●酸【さん】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
酸
さん
acid
(2) 広義にはプロトンを放出する性質をもつ物質はすべて酸であり,プロトンを取入れるものはすべて塩基であるという定義が,1923年デンマークの化学者 J.ブレンステッドによって提出された。これは非水溶媒中の反応を含めて記述するのに非常に有用である。 (→ブレンステッド=ローリーの定義 )
(3) 23年 G.ルイスは,相手に電子対を与え,相手と共有結合を形成するものが塩基,電子対を受ける相手が酸であると定義した。これは錯形成反応などを論じるのに便利で,適用範囲が最も広い。 (→ルイス酸 )
出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
知恵蔵
酸
(市村禎二郎 東京工業大学教授 / 2008年)
出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
デジタル大辞泉
さん【酸】
出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
さん【酸】[漢字項目]
[学習漢字]5年
1 すっぱい。「酸敗・酸味/甘酸」
2 つらい。いたましい。「酸鼻/辛酸」
3 酸性反応する化合物。「胃酸・塩酸・炭酸・硫酸」
4 酸素のこと。「酸化・酸欠」
[難読]酸模(すかんぽ)・酸漿(ほおずき)・虫酸(むしず)
出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
栄養・生化学辞典
酸
出典:朝倉書店
Copyright (C) 2009 Asakura Publishing Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
世界大百科事典 第2版
さん【酸】
出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.
日本大百科全書(ニッポニカ)
酸
さん
acid
化学的性質に従って物質を分類するとき、相反する性質をもつ塩基とともに対照的に、そして相補的に定義される物質。塩基の性質を打ち消す性質をもつ物質が酸であり、逆に、酸の性質を打ち消す性質をもつ物質が塩基である。
[岩本振武]
酸研究の歴史―初期の概念
酸は、洋の東西を問わず、食酢や果汁のような酸性物質の示す味覚から「酸」とよばれるようになった(ラテン語の酸っぱいを意味するacidusに由来する、英語のacidを導入したのは1626年、F・ベーコンである)。食酢、果汁などの植物起源の物質に含まれる有機酸のほかにも、硫酸、硝酸、塩酸などの鉱物起源の無機酸(鉱酸)があり、これらの酸が木灰などのアルカリ(塩基)の性質を中和することは、錬金術の時代までにすでに知られていた。リトマス紙が酸によって赤色に、アルカリによって青色になる事実は17世紀に知られた。リトマス紙とは、地中海産のコケから抽出される色素をしみ込ませた紙である。
硫酸、硝酸、カルボン酸などの酸には、共通して酸素が含まれることから、酸性は酸素の存在に基づくと考えられた時期もあり、18世紀の末にフランスのA・L・ラボアジエは、スウェーデンのK・W・シェーレとイギリスのJ・プリーストリーの発見した気体に「酸素」oxygène(フランス語)と命名したが、これは文字どおり、酸素を「酸の素(もと)」と考えたからである。しかし19世紀になると、塩酸HCl、ヨウ化水素酸HI、青酸HCN(シアン化水素酸)などの、酸素は含まないが、水素を共通に含む酸の存在が明らかになり、酸には「酸素酸」と「水素酸」の2種類があるとされたこともあった。電離説に基づいて、酸・塩基の統一的定義をスウェーデンのS・A・アレニウスが提出したのは1884年のことである。
[岩本振武]
近代の概念―アレニウスの理論
アレニウスによれば、酸とは水に溶けて電離することにより、水素イオンH+を放出する物質であり、塩基とは同様の過程により、水酸化物イオンOH-を放出する物質である。酸HAあるいは塩基BOHは水溶液中で
の(1)あるいは(2)の解離平衡にあり、(4)、(5)で与えられる解離定数の大小によって酸・塩基の強弱が比較できる。また、酸と塩基との中和反応(4)によって、塩BAと水を生ずる。アレニウスの定義は、水溶液系での酸・塩基の挙動を明快に説明したが、水以外の溶媒(非水溶媒)ではかならずしも成立せず、また、それ自身には解離する水素あるいはヒドロキシ基をもたない物質には適用できない欠点があることもわかった。たとえば、酸には例が少ないが、アンモニアやピリジンなどの塩基は、OHを含んではいないけれども、それらの水溶液は塩基性である。
[岩本振武]
ブレンステッドの理論
1923年にデンマークのJ・N・ブレンステッドによって提出された酸・塩基の理論は、これらの欠点を克服するものであった。彼の理論によると、酸と塩基は水素イオンを介した共役関係にある。酸は水その他の溶媒に溶けて水素イオンを放出する物質であり、その限りではアレニウスの定義とほとんど変わりない。しかし、水素イオンを放出したあとに残る、酸根に相当する物質は、その酸と共役関係にある塩基である、とするのである。
この考えによると、酸あるいは塩基とされる物質が溶媒に溶ける反応自体が、すでに一つの酸・塩基反応となる。そして溶媒は、酸に対しては塩基、塩基に対しては酸として作用する両性物質になる。
