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農薬【のうやく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

農薬
のうやく
pesticides
作物を病虫害から防ぎ,有害な雑草を除き,また農作物の生育を増進させるような各種薬剤総称。殺虫,殺菌剤から除草剤殺鼠剤,忌避剤誘引剤植物生長調節,補助剤 (展着剤など) まで広範囲の薬物が含まれる。 (1) 殺虫剤 ヒ素剤,デリス剤,ピレトリン類,有機塩素剤 (ディルドリンなど) ,有機リン剤 (マラソン剤など) ,薫蒸剤 (シアン類) など。 (2) 殺剤 銅剤 (ボルドー液など) ,水銀剤,硫黄剤,有機塩素剤,有機リン剤,農用抗生物質,土壌殺菌剤など。 (3) 除草剤 2,4-D,2,4,5-T,MCPなど。農薬は一般にその対象以外に使用することがあり,薬害を伴うことが多い。特に人畜,魚類などにも毒性を持つことが普通であり,危険性の高いものであるため製造,販売,使用などについて農薬取締法で規制されているほか,毒物及び劇物取締法をはじめ多種の法律で農薬や関連物質につき規定されている。また殺虫剤,殺菌剤,除草剤の3種で日本の農薬の9割を占めている。農薬の分類は一般に上述の3種のほかは「その他の農薬」として一括して扱うことが多いが誘引剤,忌避剤などは害虫を対象とする場合は殺虫剤として扱われる場合もあり,厳密な分類は難しい。製造,使用を禁止されたもの (パラチオン,DDT,BHCなど) も多く,R.カーソンが警告したように,便利な一面,毒性の堆積が世界的な問題となっている。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

のう‐やく【農薬】
農業用の薬剤。殺菌剤・殺虫剤・殺鼠(さっそ)剤・除草剤や、植物の生長促進剤・発芽抑制剤など。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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栄養・生化学辞典

農薬
 あらゆる農業生産に利用される薬剤の総称.菌,線虫,ダニ,昆虫その他を殺したり,生育阻害をするもの.

出典:朝倉書店
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世界大百科事典 第2版

のうやく【農薬 agricultural chemical】
農作物を病害虫,雑草などの有害生物から守り,農業における生産性を高めるために用いられる薬剤を農薬という。農薬取締法には,農薬とは,農作物(樹木および農林産物を含む)を害する菌,センチュウ,ダニ,昆虫,ネズミその他の動植物またはウイルスの防除に用いられる殺菌剤,殺虫剤,その他の薬剤,および農作物などの生理機能の増進または抑制に用いられる生長促進剤,発芽抑制剤その他の薬剤をいう,と記載されている。したがって,殺虫剤,殺菌剤,除草剤のほかに,殺線虫剤,殺ダニ剤,殺鼠(さつそ)剤,植物生長調節剤など,さらには不妊剤,誘引剤,忌避剤,生物農薬などの新しいタイプの害虫防除剤も農薬に含まれることになる。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

日本大百科全書(ニッポニカ)

農薬
のうやく

農業薬剤のこと。日本の農薬取締法では「農薬とは、農作物(樹木及び農林産物を含む。以下農作物等という。)を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス(以下病害虫と総称する。)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤(その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。)及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう」と定義され、農作物等の病害虫を防除するための「天敵」も農薬とみなすとされている。

 日本で一般に農薬といわれるものは、農作物の病害虫(病原体と害虫の総称)を防除(予防および駆除)するためなどに使用される薬剤であるが、かならずしも農業に使われる薬剤のすべてをさしているわけではなく、植物を対象に使用される薬剤(ただし肥料を除く)という概念のほうが実態に近い。畜産は農業の一環であるが、家畜の疾病や畜舎の消毒などに用いられる薬剤は農薬といわず、養魚関係に使う薬剤も農薬と呼称しない。化学肥料も農業に使う薬剤であるが、日本では農薬の概念に入れていない。

 agricultural chemicalsを直訳すると農業薬剤となるが、このことばの欧米における概念は日本でいう農薬のほかに、化学肥料も包含している。植物の病害虫を防除する薬剤と衛生害虫用薬剤、および繊維や皮革や建築物などに関連して人類が直接あるいは間接に受ける病虫害(病害虫による被害)の排除に使われる薬剤を総称して、英語ではpesticidesまたはeconomic poisonsというが、これも日本の農薬の概念と一致しない。日本での農薬という用語に合致する適切な外国語はない。農薬のなかでもっとも重要なのが農作物を栽培するのに支障となる病害虫や雑草を防除するための薬剤であるということについては各国共通である。ハエやカなどの衛生害虫殺虫剤や家畜用の駆虫剤などの扱いは各国で異なる。

