混同で、「詭弁が立つ」とするのは誤り。

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世界大百科事典 第2版

きべん【詭弁 sophism】
一見正しそうに見えるが実は成り立たない議論。ことさらに自己主張したり,相手を論破し困惑させたり,奇矯の説によってひとをおもしろがらせたりするのに用いられる。議論を売物としたギリシアのソフィストたちを論駁するために,すでにアリストテレスが統一的に研究している(《トピカ》《詭弁論》)。 詭弁は一般に受け入れられている,あるいは少なくとも相手に受け入れられる前提から出発し,論理的手続,あるいは少なくとも論理的にみえる手続によって結論に至らなければならない。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

詭弁
きべん
sophistikē ギリシア語
sophism 英語
sophistry 英語

相手を言いくるめるためのごまかしの議論。とくにギリシアのソフィストたちの用いた、実は非論理的であるのに見かけのうえでは論理的な議論をいう。真実を明らかにするためにではなく、ただ論争に勝つためになされる。この場合、たとえば「年をとるのは年をとっていない者である。ゆえに、年をとった者は若者である」といった、ことばのあいまいさを利用した議論や、「ソクラテスは人間である。しかるにコリスコスはソクラテスではない。ゆえにコリスコスは人間ではない」といった、にせの論理が用いられた。論理の規則に無知であったり、日常の習慣や感情にまどわされるとき、詭弁にごまかされやすい。アリストテレスは『詭弁的論駁(ろんばく)』でそのさまざまな例を示し、対抗の仕方を教えている。しかし他方では、ソクラテスの哲学的議論のような真正の論理が詭弁としてかたづけられることも多く、むしろこのほうを警戒すべきであるともいえる。

[田中享英]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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