●質量【しつりょう】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
質量
しつりょう
mass
重力質量と慣性質量とは同じ標準物体に関して必ず同じ値をもつことが,エトベシュの実験などによって精密に確かめられている。したがって両質量はまったく同じ物理量であると思えるが,前に述べたようにニュートン力学ではまったく違った概念の量であって,両質量の値の一致は偶然の一致としかいえない。この一致を必然の一致として説明するのが等価原理であって,これに基づいて A.アインシュタインは一般相対性理論を導いた。ニュートン力学では質量は一定の値をもつと考えられているが,特殊相対性理論では質量は速さによって変る。物体が静止しているときの質量が m0 (静止質量という) ならば,速さ v で動いているときの質量 m は真空中の光の速さを c とすると,

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デジタル大辞泉
しつ‐りょう〔‐リヤウ〕【質量】
2 物の重さ。重量。「このカメラの
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栄養・生化学辞典
質量
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素粒子事典
質量
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世界大百科事典 第2版
しつりょう【質量 mass】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
質量
しつりょう
mass
物体に力を作用させたとき、容易にその運動状態を変えるものと、変えないものがある。運動状態の変えにくさの度合い、すなわち慣性の大きさを表す物理量を質量という。質量は物体の運動を調べる動力学において、位置と並んで物体の性質としてもっとも基本的な物理量である。また化学においても、質量保存の法則や、質量が原子のもっとも重要な属性であるという認識が18世紀後半から本格化する化学革命の大きな決め手となった。
[高木秀男]
慣性質量と重力質量
質量massということばは17世紀初めごろから一般に使われるようになったが、その語源はラテン語で「かたまり」を意味するmassaである。質量という力学的概念が形成されるためには、慣性という概念が確立し、それが「物質固有の量」と結び付けられ、さらに質量と重さの違いがはっきりと認識されることが必要であった。これらはガリレイやデカルトらによって漸進的に行われ、ニュートンによってさらに明確化されて、質量は力学体系の基本的概念の一つに位置づけられることになった。そして、ニュートン以後の物理学の進歩によって、質量はさらに内容豊富な概念へと発展していった。
ニュートン自身は著書『自然哲学の数学的原理(プリンキピア)』(1687)のなかで、質量を「物質の量」といい、それを密度と体積の積で定義している。現在なら、密度を質量と体積の積と定義するので、これでは定義になっていないという非難を受けるであろう。ニュートンの質量の定義を批判したマッハは、『力学の発達』(1883)のなかでニュートンの第三法則を使って質量を定義することを提案した。すなわち、第三法則を「二つの物体を作用させたとき、二つの物体の加速度はつねに逆向きで、その大きさの比は二つの物体に固有な量になる」と解釈し、この法則から、基準の物体の質量を決めれば、その他の物体の質量がその何倍という形で定められる。
ところで、日常生活においては、質量を計るのにマッハのいうような方法ではなく秤(はかり)を使うのが普通である。これは、質量の関係する法則がニュートンの法則以外にもいろいろあり、それが有効に使われているためである。秤は、同一地点における物体の重さが質量に比例するという事実、もっと一般的にいえば万有引力の法則を利用して質量を計る装置である。それでしばしば、運動の法則で定義される質量を慣性質量、万有引力の法則を使って定義される質量を重力質量とよんで区別する。これはニュートン力学においては、運動の法則と万有引力の法則が独立な法則だからである。しかしさいわいなことに、実験によれば慣性質量と重力質量は非常によい精度で比例する(単位を適当にとれば数値を一致させることができる)。これを実験的に確かめたのが、1896年に行われたエートベシュの実験で、現在では10-13の精度まで確かめられている。この慣性質量と重力質量の一致は、後にアインシュタインによって注目され、一般相対性理論の基本仮定の一つとなる等価原理への実験的基礎を与えるものとなった。
[高木秀男]
相対論的質量
長い間、質量は物体に固有の量で、厳密に保存される量と考えられてきたが、アインシュタインの特殊相対性理論の出現により、ニュートンの絶対時間や絶対空間の考えに修正が加えられ、質量の概念も変更された。特殊相対性理論では、質量mは定数ではなく、物体の速さvによって変化し、
と表されることが明らかにされた。ここで、cは光の速さ、m0は静止系での質量を表す静止質量である。もしvがcに比べてずっと小さければ、質量はその変化を無視できるので定数として扱ってよい。また、エネルギーEが
いう式で質量と関係づけられることも、特殊相対性理論によって明らかにされた。もしvがcに比べてずっと小さければ、mc2は
と近似でき、右辺の第2項に通常のニュートン力学における運動エネルギーが現れる。この式は、物体の速さが0でも物体はm0c2のエネルギーをもつことを意味する。このエネルギーを静止エネルギーとよぶ。またE=mc2という式は、エネルギーと質量が等価であるという驚くべき事実を表しており、その換算係数c2が非常に大きいということは、物体の質量をエネルギーに変換することができれば莫大(ばくだい)なエネルギーが得られることを示している。たとえば、1グラムの質量は、エネルギーに換算すると次のような大きな値となる。
1g=8.9876×1013J
=2.1473×1013cal
[高木秀男]
質量の起源
ニュートンの功績の一つは、宇宙の現象をなにもかも絡み合った統一体として理解しようとした従来の考え方を改め、個々ばらばらに局所的な法則で運動を記述することに成功した点にある。これが可能になったのは、物質の存在には無関係で、絶対的に静止し、等方的で一様な絶対空間という概念を導入して運動を記述したからである。しかし、マッハは、慣性が宇宙の全物質との相互作用の結果生ずると主張し、物質に無関係な絶対空間の導入を鋭く批判した。マッハの考えに従えば、局所的な法則も宇宙の全物質と見えない糸で結び付いていることになる。このような考えはマッハの原理とよばれている。マッハの原理の検証は非常にむずかしいが、もしこの原理が正しければ、物質固有の量と考えられている質量も、結局は宇宙の構造に依存していることになる。
物質の構成要素である素粒子、とくに陽子や電子の質量は、物理学における重要な基礎物理定数の一つである。素粒子やクォークなど物質の基本粒子の質量の起源を探り、それを理論的に導くことは現代の素粒子物理学の重要な課題にもなっている。
[高木秀男]
質量の単位と大きさ
質量の大きさを決める標準物体としては、メートル条約に基づいて製造され、1889年の国際度量衡総会で指定されたキログラム原器(材料は白金90%、イリジウム10%)が用いられ、この原器の質量を1キログラムと決めている。キログラム原器はフランスのセーブルにある国際度量衡局に保存され、各国にはその複製が配られている。
秤を使って計れないような非常に大きな物体や非常に小さな物質の質量を計るには、特別のくふうが必要である。たとえば、太陽の場合にはケプラーの法則が使われ、原子の世界では質量分析計や質量分析器が使われる。
[高木秀男]
『富山小太郎著『現代物理学の論理』(1956・岩波書店)』▽『マッハ著、伏見譲訳『マッハ力学』(1969・講談社)』▽『ヤンマー著、大槻義彦他訳『質量の概念』(1977・講談社)』▽『田島進・飛田成史著『物質の質量から何がわかるか』(1991・裳華房)』▽『広瀬立成著『質量の起源――物質はいかにして質量を獲得したか』(1994・講談社)』▽『池内了著『宇宙と自然界の成立ちを探る――物質の構造と基本定数』(1995・サイエンス社)』
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精選版 日本国語大辞典
しつ‐りょう ‥リャウ【質量】
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