[村田道雄・斎藤 彌]

農薬発達の歴史

紀元前から殺虫力のあるバイケイソウや鼠毒としてのカイソウ(ユリ科植物)の使用、硫黄(いおう)による燻蒸(くんじょう)の記録がある。薬剤による防除のやや明確になってきたのは17世紀ごろからで、殺虫用として1690年にフランスでタバコ、1800年前後からカフカス地方でジョチュウギク(ムシヨケギク)が用いられていた。19世紀に入って化学薬品の形で農薬が登場し、1821年に硫黄粉末せっけん混合液がブドウのうどんこ病に、硫酸銅が種子消毒用に利用されている。今日なお大量に使用されている石灰硫黄合剤は1851年にうどんこ病用に、ボルドー液はブドウのべと病用として1885年にフランスのボルドー地方で開発された。1867年にヒ素化合物顔料であるパリスグリーンの食毒作用が発見され、化学構造の合理化の追求によりヒ酸鉛が1907年に登場している。

 現在使われている農薬の多くは有機合成化合物であるが、この端緒は1930年ごろからジョチュウギクのピレトリン、デリスのロテノン、タバコのニコチンなど植物性殺虫成分の化学構造が解明されたことにある。その後、天然成分の類縁化合物を研究して、よりいっそうの合理的殺虫剤を求める方法と、ランダムに各種有機合成化合物を試験して合目的化合物を得る方法の二つの研究方向がとられた。現在使われている農薬は、後者の方法により発見された新規化学構造物質を基本とし、その周辺の類縁化合物を追究することから得られたものが多い。この方法による最初の大成功は、パウル・ミュラー(スイスのガイギー社)によるDDTの発見(1939)であり、彼はノーベル医学生理学賞を受賞した。以下主要なものをあげると、殺虫剤ではTEPP(テップ)(1942)、BHC(1943)、パラチオン(1944)、イソラン(1947)、殺菌剤ではチラム(1931)、ジネブ(1943)、除草剤では「2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)」(1942)、IPC(1945)などである。

 国内では、1600年(慶長5)の「家伝殺虫散」が記録に残っている日本最古の農薬といわれている。トリカブトや樟脳(しょうのう)など5種類を混合して、ウンカやイノシシよけに効果があったと伝えられている。1670年(寛文10)に鯨油を水田にまき、稲についたウンカを払い落とした方法が、明治になって石油などを用いた注油駆除法になり、昭和の初期まで続けられた。そのほかにも人尿、雪解け水、石灰、硫黄を使用した記録があるが、効果は不祥である。第一次世界大戦前は天然物由来の農薬であるジョチュウギク、硫酸ニコチンなどを用いた殺虫剤、銅、石灰、硫黄などの殺菌剤が使われていた。1892年(明治15)にボルドー液が試用され、ジョチュウギク製剤、石灰硫黄合剤が使用された。1919年(大正8)にクロルピクリンの貯穀害虫への効果がみいだされた。1923年に硫酸ニコチン、1930年(昭和5)にヒ素剤が殺虫剤として、また1934年に水銀剤が種子消毒剤として使われた。

 1930~1940年代は、世界の開発趨勢にともない、大量に合成可能な有機化合物を殺虫剤として次々と実用化し導入した時代だが、ヒトを含む生物や環境に与える影響は考慮されなかった。

