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雨月物語【うげつものがたり】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

雨月物語
うげつものがたり
江戸時代中期の読本上田秋成作。5巻5冊。明和5 (1768) 年成立,安永5 (76) 年刊。「白峰」「菊花の約」「浅茅宿」「夢応の鯉魚」「仏法僧」「吉備津の釜」「蛇性」「青頭巾」「貧福論」の9話から成る。いずれも和漢の作品を典拠とした一種の怪談であるが,仏教的因果関係の思想や儒教的勧善懲悪の倫理観を乗越えて,封建社会のなかでは求めがたい純朴な人間像を,古い時代や超自然的な場を舞台にして追求しようとする姿勢が全編を貫いている。先行の中国白話 (口語体) 小説翻案文学にならってはいるが,和漢の古語を自由に駆使した独特の文体鬼気迫る怪奇描写,自己の思想を鮮明に示した内容は,従来の単なる翻訳,翻案の態度を一新したもので,読本というジャンルのなかで独自の高い評価を得ている。

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雨月物語
うげつものがたり
日本映画。大映 1953年作品。上田秋成の『雨月物語』より「浅茅が宿」「蛇性の淫」を脚色。監督溝口健二脚本川口松太郎依田義賢。撮影宮川一夫。美術伊藤熹朔。音楽早坂文雄。主演京マチ子田中絹代森雅之。戦国時代の琵琶湖畔の陶工農民の兄弟が戦国の動乱に巻込まれる悲劇戦禍荒廃のリアリズムと幻想性が,溝口の卓越した演出により映画の詩に昇華している。 53年ベネチア国際映画祭サン・マルコ銀獅子賞受賞 (同年の金獅子賞は該当作なし) 。溝口健二の代表作。

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デジタル大辞泉

うげつものがたり【雨月物語】
江戸中期の読本。5巻。上田秋成作。明和5年(1768)成立。安永5年(1776)刊。和漢の典籍を素材とした、夢幻と現実を合わせた作品9話から成る怪異小説集。
溝口健二監督、川口松太郎脚本による映画の題名。昭和28年(1953)公開。をもとに、男女の愛を幻想的に描く。出演、京マチ子、森雅之、田中絹代ほか。ベネチア国際映画祭銀獅子賞受賞。

出典:小学館
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デジタル大辞泉プラス

雨月物語
1953年公開の日本映画。英題《Ugetsu Monogatari》、また《Tales of Ugetsu》とも。監督:溝口健二、脚本:川口松太郎ほか、美術:伊藤熹朔、録音:大谷巖。出演:京マチ子、水戸光子、田中絹代、森雅之、小沢栄ほか。江戸時代の読本『雨月物語』をベースとした幻想的作品。ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞。第8回毎日映画コンクール美術賞、録音賞受賞。

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世界大百科事典 第2版

うげつものがたり【雨月物語】
溝口健二監督の映画。1953年製作。《西鶴一代女》の1952年ベネチア映画祭国際賞受賞に次いで翌年同映画祭銀獅子賞を受賞し,溝口の名を国際的に高めた。上田秋成の《雨月物語》の中の〈浅茅が宿〉と〈蛇性の淫〉に,モーパッサン短編小説《勲章》を加えて川口松太郎が小説化したものから,依田義賢と川口が共同で脚本を書いた。溝口は上田秋成の原作を愛読していて,〈この物語の中からさまざまな幻想が頭の中に浮かび,できた映画〉だと書き残している。

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うげつものがたり【雨月物語】
読本。剪枝(せんし)畸人(上田秋成)。1768年(明和5)成立,76年(安永5)刊。半紙本5巻5冊。初版初刷は大坂野村長兵衛,京都梅村判兵衛合梓本だが,幕末ごろまでに数次の後刷本,再版本がある。体裁は,都賀(つが)庭鐘の《英(はなぶさ)草紙》(1749),《繁野話(しげしげやわ)》(1766)にならって,5冊の中に9編の短編を収めている。内容の上でも,中国白話小説の翻案であった上記2書にならったところは多く,各短編は《警世通言》など中国白話小説の怪奇的作品,また,《剪灯新話》など神秘的・幻想的な中国小説や故事を典拠としている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

雨月物語
うげつものがたり

上田秋成(あきなり)作の怪異小説集。5巻9話。1768年(明和5)の自序(剪枝畸人(せんしきじん))をもつが、実際の初刊は1776年(安永5)。初期読本(よみほん)を代表する作品で、幕末まで同一板木によって数版を重ねた。『白峰(しらみね)』『菊花(きっか)の約(ちぎり)』『浅茅(あさじ)が宿(やど)』『夢応(むおう)の鯉魚(りぎょ)』『仏法僧(ぶっぽうそう)』『吉備津(きびつ)の釜(かま)』『蛇性(じゃせい)の婬(いん)』『青頭巾(あおずきん)』『貧福論(ひんぷくろん)』の9話からなる。

(1)『白峰』 讃岐(さぬき)白峰の崇徳(すとく)上皇陵に詣(もう)でた西行(さいぎょう)が、上皇の怨霊(おんりょう)と皇位継承について議論を闘わせる話で、上皇は、魔王の本姿を現じ、復讐(ふくしゅう)の実現を予告して消え去る。

(2)『菊花の約』 丈部左門(はせべさもん)と義兄弟の契りを結び、重陽(ちょうよう)の日の再会を約して別れた赤穴宗右衛門(あかなそうえもん)は、尼子(あまこ)の城に幽閉されて出ることを許されず、自害し、魂魄(こんぱく)となってその約を果たす。

