@niftyトップ

辞書、事典、用語解説などを検索できる無料サービスです。

近代経済学【きんだいけいざいがく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

近代経済学
きんだいけいざいがく
modern economics
1870年代の初頭,C.メンガー,W.ジェボンズ,L.ワルラスによりそれぞれ独自に唱えられた限界効用学説を境に,それ以降に発達した経済学をいう。それまでの経済学に比して,第1に単なる経済現象の把握から,その現象の背後にひそむ経済主体の行動分析にまで深化させたこと (限界効用学派 ) ,第2に部分分析から一般均衡の分析を行い,理論の一般化をはかったこと (一般均衡理論) の2つの特徴をもつ。これは限界革命と呼ばれ,近代経済学の基礎となった。その後 1930年代には J.ケインズにより従来の価値分析から所得分析に中心が移され,マクロ (巨視的) 分析という新しい分析方法が確立されるなど革新的な理論が完成された (→ケインズ革命 ) 。ケインズ経済学は不況克服の経済学として政治へ接近したが,これが近代経済学の大きな特色の一つとなっている。また,ケインズ経済学が静態的,短期分析であったのに対し,ケインズ以降の経済学は,動態化への関心が強まり,P.サミュエルソン,J.ヒックスによるマクロ・ダイナミックス (巨視的動態理論) としてさらに発展した。一方で近代経済学は数学,統計理論と結びついて経済の実証的分析が盛んとなり,統計資料の整備,コンピュータの普及と相まって各国の経済政策,経済計画などの立案,策定に利用されるようになっている。なお日本においては,近代経済学という概念は,いわゆるマルクス経済学対比して,非マルクス経済学という意味合いで用いられることが多い。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

デジタル大辞泉

きんだい‐けいざいがく【近代経済学】

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典 第2版

きんだいけいざいがく【近代経済学】
日本ではマルクス経済学との対比において,限界革命(1870年代)以降の非マルクス経済学のほぼ全体を指すために用いられる言葉。マル経に対し近経と略称することも多い。マルクス経済学の影響が日本に比べて軽微な欧米の学界では,近代経済学に対応する英のmodern economicsという表現は,とくに確定した意味をもっているわけではない。広くケネーないしアダム・スミス以降の経済学全体を指すこともあれば,狭く,現代において研究・教授されている経済学という意味で使われることもある。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

大辞林 第三版

きんだいけいざいがく【近代経済学】
1870年代以降に限界効用理論に基づいて打ちたてられた経済学の体系の一。日本ではマルクス経済学に対する語として用いられることが多い。オーストリア学派に始まり、ローザンヌ学派・ケンブリッジ学派・北欧学派・ケインズ学派などを総称する。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