 1961年(昭和36)、日本の米原弘・見里朝正らは、イモチ病に効く、水銀を含まない薬剤ブラストサイジンSを発見した。抗生物質を農薬として用いた世界初の例である。1971年、農薬取締法が改正され、「国民の健康の保護」と「国民の生活環境の保全」を目的に規定した。病害虫への効果は当然として、温血動物(恒温動物)に対する毒性試験、環境への影響、作物や土壌中の残留調査など試験成績の提出が農薬登録の際に義務づけられた。その結果、DDT、BBC、BHC、水銀製剤などは残留性およびヒトに対する毒性が高いとして、販売禁止や使用規制がなされた。さらに、2002年(平成14)の改正により、農薬の販売規制中心から、製造・輸入・販売・使用に至るすべての過程で規制されるようになった。

[村田道雄・斎藤 彌]

農薬の種類・形態

日本における植物病害の大部分が農作物である。農作物の害虫として2400種あまりの報告があり、そのうちの約1割が外国からの移入種である。被害の大部分が食害であるが、生育障害、ウイルス病の媒介等もある。農薬の使用される対象は用途により次のように分類される。

(1)殺虫剤 昆虫の神経系に作用して殺虫作用を示すものが多い。また脱皮を阻害したり、産卵数を減少させて防除する。ダニを防除する殺ダニ剤も含まれる。

(2)殺菌剤 カビなどの病原菌による病気を防除する。非浸透性殺菌剤(表面についている病原菌の酵素を阻害)、浸透性農薬(葉や根から吸収され植物体内で繁殖している病原菌にまで効果を発揮)がある。

(3)殺虫・殺菌剤 害虫、病気を同時に防御する。

(4)除草剤 作物と雑草のわずかな相違(成分の取り込み量や代謝の差)を利用し、雑草だけを枯れさせる選択性除草剤と、薬剤のかかった草はすべて枯れる非選択性除草剤がある。除草剤は、植物の成長ホルモンの撹乱(かくらん)、光合成の抑制、植物独自のアミノ酸合成酵素の阻害作用など多くの作用を有する。

(5)殺鼠剤 農作物を加害するネズミなどの動物を防除する。

(6)植物成長調整剤 農作物の生育を促進または抑制する。

(7)誘引剤・忌避剤 主として害虫をにおいなどでおびき寄せてまとめて防除する、または害獣および害虫を寄せ付けない働きがある。

(8)展着剤 ほかの農薬と混合して使用し、その農薬の付着性を高める。

(9)天敵 害虫に寄生する菌や捕食者などの害虫の天敵を殺虫剤のかわりに使用する。化学農薬に比べて安全性が高く、農薬の使用量を減少できる一方で、外来種による生態系への影響も懸念される。

(10)化学不妊剤 えさに混ぜて昆虫に与え、オスまたはメスを不妊にし、繁殖を抑える。

(11)微生物剤 微生物を用いて作物の害虫・病気等を防除する。

(12)共力剤 主剤の効力を増強させるために添加される薬剤。

(13)補助剤 ほかの農薬に混ぜて、使いやすい剤形にする。

 農薬の形態については、液剤(溶液・乳剤)、粉剤、粒剤、ガス剤、燻煙剤、エアロゾール剤、糊状剤が、また使用形態については、噴霧法、濃厚液少量散布法、散粉法、燻蒸法、灌注(かんちゅう)法、燻煙法、塗布法、浸漬(しんせき)法、毒餌(どくじ)法などがある。

[村田道雄・斎藤 彌]

使用農薬の選択

使用目的に応じた合理的成分、剤形のものを選んで使用することが防除を成功させる基本である。同一地点で各種の病気や害虫が同時に発生する場合が多いため、それぞれに特効のある薬剤を配合した混合液を調製して散布すれば、散布回数が減って省力となる。しかし配合により無効化したり、有毒化したり、薬害発生成分を生ずる組合せになる場合もある。混合してはいけない農薬名は、各農薬のラベルの注意書きに記載してある。

 なお、現在日本で市販されている農薬は危険性の高いものはほとんどないが、毒物や劇物に属する薬剤もあるので、効力との兼ね合いから合理的なものが専業者の使用農薬として選ばれている。

[村田道雄・斎藤 彌]

