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造血幹細胞移植【ぞうけつかんさいぼういしょく】

知恵蔵

造血幹細胞移植
造血系の幹細胞は、多能性を持っており、赤血球血小板白血球など、造血系の全ての細胞に分化する。骨髄中にある造血幹細胞骨髄幹細胞といい、最も多く存在する。造血幹細胞は、末梢血臍帯血などにも存在するので、造血幹細胞移植骨髄移植臍帯血幹細胞移植末梢血幹細胞移植の3つがある。骨髄移植は、健康な人の骨髄幹細胞を患者に移植して、血球系の細胞を蘇らせる治療法。白血病やがんなどでは、抗がん化学療法剤で悪性細胞を体内から徹底的に除去する時に、正常な血球系細胞も破壊される。骨髄移植により、正常な血液細胞を補うことができる。臍帯血中にも、造血幹細胞が存在する。出産時に得られるので臍帯血バンクに保存しておき、患者に臍帯血由来幹細胞を移植することで、様々な疾患の治療が可能になる。末梢血幹細胞移植は、主に自家移植として行われることが多い。これは、自己の末梢血幹細胞を薬剤などで大量に増やし、保存しておき、化学療法などを行った後、幹細胞を移植する方法。
(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)

出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」

朝日新聞掲載「キーワード」

造血幹細胞移植
正常な血液をつくれなくなった患者に造血幹細胞が含まれる臍帯血や骨髄を移植して正常な血をつくれるようにする。骨髄移植の場合は原則、HLAという白血球の遺伝子の六つの型がすべて一致しないと実施できないが、臍帯血では四つ以上一致すれば可能だ。移植が有効な病気は白血病や再生不良性貧血、先天性免疫不全症、先天性代謝異常疾患。*医療サイト・アピタルに、意見交換や交流ができる「読者ひろば」を開設しています。
(2010-08-26 朝日新聞 朝刊 生活2)

出典:朝日新聞掲載「キーワード」

デジタル大辞泉

ぞうけつかんさいぼう‐いしょく〔ザウケツカンサイバウ‐〕【造血幹細胞移植】
造血機能を回復させるために、正常な造血幹細胞を投与する治療法。通常の化学療法放射線療法だけでは治すことが難しい、白血病悪性リンパ腫などの血液がん免疫不全症再生不良性貧血に対して用いられる。造血幹細胞を採取する場所によって骨髄移植末梢血幹細胞移植臍帯血移植に分類され、患者自身の幹細胞を使う自家造血幹細胞移植と、他人から提供を受ける同種造血幹細胞移植がある。HSCT (hematopoietic stem cell transplantation)。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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日本大百科全書(ニッポニカ)

造血幹細胞移植
ぞうけつかんさいぼういしょく
hematopoietic stem cell transplantation

造血機能が傷害される血液疾患などに、正常な造血能を復活させるため、血液細胞を産生する造血幹細胞を移植する治療法。血液の中には赤血球、白血球、血小板などの血液細胞が存在し、生命維持のために重要な働きをしている。これらの血液細胞を産生するのが造血幹細胞である。造血幹細胞は自らを複製するという自己複製能を有するとともに、自らが分化し血液細胞になるので、血液細胞を一生にわたり産生し続けられるのである。造血幹細胞は成人ではおもに骨髄に存在するが、胎児では肝臓、脾臓(ひぞう)、あるいは血液中にも存在する。

 一方、白血病や再生不良性貧血などの血液疾患は造血機能が傷害される重篤な疾患であり、薬物療法では治癒が見込めない場合がある。造血幹細胞移植はこれらの疾患の治療のために、造血幹細胞を移植し正常な造血能を復活させる治療法である。

 移植に用いる造血幹細胞は、現在、骨髄、末梢血(まっしょうけつ)幹細胞、臍帯血(さいたいけつ)が臨床に応用されており、それぞれ骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植とよばれている。造血幹細胞の提供者(ドナー)が他者の場合を同種造血幹細胞移植、一卵性多胎児の同胞の場合を同系造血幹細胞移植、さらに自分の場合を自家造血幹細胞移植という。

