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過敏性肺炎【カビンセイハイエン】

デジタル大辞泉

かびんせい‐はいえん〔クワビンセイ‐〕【過敏性肺炎】
カビ細菌動物性たんぱく質などの有機物化学物質を繰り返し吸い込むことによって起こるアレルギー性の肺炎

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

家庭医学館

かびんせいはいえん【過敏性肺炎 Hypersensitivity Pneumonitis】
[どんな病気か]
 過敏性肺臓炎(かびんせいはいぞうえん)ともいいます。小さなチリやほこりのようなもの(有機塵埃(ゆうきじんあい))をくり返し吸入しているうち、これに過敏になっておこるアレルギー性の肺炎です。別名、外因性(がいいんせい)アレルギー性肺胞炎(せいはいほうえん)とも呼ばれています。
 この病気は、吸入するものの種類や発病する環境のちがいにより夏型過敏性肺(なつがたかびんせいはい)(臓(ぞう))炎(えん)、農夫肺(のうふはい)、鳥飼病(とりかいびょう)、加湿器肺(かしつきはい)、空調病(くうちょうびょう)などに分けられます。しかし、どれもほぼ同じ病状を示します。
[原因]
 夏型過敏性肺炎(なつがたかびんせいはいえん)は、日本の過敏性肺炎のうちでもっとも多くみられるもので、梅雨の後の高温多湿な夏季に家屋内に増殖するトリコスポロン(かびの一種)が原因でおこります。
 農夫肺(のうふはい)は、牛の飼料に生えたかびが原因で、酪農家にみられます。
 鳥飼病(とりかいびょう)は、鳥のふんが原因です。ハトやインコなどを飼う人におこります。
 加湿器肺(かしつきはい)や空調病(くうちょうびょう)は、装置の水やフィルターに生えたかびが原因です。
[症状]
 発熱、せき、呼吸困難がおもな症状で、ほかに、たん、咽頭(いんとう)の違和感、体重減少、だるさ、頭痛などがあります。
 これらの症状は、塵埃を吸入後、4~6時間して現われます。
[検査と診断]
 胸部X線写真を撮ると、両肺にすりガラス状や粒状の陰影がみられます。
 血液検査では、白血球(はっけっきゅう)の増加、CRP(からだに炎症があると血液中に急激に増えるC反応性たんぱく)の陽性、赤血球沈降速度(せっけっきゅうちんこうそくど)が上昇するほか、原因となっている塵埃を抗原(こうげん)として結合する抗体(こうたい)がみられます。
 症状が特定の環境や作業に関連しておこったり、同じ症状がくり返しおこっている場合には、過敏性肺炎ではないかと疑うことがたいせつです。
[治療]
 炎症を抑える作用のあるステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬が、非常によく効きます。症状の程度に合わせてステロイド薬であるプレドニゾロンを服用するか静脈注射します。そのほか、息苦しさには酸素吸入など、対症療法(症状を抑える治療)を行ないます。
[予防]
 原因となっている塵埃を吸入しないようにすることがたいせつです。夏型過敏性肺炎のトリコスポロンは、日当たりや風通しが悪く、湿気の多い場所(台所、洗面所、風呂場(ふろば)など)にあるかびでくさった木、マット、畳(たたみ)、寝具、室内の小鳥のふんなどに増殖します。
 したがって、これらの場所を中心に畳がえを含む大掃除や消毒を行ない、日当たりや通気をよくして除湿をすれば、多くの場合、トリコスポロンを除去できます。しかし、改築や転居をせざるをえないこともあります。
 農夫肺の原因である飼料のかびのように、環境から抗原をなくせない場合は、防塵(ぼうじん)マスクを使うようにします。
 加湿器肺、空調病のような換気装置肺炎(かんきそうちはいえん)の場合には、装置がかびで汚染されていることが多いので、フィルターを交換したり、機材を清潔にします。鳥飼病では、鳥の飼育をやめます。
 慢性化すると、肺に線維組織が増えてかたくなり(肺線維症(はいせんいしょう))、呼吸不全になりますから、予防がたいせつです。

出典:小学館
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それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。この事典によって自己判断、自己治療をすることはお止めください。あくまで症状と病気の関係についてのおおよその知識を得るためのものとお考えください。