農薬の安全性

農薬は毒性、水質汚濁性、水産動植物への影響、残留性等を厳格に審査して登録され、環境への影響が生じないようにそれぞれの農薬使用基準を定め、その遵守を義務付けている。適用のない作物には使用しない、使用方法・用量を守る、使用時期を遵守する、総使用回数以内で使用するなどの使用基準を守ることが基本である。

 動植物への影響については、コイに対する一律の基準が設定されているほか、ミジンコ類や植物プランクトンの一種を使用した試験を行い、農薬使用上の注意に反映している。またカイコ、ミツバチ、天敵昆虫などの有用昆虫や、ウズラやマガモ等を用いた毒性試験を行っている。

 農薬が虫や菌や草の生命を絶つのだから、生物である人間にも多かれ少なかれどんな農薬でも悪影響があろうという考え方はかならずしも妥当ではない。たとえば、菌や草の細胞のように細胞壁のある生物の、細胞壁成分の生合成機構を阻害する物質によってこれらの生物を殺すことをねらった農薬は、細胞壁をもたない細胞で構成されている人間などには影響がない。このように、病害虫と人畜や作物との生理作用の質的な差や量的な差をねらって目的を果たそうとするのが農薬である。農薬による病気、害虫等の防除は、農作物の安定生産と品質向上には現時点でもっとも有効な手段である。

 同じ農薬を長年にわたり使用すると効果が落ちるのは、病害虫が抵抗性を獲得するからである。世代交代速度の速いダニや菌類は抵抗性を獲得しやすく、回避するには数種類の農薬を順に使用する必要がある。それでも最終的には抵抗性を獲得するので、作用の異なる農薬を開発する必要がある。

[村田道雄・斎藤 彌]

農薬取締法および関連法律

農薬はその安全性の確保を図るため、農林水産省が農薬の種類・剤型・作物別に、使用時期、使用回数、使用法などについて定めた農薬取締法に基づき、製造、輸入から販売そして使用に至るすべての過程で厳しく規制される。その中心となっているのが登録制度である。一部の例外を除き、農林水産省に登録された農薬だけが国内で製造、輸入および販売ができる。現在の農薬登録は、農業生産の安定、国民の健康維持、生活環境の観点から、安全性の評価を最重点として農林水産省、環境省、厚生労働省が協力して行っている。2009年現在は4項目259品目が設定されている。農業以外での使用(家庭用・産業用)については薬事法等で管理される。

 農薬使用の目的は、農作物の病害虫駆除、生育促進および抑制、植栽期の変更、農作物収量の増産、農作物の安定供給、および農作業の省力化にある。その一方で、農業従事者の健康や農作物への残留農薬問題がクローズアップされ、農薬の必要性と汚染への両面の配慮が要求されるようになった。

 急性毒性の強い農薬は、散布中に多量を摂取することなどにより中毒症状をおこす場合がある。急性毒性とは急性中毒をおこす物質の性質で、1回の摂取で短時日中に生理異常をおこすことをいう。1回の摂取で中毒をおこさないような少量でも、長期の反復摂取により薬剤が代謝や排泄されずに体内へ一定量以上が蓄積したときに影響を示す場合を慢性中毒といい、食品中の残留農薬が問題とされる。作物へ施用された農薬は雨や風による流亡、消失、日光や植物体酵素による分解などでほとんどは消滅するが、一部は作物表面に付着し、食物に吸収され収穫物に残留する場合がある。その量は作物の種類、農薬の成分、施用後の環境などにより千差万別であるがごく微量である。残留量では急性中毒のおそれはないが、農産物は継続的に摂取されるものであるので、慢性中毒を生ずるような残留量があってはならない。そこで、1968年(昭和43)改正の食品衛生法に基づく農薬残留基準の設定により、無意図食品添加物という観点にたって残留基準値が定められた。この設定には、動物実験による慢性毒性試験から無作用量を算出して安全率を乗じたADI(一生涯毎日摂取しても健康上影響のない許容一日摂取量)、国民の摂取食品統計から算出された平均的な食品1日摂取量、通常の使用法による農薬残留実態調査値などを参考とし、農産物を収穫したままの状態、つまり水洗いもしないで食べることを想定し、科学的数値を基礎にして行政的判断で決められる。農産物への残留量は各種要因によって変化するので、これを実験的に調査し、残留基準値を超えることのない安全使用基準が農薬取締法に基づいて定められている。基準は農薬の品目ごとに対象農作物の種類、使用量、使用方法、使用期間と回数や間隔などについて、使用者が遵守することが望ましい基準として決められ、農薬のラベルに記載される。

