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農村工業【のうそんこうぎょう】

日本大百科全書(ニッポニカ)

農村工業
のうそんこうぎょう
rural industry 英語
industrie rurale フランス語
Landindustrie ドイツ語

中世都市のギルド工業に対抗しながら農村地帯に立地・発展してくる半農半工の農民経営による工業生産のこと。資本制生産の出発点をなすものである。

 農村工業は、日用的工業製品(とくに織物)を中心に、農家副業(農民による小営業=小商品生産)として、領主・ギルドの規制から離れて自由に営業され、家族労働を中心とする単純協業を基礎に、その比重をしだいに工業に移すのであるが、その発展は農民経営を取り巻く歴史的諸条件に制約されざるをえなかった。13世紀に都市ギルド工業による遠隔地向けの特産物生産(たとえば、南ドイツの綿麻混織および亜麻(あま)織物、イタリア、フランドルの毛織物など)が発展する地域では、販路や輸入原材料(羊毛・染料など)を握る商人の力が強くなり、都市手工業者だけでなく、農家副業をもその問屋制度のもとに支配する。南ドイツでは、都市大商人が周辺の貧農婦女子を下請の紡織工として利用し、フィレンツェでは14~15世紀に紡織に従事した農民を都市ギルドの成員に組み入れ、農村工業の自立的発展の道を阻止してしまう。フランドルでは、織機や水車縮絨(しゅくじゅう)機を備えた農民労働が都市職人とともに問屋資本に包摂され、都市職人より安価な加工賃で働く労働力にひかれて作業場の農村立地が進展し、農村工業は都市工業をしのぐ勢いをみせる。オランダを含むこれら低地地方(ネーデルラント)では、14世紀から15世紀末にかけて、都市ギルドと農村工業の対立が激化し、イギリスの羊毛輸出の停止を契機に毛織物工業全体が衰退に向かう。その後、スペイン羊毛の輸入により、ホントスホーテなどギルド規制のない農村で毛織物工業が発展した。

 農村工業が都市工業にもっとも早く勝利したのはイギリスの毛織物工業である。14世紀初め、それまで原料羊毛の輸出国だったイギリスでは、都市の毛織物生産が後退するのに対し、南ネーデルラントからの熟練職人の来住とエドワード3世の保護政策(原料羊毛の輸出と製品毛織物の輸入禁止)によって、封建農村の早期の解体によって生まれた独立自営農民(ヨーマン)や家内手工業者を中心とする農村の毛織物生産が急増し、15世紀には国民的産業に成長した。半農半工の農民は、当初、問屋制支配下で営業したが、しだいに資力を拡充し、専業化し、雇用労働者を増やし、複数の問屋の仕事をこなし、ついに独立の経営によるマニュファクチュアに転化した。水力縮絨工場の農村への普及が毛織物業の農村立地と都市織布工の農村移住を促進したことも農村工業の発展に幸いした。

 日本では、幕末期に綿業と製糸業において農村工業の発展がみられ、綿業ではマニュファクチュア経営も出現したが、安価な洋布輸入による綿作の解体(=洋糸依存)と生糸輸出の急増が生じ、買継商や生糸仲買人による問屋制支配が強化され、マニュファクチュアへの発展は大きく後退した。

[殿村晋一]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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