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語用論【ゴヨウロン】

デジタル大辞泉

ごよう‐ろん【語用論】
pragmatics記号論の一分野。記号をその使用者の立場から研究するもの。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
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世界大百科事典 第2版

ごようろん【語用論】

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

ごようろん【語用論】
記号論の一分科。記号とその記号を使用ないしは解釈する者との間の関係を理論的・形式的に考察する。 → 意味論構文論

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

精選版 日本国語大辞典

ごよう‐ろん【語用論】
〘名〙 (pragmatics の訳語) 記号論の一分野。言語を含む記号の通信者が、記号をどう使用するか、また記号の受信者が、どう理解するかといった、通信者、受信者間の言語記号の用法についての理論。言語実用論。

出典:精選版 日本国語大辞典
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最新 心理学事典

ごようろん
語用論
pragmatics
言語の使用や理解を状況とのかかわりで解明しようとする言語学の一分野。概念自体はモリスMorris,C.(1938)が記号論において統語論意味論,語用論の3分割を提唱したのに始まる。その後,言語哲学,認知科学の影響も受けて発展してきた。

【研究領域】 直示体系deixis 「わたし」「あなた」「ここ」「今」のような,話し手を中心とした聞き手,空間,時間などにかかわる言語表現を直示体系とよぶ。これらは物理的な空間,時間のほか,談話の中でも使い分けがなされ,その様相が検討されてきた。

グライス派の推意の理論 会話者の知識に依存し,文脈に応じて推論される意味(推意)に関する理論。グライスGrice,H.P.(1975)の会話の協調の原則cooperative principle of communicationの議論に始まり,ホーンHorn,L.R.(1984)やレビンソンLevinson,S.C.(2000)らの新グライス派が発展させた。レビンソンは,文脈的に却下されることがなければ生ずる推意implicature(一般化会話推意)について体系化し,それにはQ,I,Mの3タイプがあるとした。このうちQ推意は,「言明されているよりも強い状態は当てはまらない」ことを推意する。一例を挙げれば,(A)「5人います」から生ずる,(B)「6人以上はいない」がそれに該当する。しかし,「ツアーの旅行の催行最少人数は5人です。いますか」に対する答えであれば,(A)から(B)という推意は生じない(文脈による推意の却下)。つまり,論理的に必ず導出されるものではないことが示される。

関連性理論relevance theory スペルベルSperber,D.とウィルソンWilson,D.(1986)による理論で,グライスの議論を刷新するものである。この理論は,伝達の本質はコード化,コード解読の過程ではなく,推論過程にあるとする。そして,ことばで意図的に伝える場合のような意図明示的伝達ostensive communicationを検討対象とし,この種の伝達には,ある想定を受け手にわからせようとする意図(情報意図)だけではなく,その情報意図を有すること自体を受け手にわからせようとする意図(伝達意図)があるという特徴をもつ。伝達される刺激の関連性は,その文脈で推意などによって受け手が得られる内容が豊富な(文脈効果が大),そして労力が小さい発話であるほど大きくなるとされる。そして,意図明示的な伝達行為で伝える場合,その行為自体が「受け手の処理労力に見合う関連性を有し,送り手の優先性や能力に見合う範囲で最も関連性が高い(最適の関連性がある)ことが見込めるものだ」ということを伝えている。これが伝達に関する関連性の原則である。この理論では,特定の会話の文脈に依存して推論されていく内容のみを推意と考え,その導出過程を議論した。たとえば「韓国料理は好きか」と尋ねたら,「僕は辛いものが好きだ」という返答があった。この返答の受け手は,まず会話文脈や百科事典的知識から「韓国料理は辛い」という前提を引き出し,そこから「僕は韓国料理が好きだ(と相手は言おうとしている)」という結論を導出する。これらが推意(推意的前提,推意的結論)である。

前提presupposition その発話の話し手,聞き手の共通の仮定で,その発話が成立するための背景的内容を前提という。一般には,その発話を否定した文からも同じく導かれる。たとえば「山本氏の妻はフェミニスト(だ/ではない)」という肯定文・否定文は,ともに「山本氏には妻がある」という前提を有する。フレーゲFrege,G.(1892),ラッセルRussell,B.(1905),そしてストローソンStrawson,P.F.(1950)が哲学的議論を展開していたが,後に言語学的にも注目を浴びるようになった。たとえば「松田さんは結婚したことを後悔していない」は,通常「松田さんは結婚した」を前提とするが,「松田さんは結婚したことを後悔していない。実際,結婚していないのだから」のように,前提が取り消される文脈もある。前提が生じたり,消滅したりする諸条件の検討は,言語学の前提研究の重要なテーマである。

