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違憲立法審査権【イケンリッポウシンサケン】

デジタル大辞泉

いけんりっぽう‐しんさけん〔ヰケンリツパフ‐〕【違憲立法審査権】
法律・命令規則処分憲法に適合するかかを審査する裁判所権限最高裁判所終審裁判所としてその権限を有する。法令審査権違憲審査権

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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朝日新聞掲載「キーワード」

違憲立法審査権
法律や行政行為が憲法に違反していないか審査する権限。日本では、憲法81条により、最高裁に最終的な権限が与えられていることから、最高裁は「憲法の番人」とも呼ばれる。この規定により、地裁や高裁も憲法判断できる。日本の場合、個別法律などについて抽象的に憲法違反を訴えることはできないとされており、具体的な争いの中で合憲違憲が判断される仕組みになっている。
(2013-05-03 朝日新聞 朝刊 1社会)

出典:朝日新聞掲載「キーワード」

世界大百科事典 第2版

いけんりっぽうしんさけん【違憲立法審査権】

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

日本大百科全書(ニッポニカ)

違憲立法審査権
いけんりっぽうしんさけん

裁判所が、事件に適用する法令について、それが憲法に適合するかしないかを審査し、その有効・無効を判断する権限をいう。法令審査権ともいう。また、これを制度として採用している場合には違憲審査制(度)とよばれることが多い。法令審査権には、法令が適法に成立したかどうかを審査する形式的審査権と、法令の内容が憲法に違反していないかどうかを審査する実質的審査権とがあるが、普通は後者をさす。

[池田政章]

歴史

19世紀のドイツ、フランスなどヨーロッパ諸国では、法律が憲法に適合するかどうかの判断は、もっぱら議会や国王に任せられていた。それは、ある法律を制定する場合に、議会や国王がその制定過程のなかで憲法に反するかどうかの判断をしているはずであるから、あらためて他の国家機関がその法律の憲法適合性を判断する必要はないと考えられたからである。明治憲法においても、このような考え方に基づいて、違憲立法審査権について規定しなかった。

 他方、アメリカ合衆国においては、連邦憲法に規定はなかったが、マーベリー対マディソン事件(1803)において、第4代合衆国最高裁判所長官マーシャルが、連邦憲法は最高法規であり、これに反する連邦法は無効であると判決し、ここに違憲立法審査権が確立した。

 20世紀に入ると、第一次世界大戦後に世界各国の政治的・社会的状況が大きく動揺し、それを契機に全体主義が台頭して憲法は危機にさらされた。それを教訓として第二次世界大戦後は、憲法の違反や侵害を防ぐ制度に各国の関心が集まり、各国は競って違憲審査制(度)を採用した。日本もこの潮流にのって、日本国憲法に「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」(81条)と規定した。

[池田政章]

類型

各国の違憲審査制(度)は、それを行う国家機関によって、裁判所型とそれ以外のものに分かれる。後者の例はフランスの憲法院であり、議会で制定された法律が施行される前に、合憲性の審査をするということで、前者の違憲審査とは異なる。前者の裁判所による場合は、さらに普通裁判所によるものと特別裁判所によるものとに分かれる。普通裁判所によるものの代表例はアメリカで、特別裁判所によるものの代表例はドイツである。

 アメリカの違憲審査制は司法審査といわれるが、それは、通常の民事事件あるいは刑事事件において、その適用が問題になっている法規が憲法に適合するかどうかが争われている場合に、普通裁判所がその憲法問題を審査する。したがって、違憲か合憲かの判断は、その民事事件や刑事事件を解決するための前提問題としてなされるわけである。これに対して、ドイツの違憲審査制は憲法裁判といわれるが、それは、具体的な事件がなくとも、抽象的に法規の合憲性審査がなされるという点に特色があり、そのために特別の憲法裁判所が設けられている。世界の違憲審査制は大まかにこの二つの種類に区別され、アメリカ型をとる国は、ラテンアメリカの国々や、カナダ、オーストラリアなどイギリス連邦の国々であり、ドイツ型をとる国は、オーストリア、イタリアなど西ヨーロッパの国に多い。

 日本国憲法の場合、どちらのタイプに属するかについては、憲法制定当初において学説上の争いがあったが、最高裁判所は、いわゆる警察予備隊違憲訴訟(1952年10月8日)において、アメリカ型を採用したものと解釈し、以来、この考え方に基づいて運用されている。つまり、民事事件、刑事事件、行政事件を解決するための前提問題として、適用する法令や処分の合憲性を判断する。したがって、それを審理する裁判所は最高裁判所に限定されず、すべての裁判所が違憲立法審査権をもつとされる。最高裁判所はこれらの裁判の終審裁判所であるから、憲法の具体的な意味は、最高裁判所によって終局的に確定され、同時にこの制度は憲法を裁判手続によって保障することを意味し、そこから「最高裁判所は憲法の番人である」などと通俗的にいわれる。日本国憲法が裁判所に与えている重要な権限である。

[池田政章]

審査権の行使

裁判所が違憲立法審査権を行使するのは、具体的な訴訟事件においてである。つまり、訴訟について法的利益を有する者(これを当事者適格という)が、法律問題の解決を請求して提訴した場合にのみ、この権限が行使される仕組みである。このことを事件性といい、事件性がある、ないといわれる。裁判所法第3条に規定する「法律上の争訟」がこれにあたる。

 ところで、裁判の当事者が当該事件で適用される法律の違憲性を主張していたら、裁判所はかならず憲法判断をしなければならないのかという問題に関しては、考え方に肯定説、否定説の双方がある。日本の裁判所は、憲法判断をしなくとも当該事件を解決しうると考えられる場合には、憲法判断をしないのが望ましいとの考え方にたっている。それは、裁判所の職務は当該事件の解決にあるから、あえて憲法判断に立ち入る必要はないという理由からであり、このような考え方は「憲法判断回避の原則」といわれる。この原則に基づいて、ある法律の憲法適合性が争われている場合に、その法律を字義どおり解釈すると違憲の疑いがあるというときは、その法律の意味を限定して解釈して(合憲限定解釈という)、その法律の効力を維持するということが行われる。また、当該事件において適用が問題となっている法令そのものが違憲(法令違憲という)だと判断せずに、法令の適用あるいは運用の仕方が違憲(適用違憲または運用違憲という)だということもある。このような審査権行使の仕方を司法消極主義といい、憲法あるいは人権擁護のために積極的に憲法判断をすべきであるという司法積極主義と対立する。しかし、裁判所が違憲審査権の発動を自制するのは、(1)国民代表機関たる国会の意思を最大限尊重すべきである、(2)積極的な違憲判断は法的安定を乱し政治的混乱を招きやすい、と考えているからであるといわれている。

 ある法令が違憲・無効とされ、その判決が確定しても、その法令は当該事件には適用しないというだけで、その法令自体の効力が判決によってただちになくなるわけではない(個別的効力という)。そして、違憲無効と判定された法令は、その裁判書の正文を送付された内閣なり国会によって廃止もしくは是正の措置がとられるので、不都合はおこらないと考えられている。

[池田政章]

『芦部信喜編『講座憲法訴訟』全3巻(1987・有斐閣)』『「特集 違憲審査制の現在」(『ジュリスト』1037号・1994・有斐閣)』

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精選版 日本国語大辞典

いけんりっぽう‐しんさけん ヰケンリッパウ‥【違憲立法審査権】
〘名〙 いっさいの法律、命令、規則または処分が憲法に違反しないかどうかを審査する裁判所の権限。違憲問題についての終審裁判所は最高裁判所である。

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