 造血幹細胞移植を行う場合、移植前に白血病細胞などの腫瘍(しゅよう)細胞を死滅させるために、患者に大量の抗癌(がん)剤の投与や放射線照射を行う。これを前処置とよぶが、前処置は移植される造血幹細胞の拒絶を予防するための免疫抑制効果の意義もある。前処置により患者の造血や免疫機能は高度に抑制され、貧血、白血球減少、血小板減少が生じるため、感染症や出血などの種々の合併症を発症する可能性が高い。種々の病原体が感染症の原因になるので無菌室による管理、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤の投与、および、輸血療法なども必要になる。

 造血幹細胞移植は造血幹細胞を血管から輸注して行われる。輸注された造血幹細胞はやがて骨髄にたどり着き造血を開始すると考えられている。通常、移植後数週間で造血が回復する。同種造血幹細胞移植の場合、リンパ球などの免疫担当細胞も他人の細胞に変化するので、これらが逆に患者の組織を他人と認識し傷害を及ぼすことがある。これを移植片対宿主病graft versus host disease(GVHD)とよび、おもに皮膚、肝臓、消化管が傷害される。GVHDは同種造血幹細胞移植のもっとも注意すべき合併症であるが、GVHDがおこると白血病の再発が少ないことも判明している。これは、免疫反応によって白血病細胞が傷害されるからと考えられ、移植片対白血病反応graft versus leukemia reaction(GVLR)という。

 造血幹細胞移植の成功率は患者の疾患、進行度、年齢、および臓器障害の有無などに大きく影響され一概に述べられないが、白血病ではおおむね半数が治癒されるようになった。

[比留間潔]

『原田実根・加藤俊一・薗田精昭編『新しい造血幹細胞移植――末梢血幹細胞移植(PBSCT)・臍帯血移植(CBSCT)・CD34陽性細胞移植・ドナーリンパ球輸注療法(DLT)』(1998・南江堂)』『中内啓光編『造血幹細胞のいまと医療への展開』(2001・羊土社)』『小澤敬也編著『造血幹細胞――基礎から遺伝子治療・再生医療へ』(2002・中外医学社)』『小寺良尚・加藤俊一編『必携 造血細胞移植――わが国のエビデンスを中心に』(2004・医学書院)』『河野文夫・岡野千代美編『造血幹細胞移植の看護』(2004・南江堂)』『岡本真一郎他編『症例から学ぶ造血幹細胞移植』(2006・中外医薬社)』『小澤敬也監修、室井一男・鈴木典子編『医師と看護師のための造血幹細胞移植』全面改訂版(2007・医薬ジャーナル社)』『小寺良尚編『やさしい造血幹細胞移植へのアプローチ』改訂版(2008・医薬ジャーナル社)』『神田善伸編『みんなに役立つ造血幹細胞移植の基礎と臨床』上下(2008・医薬ジャーナル社)』『室井一男編『やさしい造血幹細胞移植後のQOLの向上』(2009・医薬ジャーナル社)』『豊嶋崇徳編『ガイドラインパースペクティブ 造血幹細胞移植』(2009・医薬ジャーナル社)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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六訂版 家庭医学大全科

造血幹細胞移植
ぞうけつかんさいぼういしょく
Hematopoietic cell transplantation
(血液・造血器の病気)

どんな治療法か

 血液中には赤血球、白血球、血小板という3種類の細胞があり、それぞれ酸素の運搬、感染防御、止血という生命維持には欠くことのできないはたらきを担っています。そしてこれらの細胞はすべて造血幹細胞と呼ばれる細胞からつくられていることは、急性白血病(きゅうせいはっけつびょう)の項で述べたとおりです。

 この造血幹細胞を採取して移植する治療が造血幹細胞移植です。造血幹細胞は骨髄(こつずい)末梢血(まっしょうけつ)臍帯血(さいたいけつ)から採取され、おのおの骨髄移植(BMT)、末梢血幹細胞移植(PBSCT)、臍帯血移植(CBT)と呼ばれます。

 また、造血幹細胞移植は自分自身の正常と考えられる造血幹細胞を採取して移植する自家(じか)移植と、兄弟などの血縁者や非血縁者の造血幹細胞を移植する同種(どうしゅ)移植に分けることができます。