の(1)の酸HAが水に溶ける反応では、HAはH+を放出して共役塩基A-になるが、H+は塩基として作用するH2Oに受け取られてH3O+となる。H3O+とH2Oとは、互いに共役する酸・塩基の組合せとなる。 の(2)の塩基Bが水に溶ける反応では、HB+とB、およびH2OとOH-がそれぞれ互いに共役する酸・塩基の組合せとなる。溶媒の自己酸・塩基解離平衡も、一方が酸、一方が塩基となる溶媒分子間の反応で、互いに共役する塩基と酸になるとみることができる。このように、ブレンステッドの定義によると、酸・塩基の反応は、かならず2組の共役酸・塩基反応の組合せとなる。これらの関係を整理すると、結局のところ、水素イオンを放出する物質が酸であり、受け取る物質が塩基である。[岩本振武]
概念の完成―ルイスの理論
ブレンステッドの定義は、水素イオンを解離する溶媒(プロトン性溶媒)の系には成立するけれども、そのような水素をもたない非プロトン性の溶媒の中でも、形式的には酸・塩基反応と同じになる反応がある。このような系に対して、ブレンステッドの提案と同じ年の1923年、アメリカのG・N・ルイスは、さらに拡張された酸・塩基の定義を提出した。ルイスによれば、結合に関与する電子対を受け取る受容体(アクセプターacceptor)が酸であり、電子対を提供する供与体(ドナーdonor)が塩基である。この定義によると、アレニウスおよびブレンステッドの定義した酸・塩基も矛盾なく説明され、さらに配位錯体の生成反応も酸・塩基の反応として説明される。
[岩本振武]
酸・塩基の硬さと軟らかさ
ルイスの定義による酸・塩基は、ルイス酸、ルイス塩基とよばれることが多い(
)。配位錯体の生成は、ルイス酸に対するルイス塩基の配位である。配位錯体の安定性や反応性は、受容体原子と供与体原子との組合せによって支配されることが多い。一般にイオン半径または原子半径が小さくて電荷密度の高い受容体を硬い酸、同じく供与体を硬い塩基、逆にイオン半径または原子半径が大きくて電荷密度の低い受容体および供与体を軟らかい酸および軟らかい塩基という。硬いものどうしの結合はイオン性が強く、軟らかいものどうしの結合は共有性が強い。これをHSAB則hard and soft acids and bases principleという。硬いものどうし、軟らかいものどうしの組合せは、一般に安定な配位錯体を与える。[岩本振武]
『田中元治著『酸と塩基』(1971・裳華房)』▽『水町邦彦著『酸と塩基』(2003・裳華房)』▽『山崎昶著『酸と塩基30講』(2014・朝倉書店)』
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
精選版 日本国語大辞典
さん【酸】
出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
すっぱ・い【酸】
出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
すゆ・し【酸】
出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
す・し【酸】
出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
化学辞典 第2版
酸
サン
acid
歴史的には,水溶液にしたとき,水素イオン H+(オキソニウムイオンH3O+)を陽イオンとして放出する物質で(アレニウス酸,[別用語参照]酸塩基の理論),その水溶液は酸味があり,酸塩基指示薬(リトマス,メチルオレンジなど)を酸性色にかえ,多くの金属に作用して水素を発生させるなどの共通な性質(いわゆる酸性反応)を示す.塩酸HCl,硝酸HNO3,硫酸H2SO4,リン酸H3PO4,シュウ酸H2C2O4などは代表的な酸である.現代では,酸の定義を拡張して,共役酸・塩基を考えて,プロトン(水素イオン,H+)をほかの物質に与えることのできる物質を酸と定める.
NH3 + H2O → NH4+ + OH-
の反応では,水が酸で,
HCl + H2O → H3O+ + Cl-
の反応では,塩化水素HClが酸である(ブレンステッド酸).さらに拡張して,電子対の授受を考え,電子対を受容することのできる物質を酸と定める.三酸化硫黄,五酸化二リンなどの非金属の酸化物(いわゆる酸性酸化物)を酸と考えることができる(ルイス酸).
出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
東京工業大学名誉教授理博 吉村 壽次(編集代表)
信州大学元教授理博 梅本 喜三郎(編集)
東京大学名誉教授理博 大内 昭(編集)
東京大学名誉教授工博 奥居 徳昌(編集)
東京工業大学名誉教授理博 海津 洋行(編集)
東京工業大学元教授学術博 梶 雅範(編集)
東京大学名誉教授理博 小林 啓二(編集)
東京工業大学名誉教授 工博佐藤 伸(編集)
東京大学名誉教授理博 西川 勝(編集)
東京大学名誉教授理博 野村 祐次郎(編集)
東京工業大学名誉教授理博 橋本 弘信(編集)
東京工業大学教授理博 広瀬 茂久(編集)
東京工業大学名誉教授工博 丸山 俊夫(編集)
東京工業大学名誉教授工博 八嶋 建明(編集)
東京工業大学名誉教授理博 脇原 將孝(編集)
Copyright © MORIKITA PUBLISHING Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの項目は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
「酸」の用語解説はコトバンクが提供しています。
●酸の関連情報