 また1971年の農薬取締法の改正により、作物残留性農薬、土壌残留性農薬、魚毒性の強いものは水質汚濁性農薬に指定され、強い制限措置や禁止により公害の防止が図られた。さらに2006年(平成18)5月に「ポジティブリスト」制度が導入された。これは、食品中に残留基準が設定されていない農薬、動物用医薬品および飼料添加物が残留する食品の製造、加工、販売などを原則禁止する制度である。このなかで、残留基準が設定されているものについては各食品について定められた残留基準を超える濃度で食品中に残留してはならない、対象外物質として告示されている65物質は食品中に残留していても規制されない、残留基準の設定されていない食品中でも0.01ppm(一律基準)を超える濃度で残留してはならない、としている。

[村田道雄・斎藤 彌]

生産と消費動向

最近の生産動向として、登録農薬の減少、ジェネリック農薬(特許期間終了後、同じ薬効成分を使用した農薬。開発費がかからないので低価格)の増加、新規開発品の減少がある。一つの新規農薬が販売されるまでには30~50億円という巨額の費用と、7年から長い場合は20年以上という開発期間を要し、製品化されるのは新規化合物5万個に1個の割合ともいわれている。研究費の売上高に占める割合は6~10%である。

 農薬製造企業については、有効成分をつくっている原体メーカーと、有効成分を製剤化して製品をつくる製剤メーカー、その両方を行っている企業がある。日本では水稲栽培が多いので水田用農薬の出荷量が多い。

 経済協力開発機構(OECD)の統計によると、1990年から2003年の間に日本の農薬使用は27%減少している。これは作物生産量が減ったことに加え、有機農法などへの転換が進んだためと考えられる。しかしながら、OECD加盟国のなかでは韓国についで1ヘクタールあたりの農薬使用量が多く、これは夏期に高温多湿で病害虫が発生しやすい環境と関係があると思われる。

[村田道雄・斎藤 彌]

『金沢純著『農薬の環境科学――農薬の環境中動態と非標的生物への影響』(1992・合同出版)』『富沢長次郎・上路雅子・腰岡政二編『最新 農薬データブック』増補改訂版(1997・ソフトサイエンス社)』『松中昭一著『新農薬学――21世紀農業における農薬の新使命』(1998・ソフトサイエンス社)』『平野千里著『原点からの農薬論――生き物たちの視点から』(1998・農山漁村文化協会)』『深海浩著『変わりゆく農薬――環境ルネッサンスで開かれる扉』(1998・化学同人)』『久慈力著『農薬の空中散布と環境ホルモン――空散反対住民訴訟からのアピール』(1998・新泉社)』『井上哲男編『最新農薬学』(1999・広川書店)』『『有機・減農薬農産物の生産・流通技術――総合防除における生物農薬の可能性を探る』(1999・エヌ・ティー・エス)』『山田昌雄編著『微生物農薬――環境保全型農業をめざして』(2000・全国農村教育協会)』『小山重郎著『害虫はなぜ生まれたのか――農薬以前から有機農業まで』(2000・東海大学出版会)』『本山直樹編『農薬学事典』(2001・朝倉書店)』『中南元著『農薬原論――農薬の50年』(2001・北斗出版)』『渋谷成美著『農薬メーカーの開発力と展望――世界32社の開発実績、導入、提携、M&A』(2001・シーエムシー出版)』『上路雅子・小林裕子・中村幸二編著『残留農薬分析法』(2001・ソフトサイエンス社)』『細貝祐太郎・松本昌雄監修、上路雅子・永山敏広著『食品安全性セミナー3 残留農薬』(2002・中央法規出版)』『松中昭一著『日本における農薬の歴史』(2002・学会出版センター)』『倉田亮・吉野敏行監修、春日和夫著『食品公害・農薬汚染――揺れる「食」の安全』(2002・一橋出版)』『植村振作・河村宏・辻万千子・冨田重行・前田静夫著『農薬毒性の事典』改訂版(2002・三省堂)』『農林水産省生産局生産資材課・植物防疫課監修、植物防疫全国協議会編『農薬概説』第4版(2002・日本植物防疫協会)』『佐々木満・梅津憲治・坂斉・中村完治・浜田虔二編『日本の農薬開発』(2003・日本農薬学会、ソフトサイエンス社発売)』『日本農薬学会編『次世代の農薬開発――ニューナノテクノロジーによる探索と創製』(2003・ソフトサイエンス社)』『農政ジャーナリストの会編『食の安全性を問う――農薬はいま』(2003・農林統計協会)』『根本久編著『天敵利用で農薬半減――作物別防除の実際』(2003・農山漁村文化協会)』『山本出著『新農薬開発の最前線――生物制御科学への展開』(2003・シーエムシー出版)』『フランシス・シャブスー著、中村英司訳『作物の健康――農薬の害から植物をまもる』(2003・八坂書房)』『井倉勝弥太監修『主要農薬の開発経緯と展望』普及版(2003・シーエムシー出版)』『米山伸吾・安東和彦・都築司幸編『農薬便覧』第10版(2004・農山漁村文化協会)』『農林水産省農産園芸局監修、日本植物防疫協会編・刊『農薬要覧』各年版』『河野修一郎著『日本農薬事情』(岩波新書)』『伊藤嘉昭・垣花広幸著『農薬なしで害虫とたたかう』(岩波ジュニア新書)』

