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量子電磁力学【りょうしでんじりきがく】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

量子電磁力学
りょうしでんじりきがく
quantum electrodynamics
電子電磁場量子力学QEDと略称することが多い。場の量子論が現実的な素粒子記述に成功した典型的な例であり,今日までの実験で 10-16m以上の現象では厳密に成立することが知られている。小さい結合定数(微細構造定数α=1/137.04の平方根)に関して摂動計算を行なうと,最低次の結果は現象を比較的適切に記述するが,高次摂動はしばしば無限大となり,いわゆる発散の困難が起こる。しかし発散量は朝永振一郎,ジュリアン・S.シュウィンガー,リチャード・P.ファインマン,フリーマン・J.ダイソンらが発展させたくりこみ理論で処理され,質量電荷に観測量を使えば,あらゆる実験値を高精度で説明することができる。ラムシフトや電子の異常磁気モーメントの計算がその例である。量子電磁力学の研究から組み上げられた相互作用のゲージ理論やくりこみ理論の考えは,素粒子の標準理論の建設の指導原理となった。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

りょうし‐でんじりきがく〔リヤウシ‐〕【量子電磁力学】
荷電粒子電磁場からなる力学系を、原子素粒子量子として扱い、電磁場の量子との相互作用として相対論的に記述する理論。朝永振一郎(ともながしんいちろう)らの繰り込み理論によって完成。量子電気力学。QED(quantum electrodynamics)。

出典:小学館
監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

りょうしでんじりきがく【量子電磁力学 quantum electrodynamics】
英語の頭文字をとってQEDともいう。電子をはじめ荷電粒子と電磁場の相互作用を量子力学的に取り扱う力学体系。この量子電磁力学は,定性的にはいろいろな現象を説明するのにつごうがよかったにもかかわらず,本来理論の中に大きな困難をもっていた。それは摂動展開の第1近似では実験とほとんど一致する答えを与えてくれるが,次の項を計算すると発散してしまうことで,例えば電子が光と相互作用をする場合,電子の質量が無限大になってしまう。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

りょうしでんじりきがく【量子電磁力学】
荷電粒子と電磁場から成る系を、相対論的な場の量子論として扱う理論。繰り込み可能な理論であり、電子やミュー( μ )粒子などの電磁的性質に関する実験結果を非常に高い精度で再現する。量子電気力学。 → 繰り込み理論場の理論

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

量子電磁力学
りょうしでんじりきがく
quantum electrodynamics
荷電粒子と電磁場とからなる力学系を対象とする量子力学を量子電磁力学、あるいは量子電気力学ともいい、QEDと略称する。

場の量子論の誕生

量子力学の発見後、ディラックは、電磁場を無限個の振動子の集まりとみなして荷電粒子の光の吸収・放射を量子力学的に扱い、電磁場に伴う粒子・光子の生成・消滅過程の記述を可能にした。粒子の力学系に対する量子力学的記述では、通常は粒子数が一定であるとしている。ディラックの先駆的研究ののち、粒子に伴う波すなわちド・ブローイ波(物質波)を量子化することによって粒子の生成・消滅過程の量子力学的記述が可能になった。これは物質場の量子化である。通常の量子力学の理論の運動方程式、たとえばシュレーディンガー方程式はあらかじめ与えておいた粒子数の力学系を対象とする運動方程式である。したがって、力学系の粒子数を一つの物理量と考えたとき、シュレーディンガー方程式は粒子数という物理量の固有状態に対する運動方程式であると考えられる。位置や運動量に力学系の個々の粒子を示す添え字がついている。すなわち、個々の粒子の力学変数が力学系を表示している。これを個体表示という。この表示から出発し、シュレーディンガー方程式を、どのような状態に何個の粒子が属しているかという表示に変形していく。この変形はそうむずかしくないが、変形した結果は興味深い。粒子の状態を示す波動関数(x,y,z)をあたかも各点ごとの独立の力学変数のようにみなして量子化、すなわち(x,y,z)と(x,y,z)の複素共役(きょうやく)との間の交換関係を置いた結果になっている。これが場の量子化といわれるものである。ついで1929年ハイゼンベルクとパウリは、相対性理論に沿った電子場と電磁場との共存した力学系の量子力学すなわち相対論的場の量子論の形式をつくりあげた。この相対論的場の量子論は量子力学の完成した形式と思われたが、たちまち重大な問題に逢着(ほうちゃく)した。それは、量子電磁力学の解を電荷eのべき級数展開として求めたとき、eの一次の項が実験事実を正しく再現するにもかかわらず、eの二次以上の項に無限大の発散が現れることである。この発散は、場が無限個の独立な振動子の集まりとみなしうること、いいかえれば場の自由度が無限大であることに由来するものであり、簡単な処方では取り除くことができない深刻な問題であった。それにもかかわらず湯川秀樹は1935年(昭和10)、量子化された電磁場との類推が中間子場を研究する正しい方向と考え、中間子の存在の理論的予言に成功している。[田中 一]

第二次世界大戦後の発展

1948年、朝永振一郎(ともながしんいちろう)は、量子電磁力学の解に現れる発散を質量型と荷電型に整理すると、これらの発散が解のなかの質量mや荷電eにそれぞれまとまることをみいだした。このように整理されまとまった発散を含んだ質量や荷電は現実に存在する電子が1個の場合にも現れるので、この発散を含んだ質量と荷電を実験値に置き換えれば有限な結果を得ることができる。これをくりこみ理論という。ダイソンFreeman John Dyson(1923―2020)は、荷電eのべき展開の任意の次数の項でくりこみが可能であることを示した。くりこみ理論の初期には、量子化された電子場の作用によって生ずる電子の磁気モーメントのずれや水素原子内電子の軌道のエネルギーのずれ、すなわちラム・シフトが理論の検証となった。2012年時点で、これらの量の理論値と実験値は電子の磁気モーメントに対し、13桁(けた)まで一致している。この結果はまことに驚異的であるが、量子電磁力学の解自身はeのべき級数(整級数)として収束せず漸近級数となっており、質量と荷電の発散とともになお問題の最終的な解決には到達していない。
 1968年に発表されたワインバーグ‐サラムの理論により電磁相互作用と弱い相互作用が統一され、量子電磁力学はこの統一理論に包含されるようになった。[田中 一・加藤幾芳]
『横山寛一著『量子電磁力学――ゲージ構造を中心として』(1978・岩波書店) ▽I・J・R・エイチスン、A・J・G・ヘイ著、藤井昭彦訳『ゲージ理論入門1 電磁相互作用』(1992・講談社) ▽長島順清著『素粒子物理学の基礎1』(1998・朝倉書店) ▽渡辺靖志著『素粒子物理入門――基本概念から最先端まで』(2002・培風館)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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