内科学 第10版

過敏性肺炎(アレルギー・免疫性疾患)
定義・概念
 過敏性肺炎は,生活環境に存在する真菌胞子,細菌,異種蛋白などの抗原物質を反復吸入することにより感作され,Ⅲ型およびⅣ型アレルギー反応により細気管支および肺胞領域に生じる肉芽腫性炎症の総称であり,外因性アレルギー性胞隔炎(extrinsic allergic alveolitis)ともよばれている(Richersonら, 1989).
原因・病因
 本疾患の概念は,1932年Campbellらにより農夫肺が報告され,その後も楓皮病,砂糖きび肺症,コルク肺症,鳥飼病など職業性肺疾患としての過敏性肺炎が報告された.わが国では,1969年に継らにより沖縄に発生した砂糖きび肺症が最初に報告され,1970年代以降に空調肺,加湿器肺,夏型過敏性肺炎など家庭環境で発症する非職業性の過敏性肺炎が報告され,最近では,非結核性抗酸菌によるhot tub lungが注目されている.現在,表7-4-7に示すように原因抗原により50以上の過敏性肺炎が生じるが,欧米では農夫肺,鳥関連過敏性肺炎,加湿器肺,空調肺が多く,わが国では,夏型過敏性肺炎が7割以上を占める.
疫学
 1990年に厚生省特定疾患「びまん性肺疾患」調査研究班で過敏性肺炎の診断基準が作成され(表7-4-8),1980年から10年間における全国調査が行われた.その結果,過敏性肺炎の内訳は,夏型過敏性肺炎74.4%,農夫肺8.1%,換気装置肺炎(空調肺・加湿器肺)4.3%,鳥関連過敏性肺炎4.1%,その他2.3%,原因不明6.8%であった(Andoら, 1991).
 夏型過敏性肺炎は,高温多湿な夏季に,特に西日本を中心に居住環境において発生する過敏性肺炎であり,1970年代に本症の疾患概念が提唱された.その後,担子菌系酵母様真菌の一種であるトリコスポロンが本疾患の原因抗原でTrichosporon asahiiが最も重要な菌種であることが証明された.トリコスポロンは,風通しや日当たりの悪い湿った場所,台所,風呂場,洗面所などで増殖しやすく,空中に飛散しやすい特徴をもつ.したがって,専業主婦に発症が多く,家庭内発生も24%に認められる.
 農夫肺は,枯れ草に生えたカビ(好熱性放線菌)を吸入することにより発症する過敏性肺炎であり,わが国では東北や北海道の農業・畜産業従事者に多く認められる.その発症時期は,屋内作業で保存飼料の干し草を取り扱う冬季に集中している.
 換気装置肺炎は,細菌,真菌,アメーバに汚染された空調設備や加湿器が原因となる過敏性肺炎である.空調装置や加湿器の使用歴と症状出現時期の関連を注意深く聴取する.加湿器肺は頻繁に使用される冬季に多く発症する.
 鳥関連過敏性肺炎(鳥飼病 bird fancier’s lung:BFL)は,糞・尿などの鳥排泄物に含まれる免疫グロブリンやムチン,羽毛由来の蛋白成分などの鳥関連抗原を吸入することで発症する.鳥飼育などの鳥接触歴に加え,羽毛布団の使用歴,鳥の剥製や鶏糞飼料の使用歴,近隣の野鳥の生息状況を詳細に問診することが大切であり,無自覚の抗原暴露で発症する慢性型も多い.鳥飼育歴をもたずに発症する症例も少なくないため,鳥飼病よりも鳥関連過敏性肺炎(bird-related hypersensitivity pneumonitis:BRHP)とよばれている.
 その他,ポリウレタン,発泡スチロール,プラスチック,塗料,殺虫剤使用などに関連する種々の職業において,イソシアネート肺が発症することが知られている.また,24時間循環式浴槽で強力なジェット式噴流を伴うhot tub内で増殖したMycobacterium avium complexが原因の過敏性肺炎と考えられるhot tub lungの症例報告が散見される.
病態生理