言語行為論speech act theory 発話は単に陳述だけでなく,依頼・警告・約束などさまざまな行為を遂行するために用いられるとする理論。オースティンAustin,J.L.(1962)は,発話を発語行為,発語内行為,発語媒介行為の三つに分けて分析した。サールSearle,J.(1968)は,言語行為を分類しそれぞれが成立する条件(適切性条件)を検討した。さらに,Can you open the window?のように,字義的な言語行為(質問)とは別の言語行為(依頼)を遂行する間接的言語行為indirect speech actに関しても,その成立条件を論じた。

ポライトネス理論politeness theory コミュニケーションにおける対人配慮の理論。ブラウンBrown,P.とレビンソン(1978)は,依頼・批判のような体面に脅威を与える言動face threatening act(FTA)において,言語形式や内容に配慮がなされるが,それには世界の諸言語に普遍的な特徴があると論じた。FTAを口にする際は,脅威に対処するためのさまざまな表現(ストラテジー)が用いられる。そして,FTAに現われる体面配慮の程度は,話し手と聞き手の関係の遠さ(D要因),聞き手が話し手よりも勢力を有する度合い(P要因),および当該行動が重荷となる程度(R要因)の加算(D+P+R)によって決められるとする。日本語には文法的な敬語(尊敬語,謙譲語,丁寧語)が存在するが,近年は敬語のポライトネス理論における位置づけも議論されている(滝浦真人,2005)。

会話分析conversational analysis 自然の会話の中の構造をとらえることを目的とする。エスノメソドロジーethnomethodology,認知科学,心理学などいくつかの伝統に由来する。話者の交替,会話の始まりと終わりの構造,優先応答体系などの分析が行われる。このうち優先応答体系に関して述べれば,依頼発話に対して優先的な応答は受諾,非優先的な応答が拒否である。優先的応答である受諾は,発話までの時間的な遅れもなく構造も単純だが,非優先的応答である拒否は,遅れが生じたり複雑な表現になったりする(Levinson,1983)。

 なお,研究手法は,作例による使用の適否の直観的な判断,小説やシナリオなどの用例分析,自然の会話の特徴の分析など多様で,電子化資料(コーパス)の用例の分析も盛んに行なわれている。

【実験的研究】 1980年代以降,語用論は心理学ともかかわり,多くの実験的研究を生み出してきた。発話の解釈や印象,処理時間,記憶,産出される発話内容などを指標とし,語用論の理論の解明のほか,背後にある心理的メカニズム,さらには発話の対人的・社会的影響の検討もめざしている。比較的早期からの研究として,間接的言語行為の処理過程に関するものがある。ギブスGibbs,R.W.(1979,1983)は反応時間などを指標とする実験で,間接的依頼においては,字義的な意味が先に処理される必要のないことを主張し,その反対論との論争が展開された。また,推意に関しては,主にグライス流の議論を背景に,対人知覚や広告表現の印象に及ぼす影響などが研究されている。最近は実験語用論experimental pragmaticsとして,とくに推意に関して新グライス派や関連性理論の主張の直接の検証をめざす研究が多い(Sauerland,U.,& Yatsushiro,K.,2009)。

 アイロニーirony(皮肉)は,知識のない人に対して「君は何でも知っているね」のように,事実とは反対のことを表現するものとして,修辞学の中で研究されていた。しかし,直接「君は何も知らないね」と批判せずに,わざわざ迂遠なことを言うのはなぜか,「君は何でも知っているね」という表現を博識をひけらかす人に対するアイロニー(この場合は事実と一致している)としても用いうるのはなぜかなど,説明ができないこともいくつかある。これに対し,関連性理論の中でアイロニーに対する新しい説明が提案されたことを契機に,アイロニーが知覚される条件を検討し,アイロニーの本質の解明をめざす多くの実験が行なわれるようになった(Jorgensen,J.et al.,1984; Kumon-Nakamura,S.et al.,1995)。これと相俟って,アイロニーがもつ攻撃性,ユーモアなどの対人機能についても,実験を通じて解明が行なわれてきた。

 ポライトネス理論についても,依頼表現を中心に,D,P,Rの3変数がストラテジー使用や言語形式の間接性,丁寧さなどの印象に及ぼす影響を検証する実験が行なわれている(Holtgraves,T.,& Yang,J.,1990)。今後も心理学における言語理解の研究や,コミュニケーション研究に対する語用論の諸理論の影響が予想される。 →意味論 →コミュニケーション
〔岡本 真一郎〕

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語用論
ごようろん
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