近代経済学
きんだいけいざいがく
マルクス経済学に対する用語。近代経済学という語に対応する英語はmodern economicsであるが、欧米にはこの語に、近代の経済学あるいは現代の経済学という、通常の意味以外の特殊な意味をもたせる用語法はない。しかし、日本では、第二次世界大戦後のおおよそ1950年代のなかばごろに、近代経済学という語の特殊な用語法が定着した。すなわち、早坂忠(ただし)(1931―1995)によれば「1870年代初頭におこった限界革命から今日に至るまでの、歴史学派と制度学派とを除く、非マルクス系の経済学ほぼ全体を、一口に近代経済学と呼ぶ」(「『近代経済学』とは何か」)のである。
 近代経済学のこの特殊な用語法は、「近経」と略称され、「近経」と「マル経」(マルクス系の経済学の略称)という二つの経済学の観念は、大学の経済学のカリキュラムに二つの講義を併置するという形で、また学会も二つの学会が設立されるという形で、いわば制度化された。
 もっとも、このたぐいの先駆というべきものが、すでに1927年(昭和2)に、東京商科大学(現、一橋大学)の「経済原論」の講義にあった(福田徳三と大塚金之助による並行講義)。
 しかし、日本において、マルクス経済学に対抗するものとして、「近代経済学」(当初は、むしろ「近代経済理論」という語が用いられた)という語が文献のうえで使われ始めたのは、O・R・ランゲの論文「マルクス経済学と近代経済理論」Marxian Economics and Modern Economic Theory(Review of Economic Studies, June 1935)以後のことであるといわれている。なお、このランゲの論文は、柴田敬(しばたけい)(1902―1986)の論文「マルクスの資本主義分析とローザンヌ学派の一般均衡理論」Marx's Analysis of Capitalism and the General Equilibrium Theory of the Lausanne School(The Kyoto University Economic Review, July 1933)に刺激されて書かれたものであり、早坂忠が指摘したように、「『近代経済学』という語は発生的にも極めて日本と密着していた」。
 第二次世界大戦後の日本に「近代経済学」という語の特殊な用語法が成立するについては、遠近さまざまの要因が働いたものと思われる。戦前、日本には欧米のいろいろな経済学が導入されたが、日本の土壌に定着した外国経済学の唯一は、大正の初期から中期にかけて定着したマルクス経済学であった。いろいろな学派の非マルクス系の経済学も導入されたが、部分的になりがちで、マルクス経済学に比べ体系性に欠けるうらみがあった。そのため、日本の経済学界の多数派はマルクス経済学者で占められる結果となった。しかし、少数派ではあったが、非マルクス系の経済学の体系的研究は、とりわけM・E・L・ワルラスの経済学を中心に、高田保馬(やすま)、中山伊知郎、安井琢磨(たくま)らによってしだいに進められていた。戦後開花する近代経済学の基礎は、少なくとも昭和初期には、ひそかに培われていたのである。
 第二次世界大戦の戦時下には、神がかり的な国粋主義経済学が跳梁(ちょうりょう)した。戦後、近代経済学のもとに結集した経済学者たちが抱いた理念は、イデオロギーや怪しげな形而上(けいじじょう)学から自由な、経験科学としての経済学のそれであった。
 第二次世界大戦後、「近代経済学」という語の普及に、杉本栄一のベストセラー『近代経済学の解明』(1950)は大いに貢献した。しかし、皮肉なことに、杉本の定義した「近代経済学」は、「古典学派の解体ののちに成立した、年代的にいって、1860、70年代に成立した諸々の経済学」の総称であり、マルクス経済学を含めたものであった。
 ところで、「近代経済学」という語によって、限界革命以降の非マルクス系の経済学を包括して考えることの意義はどこにあるか。もとより、限界革命によって近代経済学の基礎が築かれた、ということである。限界革命が革命であったか否かは異論のあるところであるが、イギリスのW・S・ジェボンズ(1871)、オーストリアのC・メンガー(1871)、およびスイス・ローザンヌのワルラス(1874)の3人が、それぞれ独立に成し遂げた偉業、すなわち、古典学派の生産費価値論を退け、それにとってかわる効用価値論を展開し、その後の経済分析の発展にもたらした革新によって、近代経済学の基礎が築かれた、ということには異論はなかろう。限界革命は、「古典派の経済学が供給、生産および分配を中心に考えていたものを、むしろ需要と消費といった主観的な要素を強調する方に、経済理論の焦点を大きく移動させたばかりでなく、競争的価格理論の精緻(せいち)化、価値、生産および分配理論の統合、経済論理の洗練、および分析の数学的方法の拡張を含めて、経済学の主題の包括的体系化のための基礎を築いた」(コーツAlfred William Coats。1924―2007)。しかし、革新を開いた3人の業績を一括するには、それぞれの業績は、「単に形式においてばかりでなく、本質的な内容と意図についても大変重要な違いがあった」(ジャッフェWilliam Jaff。1898―1980)。したがって、近代経済学には、オーストリア学派(メンガーが始祖)、ローザンヌ学派(ワルラス)、ケンブリッジ学派(A・マーシャル)、その後加わった北欧学派(K・ウィクセル)の諸学派の経済学が含まれることになる。1930年代に至ると、J・M・ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936)がケインズ革命をもたらし、かつまたJ・R・ヒックスの『価値と資本』(1939。主として前半部)が世界の経済学者の関心を集め、いわば近代経済学のいわゆるパラダイムが成立したかの観を呈する。
 しかし、1970年代前後になって、このパラダイムに影がさしてくる。スタグフレーション、公害問題、国際通貨問題、資源問題など、「経済学の危機」が表面化するに至り、近代経済学は、パラダイムの独占よりも、パラダイム成立前の諸学派の蘇生(そせい)と競合が目だつようになった。マクロ理論についても同様で、ケインジアンに対しマネタリストはむしろA・スミス的ビジョンを復活させた。また、ケンブリッジ学派のスラッファPiero Sraffa(1898―1983)のいわば古典学派への復帰、J・V・ロビンソンらのマルクス経済学への接近など、過渡期を迎えた近代経済学が、かつて視点と接近方法が異質であることを理由に排除した歴史学派と制度学派との境界を自らあいまいにすることも生じてくると考えられる。[佐藤隆三]
『早坂忠著「『近代経済学』とは何か」(稲田献一・岡本哲治・早坂忠編『近代経済学再考』所収・1974・有斐閣) ▽R・D・コリソン・ブラック、A・W・コーツ、C・D・W・グッドウィン編著、岡田純一・早坂忠訳『経済学と限界革命』(1975・日本経済新聞社) ▽玉野井芳郎・柏崎利之輔編『近代経済学の系譜』(1976・日本経済新聞社) ▽美濃口武雄・早坂忠編『近代経済学と日本』(1978・日本経済新聞社) ▽安井琢磨著『経済学とその周辺』(1979・木鐸社) ▽杉本栄一著『近代経済学の解明』上・下(岩波文庫)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

精選版 日本国語大辞典

きんだい‐けいざいがく【近代経済学】
〘名〙 一八七〇年代以後の(非マルクス主義的な)経済学の総称。ミクロ経済学とマクロ経済学より成り、また理論的基礎と計量的基礎に立った政策提言への志向を持つ。

出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

旺文社世界史事典 三訂版

近代経済学
きんだいけいざいがく
1870年代に成立した限界効用学説以降に発展してきた経済学説の総称。古典派経済学・歴史学派経済学,特にマルクス経済学に対比して用いられる
限界効用学派(メンガー)・ケンブリッジ学派(マーシャル)・ローザンヌ学派(ワルラス)などがあるが,マーシャルの学説を受けついだケインズ経済学が中心をなす。古典派経済学・マルクス経済学との違いは,政治と経済学・社会学との結合を排して,経済現象のみを理論的・数理的に分析することにある。

出典:旺文社世界史事典 三訂版
執筆者一覧(50音順)
小豆畑和之 石井栄二 今泉博 仮屋園巌 津野田興一 三木健詞
 
Copyright Obunsha Co.,Ltd. All Rights Reserved.
それぞれの項目は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

近代経済学」の用語解説はコトバンクが提供しています。

近代経済学の関連情報

関連キーワード

普仏戦争オリビエ(Emile Ollivier)製糸業日本科学史普仏戦争ナポレオン開拓使コッペリアシュトラウス文化闘争

他サービスで検索

(C)The Asahi Shimbun Company /VOYAGE MARKETING, Inc. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.

アット・ニフティトップページへ アット・ニフティ会員に登録

ウェブサイトの利用について | 個人情報保護ポリシー
©NIFTY Corporation