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議員定数不均衡訴訟【ぎいんていすうふきんこうそしょう】

日本大百科全書(ニッポニカ)

議員定数不均衡訴訟
ぎいんていすうふきんこうそしょう
選挙で投じた票が、別の選挙区における票より低い価値に扱われたのは違法で無効である、として選挙の取消しを求めて起こす訴え。各選挙区において選挙すべき議員の数(議員定数)は、人口に比例して定められるか、逆に議員一人を選ぶ人数が一定するように選挙区を定めるが、人口変動に応じて是正しないと、選挙区間で投票価値(1票の重み)に不均衡が生ずる。この状態で行われる選挙は民主主義の根幹を揺るがすものであり、それを違憲・違法として提訴するのが議員定数不均衡訴訟である。訴えは公職選挙法第204条に基づき、各選挙管理委員会を相手どり、高等裁判所に提起する。
 不均衡の度合いは、
(1)議員1人当りの平均人口数を100としたときの各選挙区の偏差値、あるいは
(2)議員1人当りの人口数の最大・最小選挙区間における人口比
によって表される。
 かつて最高裁判所は、衆議院議員の総選挙について5対1の開きを、平等選挙を要請した憲法(14条1項)に違反すると判断した(昭和51年4月判決)。その後この基準は、3対1にまで高められたものと推定されている(昭和58年11月最高裁判所判決参照)。むろん選挙区画は歴史的・地理的条件などにもある程度配慮しなければならないし、四六時中、人口は変動し続けているので、投票価値の完全平等はありえないが、学界の共通理解は2対1以下にあり、現実との間にまだ若干の隔たりがある。
 上の昭和51年判決は、
(1)選挙を全体として違憲であるとした点
(2)違憲ではあるが、混乱を避けるために、その選挙を無効とはしないとした点(事情判決・行政事件訴訟法31条)
が注目され、その後の同種の裁判を方向づけた。しかし、この判決方式では、判決主文で違法・違憲が確認されるにとどまり、実施された選挙の効力に影響しないため、国会での法改正が先送りされやすい。ドイツでとられている警告的判決とか、将来効判決とよばれる方式の導入を望む声もあるが、日本では多数をなすには至っていない。将来効判決とは、「今回の選挙は無効としないが、選挙法を改正しないまま次の選挙を差し止める」という、実際上、判決の効力が「次回選挙時」に発揮されるものである。昭和58年判決では、選挙が違憲状態で実施されたにしても、前回の是正措置から日を経ていないので、合理的是正期間内であり、選挙は合憲だとの観点まで持ちだして既成事実を認めたため、法改正がさらに遅れた。結局、小選挙区制を導入するという形で選挙区画を更正することとなり、新制度は強い不満を抱えて出発した。比例代表制の併用は、こうした不満に対する一種の妥協である。
 なお、参議院議員の選挙区選挙について最高裁判所は、6.59対1の開きを違憲問題が生ずるほどの状態だと評しながらも、半数改選制や都道府県を単位とした選挙区制などの特殊事情を考慮して、まだ立法裁量権の範囲内にあると容認した(平成8年9月判決)。また、地方議会議員の選挙についても、この種の訴訟が後を絶たない。しかし、近年、第一審(高裁)では、選挙に対する国民の関心の高まりを反映してか、国政選挙について、2倍超の格差を違憲とする判決も下されるようになり、改善の兆しとして期待する人々が少なくない。[佐々木雄]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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