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精選版 日本国語大辞典

のう‐やく【農薬】
〘名〙 農業において作物に直接使用される薬剤の総称。用途によって、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、植物生長調整剤などの区別がある。〔農薬取締法(1948)〕

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化学辞典 第2版

農薬
ノウヤク
agricultural chemicals

農作物(樹木および農林産物を含む)を害する菌,線虫,ダニ,昆虫,ネズミ,そのほかの動物,植物,またはウイルスの防除に用いられる殺菌剤,殺虫剤,除草剤,そのほかの薬剤,および農作物などの生理機能の増進,または抑制に用いられる植物成長調節剤の総称.そのほか,天敵,食酢,重曹も特定農薬に指定されており,不妊剤,誘引剤,忌避剤も農薬に含まれる.農作物の多くは食品となり,農薬の使用場面も野外環境であるので,農薬は有害生物を防除することで農業生産を向上させる経済的価値を有することだけでは十分ではなく,ヒトをはじめとして,非標的生物に対して毒性が低いこと,農作物および環境中に残留しないことが求められている.農薬としては殺虫剤,殺菌剤および除草剤が重要であり,そのなかでも主要なのものは,
(1)殺虫剤:フェニトロチオンイミダクロプリドフェンバレレートカルタップ
(2)殺菌剤:ベノミルマンゼブプロベナゾール
(3)除草剤:グリホサートグルホシネートベンスルフロンメチル2,4-Dジウロンアトラジン
などである.

出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
東京工業大学名誉教授理博 吉村 壽次(編集代表)
信州大学元教授理博 梅本 喜三郎(編集)
東京大学名誉教授理博 大内 昭(編集)
東京大学名誉教授工博 奥居 徳昌(編集)
東京工業大学名誉教授理博 海津 洋行(編集)
東京工業大学元教授学術博 梶 雅範(編集)
東京大学名誉教授理博 小林 啓二(編集)
東京工業大学名誉教授 工博佐藤 伸(編集)
東京大学名誉教授理博 西川 勝(編集)
東京大学名誉教授理博 野村 祐次郎(編集)
東京工業大学名誉教授理博 橋本 弘信(編集)
東京工業大学教授理博 広瀬 茂久(編集)
東京工業大学名誉教授工博 丸山 俊夫(編集)
東京工業大学名誉教授工博 八嶋 建明(編集)
東京工業大学名誉教授理博 脇原 將孝(編集)

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