 急性型や亜急性型では,原因抗原に感作され特異抗体を有した状態で,再度抗原を吸入すると免疫複合体形成や補体活性化が誘導され,Ⅲ型アレルギーにより胞隔炎が生じる.さらに,抗原刺激の持続により抗原特異的Th1細胞の活性化やIFN-γやCCL2(MCP-1)などを介したマクロファージの活性化によりⅣ型アレルギーが誘導され肉芽腫が形成される.また,樹状細胞やそれ由来のCCL18(PARC)も病変形成に深くかかわっている.一方,抗原暴露が長期間持続し慢性化すると,Th1/Th2バランスがTh2にシフトし線維化形成が促進される.
臨床症状
 過敏性肺炎は発症様式により急性型,亜急性型,慢性型に分類される.急性型や亜急性型では抗原吸入後4~6時間で発熱,悪寒,乾性咳などの感冒様症状および呼吸困難が出現し,18~24時間継続する.重症例ではチアノーゼを認める.抗原暴露の回避により症状は軽減もしくは消失するが,再暴露があれば同様の症状が繰り返されるため,自宅環境に原因がある場合には入院すると症状が軽減・消失する.また,退院帰宅すると再発する.慢性型は,少量の抗原に長時間暴露されるため,抗原暴露と臨床症状との関連性は失われ,抗原を回避しても病変はもはや不可逆性となる.したがって,症状は,咳や息切れの増強に加え体重減少や食欲不振もみられ,肺の線維化が高度になると呼吸不全を呈するようになる.慢性型の発症様式として,病初期に軽い急性エピソードを繰り返す“急性症状反復型”と病初期には症状を呈さず晩期に肺の線維化所見を伴い慢性的な咳や息切れを自覚する“潜在性発症型”が知られている(Yoshizawaら,1999).
身体所見・検査成績
1)身体所見:
胸部聴診上は,吸気時にfine cracklesを聴取する.慢性型では,ばち指が認められることもある.
2)血液検査:
好中球増加,CRP上昇,赤沈亢進,LDH上昇を認める.また,間質性肺炎の血清マーカーであるKL-6,SP-A,SP-Dが上昇する.ツベルクリン反応は陰性化する.
3)胸部X線・CT検査:
過敏性肺炎の胸部画像所見は,病型により異なる.急性型・亜急性型の胸部X線像は両側中下肺野を中心にびまん性にすりガラス様陰影,粒状影を示すのに対し,慢性型では肺野の容積減少と線状・網状影を認める.急性型・亜急性型の高分解能CT(HRCT)像は,びまん性の肺野濃度上昇と2~4 mm大の境界不明瞭な淡い粒状影が小葉中心性に分布する特徴がある(図7-4-3).末梢気道やその周囲間質が病変の中心となるためエアトラッピングによりすりガラス様陰影がモザイク状,斑状となることもある.慢性型のHRCT像は,線維化所見が主体であり,辺縁不整な線状影,蜂巣肺,ブラ形成を認め,特発性肺線維症や非特異性間質性肺炎などとの鑑別が困難になる.
4)呼吸機能検査:
拘束性障害や拡散能低下を認め,急性期には細気管支病変のため閉塞性障害が出現することもある.PaCO2の低下を認めるが,軽症例では体動時のみに低下することがある.
5)免疫学的検査:
免疫沈降反応(オクタロニー法)による血清中の沈降抗体の検出は,診断に有用である.夏型過敏性肺炎ではトリコスポロン抗体が,鳥関連過敏性肺炎では部分精製鳩糞抽出物(PDE)抗体が陽性となるが,原因抗原の入手が困難である.近年では,ELISA法による抗体検出が応用されている.また,精製抗原による末梢血やBAL中リンパ球の幼若化試験も診断に有用である.
6)気管支肺胞洗浄(BAL)
液検査:
BAL所見は,抗原暴露直後から24時間の早期には好中球分画が30~60%と一時的に増加するが,その後はリンパ球分画が50~90%と著増する.このリンパ球のCD4/8比は,夏型過敏性肺炎では平均0.6と低下するが,農夫肺では平均4.4と高値を示す.換気装置肺炎や鳥関連過敏性肺炎ではCD4/8比は正常範囲のことが多い.
7)病理組織所見:
急性型・亜急性型では,経気管支肺生検(TBLB)にて,リンパ球浸潤を主体とする胞隔炎や乾酪壊死を伴わない類上皮細胞性肉芽腫(図7-4-4),Masson体が認められる.一方,慢性型では,外科的肺生検が必要となり,肉芽腫形成の頻度は20~35%と低いが,小葉中心部や細気管支周囲にリンパ球主体の細胞浸潤と線維化所見が認められ,さらに進行すると小葉辺縁部の線維化も目立つようになる.また,コレステリン結晶を貪食した多核巨細胞や小葉中心部と小葉辺縁部の架橋線維化も慢性型の特徴的な病理所見である.
診断
 表7-4-8の過敏性肺炎診断の手引きと診断基準を参考とする.詳細な病歴聴取により,症状が特定の環境(居住環境,職業,季節性など)に関連するかを明らかにする.入院により症状や臨床検査所見の改善を観察し,帰宅試験あるいは環境誘発試験が陽性であれば診断はより確実になる.また,原因抗原による吸入誘発試験では,その前後で症状(発熱,咳,息切れ),血液検査(好中球数やLDH,CRP値),PaO2やSpO2,肺機能検査,胸部X線やHRCT所見の変化を解析する.本症の診断は,その特異な臨床像,季節性,居住環境,免疫学的検査の結果を総合して行う.
鑑別診断
 急性型や亜急性型では診断は比較的容易であるが,感染性の肺炎,間質性肺炎,慢性型では,特発性肺線維症や線維化性非特異性間質性肺炎との鑑別が重要である.
予防・治療・予後
 過敏性肺炎の治療と予防の3原則は,①原因抗原からの患者の隔離,②原因抗原の除去,③副腎皮質ステロイド薬による薬物療法である.
 まず入院させ原因となる環境から隔離する.多くは10日前後で症状や所見が改善する.夏型過敏性肺炎では,原因抗原のトリコスポロンが台所や風呂場・洗面所などの水回りの腐木などに増殖するため,問題があれば環境改善・改築を行い,湿気が多ければ畳,マットや寝具の取り替えも考慮する.農夫肺では,枯れ草の取り扱いの回避や環境改善による放線菌の発生抑制,防塵マスク着用の指導を行う.鳥関連過敏性肺炎では,鳥飼育の中止や室内に付着した羽毛や糞の除去,羽毛布団の使用中止が望ましい.軽症例では,抗原暴露からの回避のみでよいが,発熱が持続し労作時の息切れを認める中等症以上の症例は,ステロイド薬投与も考慮する.また,高度の呼吸不全を呈する場合にはステロイドパルス療法を行う.慢性型の過敏性肺炎の治療に関するエビデンスは少ないが,線維化抑制を目的にステロイド薬に加えて免疫抑制薬,とくにシクロスポリンAの投与も試みられている.
 急性型や亜急性型は,病変が可逆性でありステロイド薬が著効するため予後良好である.一方,慢性型の臨床経過は症例数が少なく不明な点が多いが,肺の線維化が進行すると呼吸不全を呈し予後不良となるので,早期の診断・治療・環境改善が大切である.[興梠博次・一安秀範]
■文献
Ando M, Arima K, et al : Japanese summer-type hypersensitivity pneumonitis. Geographic distribution, home environment, and clinical characteristics of 621 cases. Am Rev Respir Dis, 144: 765-769, 1991.
Richerson HB, Bernstein IL et al : Guidelines for the clinical evaluation of hypersensitivity pneumonitis. Report of the subcommittee on hypersensitivity pneumonitis. J Allergy Clin Immunol, 84:839-844, 1989.
Yoshizawa Y, Ohtani Y, et al : Chronic hypersensitivity pneumonitis in Japan: a nationwide epidemiologic survey. J Allergy Clin Immunol, 103:315-320, 1999.