(3)『浅茅が宿』 家運挽回(ばんかい)のために上京、7年を過ごして帰国した勝四郎は、荒れ果てたわが家にひとり夫を待ち続ける妻宮木(みやぎ)の姿を見る。喜ぶ妻と一夜語らったあとみいだしたものは、いまわの心を歌に記した一枚の那須野紙(なすのがみ)であった。

(4)『夢応の鯉魚』 鯉(こい)の絵の名手興義(こうぎ)が、鯉魚に変身して琵琶湖(びわこ)を遊泳する綺談(きだん)。

(5)『仏法僧』 高野山(こうやさん)に参籠(さんろう)した夢然(むぜん)父子が、修羅道(しゅらどう)に落ちた殺生(せっしょう)関白豊臣秀次(とよとみひでつぐ)一行に出会う話。

(6)『吉備津の釜』 井沢庄太夫(しょうだゆう)は、一子正太郎の素行を修めさせるため吉備津神社の神主香央(かんざねかさだ)家の娘磯良(いそら)を迎えるが、正太郎は遊女袖(そで)を伴って出奔、裏切られて物の怪(もののけ)と化した磯良は、袖を取り殺し、陰陽師(おんみょうじ)の助けを借りる正太郎も食い殺してしまう。

(7)『蛇性の婬』 蛇の化身(けしん)真女児(まなご)と文雅な若者豊雄(とよお)の愛の葛藤(かっとう)が描かれている。愛欲におぼれかけた豊雄は、雄々しさに目覚め、法力を借りて蛇妖(じゃよう)を調伏(ちょうぶく)する。

(8)『青頭巾』 寵童(ちょうどう)の屍肉(しにく)を食って鬼となった僧侶(そうりょ)が、快庵禅師(かいあんぜんじ)の一喝(いっかつ)によって頓悟(とんご)、青頭巾と骨のみを残して消じ去る話。

(9)『貧福論』 奇人岡左内のもとに黄金の精霊が現れ、金銭の論理について語る話。

 都賀庭鐘(つがていしょう)の『英草紙(はなぶさぞうし)』の様式を継承、『古今(ここん)小説』や『警世通言(けいせいつうげん)』など、当時流行の中国白話(はくわ)小説に想をとる翻案小説の形がとられているが、『源氏物語』『今昔物語』、謡曲など、古典の撮合重層化を通して、自国の風土と人間の構造に光があてられており、和漢を折衷した簡潔で視幻的な文辞、知的な構成力と相まって、小説として高度な結晶をみせている。いずれの登場人物も、執念の哀(かな)しさと恐ろしさがリアルに描き出されていて、単なる怪異を超えて人間性の深淵(しんえん)が可視化されている。山東京伝(さんとうきょうでん)や曲亭馬琴(きょくていばきん)など、後続の作家たちに大きな影響を与えた。

[中村博保]

映画

日本映画。1953年(昭和28)作品。溝口健二(みぞぐちけんじ)監督。上田秋成の『雨月物語』全9話から、「浅茅が宿」と「蛇性の婬」をもとに川口松太郎と依田義賢(よだよしかた)が脚色。戦さに翻弄(ほんろう)される貧農の兄弟が、焼物を町に売りに行って儲(もう)け、兄源十郎(森雅之(もりまさゆき))は織田信長に滅ぼされた城主の娘、実は死霊の若狭(わかさ)(京マチ子(きょうまちこ)、1924―2019)に夢中になるが、その間に妻宮木(みやぎ)(田中絹代(たなかきぬよ))は落ち武者に刺されて果てる。弟藤兵衛(とうべえ)(小沢栄(おざわさかえ)(本名小沢栄太郎(えいたろう))、1909―1988)は侍になるのを夢見て出世するが、置き去りにされた女房阿浜(おはま)(水戸光子(みとみつこ)、1919―1981)は娼婦(しょうふ)となっていた。男たちの欲望・無謀と女たちの受難を、夢幻的な能の様式も取り入れながら、溝口流の確かなリアリズムで描き、溝口作品の一つの到達点となった。琵琶湖を行く舟のシーンなど、宮川一夫(みやがわかずお)(1908―1999)カメラマンの撮影も、モノクロの陰影美を極めた画面となっている。ベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞し、フランスのゴダール監督も激賞して、世界的な評価を集めた。

[千葉伸夫]

『中村幸彦校注『日本古典文学大系56 上田秋成集』(1959・岩波書店)』『鵜月洋著『雨月物語評釈』(1969・角川書店)』『中村幸彦・高田衛・中村博保著『新編 日本古典文学全集78 英草紙・西山物語・雨月物語・春雨物語』(1995・小学館)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

うげつものがたり【雨月物語】
江戸中期の読本。五巻五冊。上田秋成作・桂眉仙画。正称「近古奇談雨月物語」。安永五年(一七七六)、大坂、野村長兵衛刊。「剪燈新話(せんとうしんわ)」「古今小説」「警世通言」など中国小説の翻案の多い怪異小説集。「白峰」「浅茅が宿」など九編を収める。前期読本の代表作であり、後続作品に与えた影響は大きい。

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旺文社日本史事典 三訂版

雨月物語
うげつものがたり
江戸中期,上田秋成の読本 (よみほん)
1776年刊。5巻。日本・中国の古典に素材を求め,幻想の世界を迫真的に描いた雅文怪異小説で,9話からなる。江戸中期の文芸復興一端をになう名作として名高い。

出典:旺文社日本史事典 三訂版
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