どのような時に必要か

 数が著しく減ったり、質が悪くなった造血幹細胞を正常な造血幹細胞と入れ替える場合、造血幹細胞移植が必要です。重症再生不良性貧血(さいせいふりょうせいひんけつ)骨髄異形成(こつずいいけいせい)症候群などがこれにあたります。

 また、強力な治療によって起こる不可逆的(元にもどらない)な造血障害を避ける目的で行う場合もあります。白血病(はっけつびょう)リンパ腫多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)、一部の固形がん(胚細胞(はいさいぼう)がん、神経芽細胞腫(しんけいがさいぼうしゅ)など)は化学療法や放射線療法の効果があり、治療を強化すればするほど、治療効果も高まります。しかし、無制限に投与量(照射量)を増やすと、病気に対する治療という面ではよいのですが、正常な造血能も損なわれてしまい、治療後に自分の力では血液がつくれなくなってしまいます。そこで正常な造血幹細胞を投与(移植)すれば、血液をつくる力は失われることなく、安全に強力な治療ができます。

具体的な方法と経過

 造血幹細胞移植の7~10日前から、患者さんには前処置(ぜんしょち)が行われます。この目的は悪性細胞を根絶することと、同種移植の場合は拒絶反応を防ぐことです。全身放射線照射(TBI)と大量抗がん薬投与、あるいは複数の抗がん薬の大量投与が標準的な方法ですが、最近ではその量を減らした骨髄非破壊的(こつずいひはかいてき)前処置(この前処置を用いた移植をミニ移植という)も用いられています(図15)。

 前処置が終了すると、患者さんの骨髄は(から)となり、正常な造血幹細胞を受け入れる準備ができます。骨髄移植では、全身麻酔をして腰の後ろの骨(腸骨(ちょうこつ))から骨髄穿刺(せんし)(針を刺す)を繰り返して約1ℓの骨髄液を採取し、これを輸血の要領で点滴で静脈注射します。

 通常、造血幹細胞は末梢血中にはほとんど存在していませんが、顆粒球(かりゅうきゅう)コロニー刺激因子(G­CSF)を投与すると、末梢血中の造血幹細胞の数を増やすことができます。そのうえで連続血液成分分離装置を用いて末梢血からの造血幹細胞の採取が行われます。

 臍帯血(さいたいけつ)(へそ)()の血液)のなかにも造血幹細胞が多く存在します。臍帯血は胎児の娩出が終了し臍帯が切断されたのち、胎盤をスタンドに吊り下げ、その表面にある静脈を刺して採取します(図16)。

 自家移植の場合は末梢血が使われることが多く、この場合、幹細胞はマイナス180℃に凍結保存されます。同種移植(骨髄、末梢血)の場合は採取後そのまま移植されることが多いのですが、臍帯血は使用されるまで凍結保存されます。

 移植された造血幹細胞は骨髄に流れ着いて造血を開始し、移植後約2~3週間で造血が回復します(生着(せいちゃく))。同種移植の場合には、生着後も他人の造血幹細胞を入れたことによる反応(同種免疫反応)が起こり、これに伴う合併症(移植片対宿主病(いしょくへんたいしゅくしゅびょう):GVHD)が起こります。そのためにドナー(提供者)と患者さんのHLA型(白血球のタイプ)を合わせたり、移植前から免疫抑制剤を投与して、この合併症を予防します(図17)。

骨髄バンクと臍帯血バンク

 HLA型が一致したドナーは兄弟姉妹で見つかる確率が大きかったのですが、最近の少子化のため、その確率は低下しています。そこで考え出されたのが骨髄バンク、臍帯血バンクです。

 これは造血幹細胞移植を必要としている非特定の患者さんに無償で骨髄または臍帯血を提供したいというボランティアの善意を、中立な立場で患者さんに供給する機関のことです。

 現在日本には1つの骨髄バンク、11の臍帯血バンクがあり、造血幹細胞移植の推進に寄与しています。

矢部 麻里子, 山根 明子, 岡本 真一郎

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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