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過敏性肺炎(アレルギー性疾患)
 【⇨ 7-4-3)】[棟方 
■文献
Kim H, Fischer D: Anaphylaxis. Ann Asthma Clin Immunol, 7
(suppl 1): S6, 2011.
Sampson HA, et al: Second symposium on the definition and management of anaphylaxis: summary report-Second National Institute of Allergy and Infectious Disease/Food Allergy and Anaphylaxis Network Symposium. J Allergy Clin Immunol, 117: 391-397, 2006.

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六訂版 家庭医学大全科

過敏性肺炎
かびんせいはいえん
Hypersensitivity pneumonitis
(呼吸器の病気)

どんな病気か

 過敏性肺炎は、抗原の反復吸入によって起こるアレルギー性肺炎です。急性のものと慢性のものとがあり、急性のものでは原因抗原から離れることにより回復しますが、慢性になると病変と症状は続き、進行することがあります。

原因は何か

 日本では、家のなかの環境中に存在する真菌であるトリコスポロンを抗原とする過敏性肺炎が最も多く、70%近くを占めています。過敏性肺炎は春から秋にかけ、夏を中心とした季節に多いため、夏型過敏性肺炎といわれています。

 抗原を吸入してから8~13時間で症状が現れ、肺の病理組織では一般に好酸球が少なく、肉芽腫(にくげしゅ)、リンパ球の浸潤(しんじゅん)がみられます。

 原因になる他の抗原としては好熱性放線菌があり、主に酪農家に発生し、農夫肺(のうふはい)と呼ばれています。また、鳥の排泄物(糞、尿、唾液など)などが関係し、鳥の飼育や羽毛を取り扱う職業の人に発生する鳥飼育病(とりしいくびょう)があります。そのほか、サトウキビ肺、養蚕者肺、またナメコ栽培者、小麦粉取り扱い者、塗装工(イソシアネート)などでも、各種の抗原が原因による過敏性肺炎の報告があります(表14)。

症状の現れ方

 急性のものは特定の抗原の曝露(ばくろ)から数時間後に(せき)、発熱、呼吸困難などで発症し、原因になる抗原から離れると回復します。しかし、慢性のものでは抗原と症状の関係はなくなり、抗原から離れても病変は回復しなくなります。線維化などがみられるようになり、症状が残ったり進行するようになります。

検査と診断

 一般血液検査では末梢白血球数の上昇、CRPの上昇などの炎症反応が認められ、低酸素血症を示し、胸部X線像でびまん性すりガラス状陰影が認められます。しかし、このような検査データ、所見は他の疾患でも認められるので、確定診断のためには、抗原を吸入することにより発症するという経過と病歴、また原因抗原の吸入による誘発試験で疾患が発症する再現性を確認することなどにより、確実なものにする必要があります。

 ただし、誘発試験は抗原の吸入により肺疾患が発症し、呼吸困難になることもあるので、安易に行わず、注意して行う必要があります。家のなかに存在する真菌(カビ)などが原因であれば、帰宅すると抗原を吸入することになるので、診断できることもあります。

 ほかに気管支鏡を使って肺内の組織を採取する経気管支肺生検が行われることがあります。この検査は他の疾患を否定する意味もあります。本症の特徴的な病理組織像は、器質化肺炎、リンパ球性胞隔炎(ほうかくえん)、肉芽腫などです。

 気管支鏡を使って肺内に生理食塩水を注入して肺を洗う検査があります。これを気管支肺胞洗浄(BAL)と呼んでいます。この液のなかにはリンパ球が多くみられ、リンパ球のCD4とCD8の比率が低下する特徴があります。

 また、血清中に原因となる抗原に対する抗体の存在を検索することも重要です。しかし、病気を起こしていない健常者でも陽性になることがあるので、この検査だけでは確定診断とはなりません。

 このような検査を行うとともに、感染症、他の間質性肺炎と区別します。また、慢性過敏性肺炎の場合は、特発性間質性肺炎との区別が非常に困難なことがあります。

治療の方法

 抗原の吸入を避けるようにすることが重要です。家などの環境が原因の場合は、家のなかの掃除や消毒、腐った木の部分の除去(台所、洗面所、風呂場)、風通しをよくするなどの工夫も重要です。また、防御マスクの装着などが効果を示す場合もあります。

 薬物療法については、軽度の症状で日常生活に影響しない場合では無治療で経過をみることがあります。中等症、重症では、発熱、呼吸困難、低酸素血症などがあるため、ステロイド薬の経口・点滴投与や酸素吸入が必要な場合も少なからずあります。

予後

 急性の場合では、入院することなどにより原因から離れると回復することがほとんどです。しかし、慢性の場合では進行することがあります。慢性症例の頻度、正確な予後については、まだ明らかにされていません。

病気に気づいたらどうする

 内科、とくに呼吸器を専門とする内科への受診が望まれます。

 家などの環境が原因の場合は、家のなかの環境整備を行う必要があります。しかし、原因が仕事場などに関係する場合は、原因から離れる工夫が必要になります。

関連項目

 肺炎間質性肺炎特発性間質性肺炎

中島 正光

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過敏性肺炎
かびんせいはいえん
Hypersensitivity pneumonitis
(アレルギー疾患)

どんな病気か

 本症の抗原はさまざまですが、とくにカビ、有機粉塵(ゆうきふんじん)、鳥の糞などを吸入することによって起こるアレルギー性の肺疾患のひとつで、主として肺の間質(かんしつ)に広く炎症がみられます。肺炎のような症状を起こしますが、感染症ではありません。男女を問わず、あらゆる年齢層にみられます。

原因は何か

 有機粉塵に含まれている微生物、とくに真菌類や鳥の糞、単純化合物のTDI(トルエン・ジイソシアネート)などを気道から繰り返し吸入することで発病します。原因物質が吸入されると、気道の奥深く肺胞まで到達します。肺の間質に炎症を起こすことから、外因性アレルギー性胞隔炎(ほうかくえん)とも呼ばれています。

 気候や職業、地域差などによって病態が違い、夏型過敏性肺炎(トリコスポロン・クタネウスが原因)は北海道には少なく、サトウキビ肺症は南日本に、干し草を原因とするものは北海道や東北地方に多いといえます。

症状の現れ方

 原因物質(抗原)の吸入量や時間などによって症状は違います。呼吸器症状と全身症状に分けられます。呼吸器症状では、(せき)、痰、呼吸困難、チアノーゼ、胸痛などです。

 急性型の多くは大量の抗原を吸入したのち、4~8時間で症状を現します。悪寒(おかん)、発熱、倦怠感(けんたいかん)などの全身症状とともに、咳(乾性が多い)や呼吸困難などの呼吸器症状が出ます。重症ではチアノーゼ、血痰、胸痛のほかに、動悸(どうき)や胸がしめつけられるような感じなどもあります。

 症状は数時間~十数時間続き、さらに断続的に現れますが、抗原を取り除くと数時間~数日以内に治ります。急性の発作を繰り返すと、食欲不振や体重の減少が目立ってきて慢性型へ移行することもあります。

 亜急性(あきゅうせい)型は、比較的少量の抗原に長期間さらされる結果、症状が潜在的で慢性の咳、徐々に強まる呼吸困難などによって発病してきます。

 慢性型は、数カ月~数年かけて病変が形成されるもので、抗原を少しずつ長期間吸入して起こります。軽い咳や運動時の息切れ、疲れやすさや体重減少などが徐々に進行してきます。肺の線維化も認められるようになります。軽症例では、微熱や無熱例も多くみられます。

 抗原吸入の多くは日中の労働や作業と関わりがあります。慢性型の経過をたどるのは、夏型過敏性肺炎、空調肺炎、インコ飼病に多く、農夫肺や鳩飼病では、急性・慢性の両方がみられます。

検査と診断

 アレルギーを起こす特定の環境から離れれば症状が治まるため、これが診断の手がかりになります。疑わしいものは抗原の吸入誘発テストで確かめます。胸部X線検査では、定型的な症例ではびまん性散布性粒状影を認めます。血液中の抗体の検出も重要です。また、診断としては病理所見をみることも重要で、肺生検などで診断されます。

 誘発試験として、抗原吸入試験、環境誘発試験があります。抗原が特定できない場合や、家あるいは職場に原因があると考えられる時には、入院後に症状や検査成績が改善したあと、発症環境へ帰るなどして、入院前と同様の症状が再現できるか確認することも重要です。

治療の方法

 根本的に治療するには、環境を変えるか抗原から離れるしかありません。対症療法としては、ステロイド薬(副腎皮質ホルモン薬)が有効です。重症例には酸素吸入、鎮咳薬(ちんがいやく)などが併用されますが、鎮咳薬はあまり効果が期待できません。

相良 博典

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