●音階【おんかい】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
音階
おんかい
scale
出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
デジタル大辞泉
おん‐かい【音階】
出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
世界大百科事典 第2版
おんかい【音階 scale】
出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.
日本大百科全書(ニッポニカ)
音階
おんかい
scale 英語
Skala ドイツ語
Tonleiter ドイツ語
音の高さの階梯(かいてい)。この語は本来、欧米諸語の訳語として明治以後用いられるようになったもので、日本に古くから「音階」という概念が存在したわけではない。さらに非欧米音楽も含めて広義にこの語を用いるには困難も伴うが、一般に、ある音楽内で用いられる諸音を整理して、そのうちの主要なものを音高順に配列したものと規定される。この意味で音階はその音楽における音程関係の秩序を示すものということができ、その音程関係の周期性によってある一定の音域(たとえば西洋近代の場合は基音に始まり基音に終わる1オクターブ)をもつ。
[南谷美保・川口明子]
音階の種類
世界には民族や時代によって異なるさまざまな音階が存在しており、多くの観点から分類されうるが、ここでは西洋の音階を中心に、常用されている分類法について述べる。
(1)全音階と半音階 1オクターブを五つの全音と二つの半音に分割したものが全音階で、長音階と短音階がこれにあたる。全音だけからなる音階は全音音階という。半音階は全音階から派生したもので、全音階中の全音間も半音で埋めたもの。
(2)長音階と短音階 ともに全音階に含まれるが、長音階は音階の第3度に長3度をもち、短音階は第3度に短3度をもつもので、短音階には3種(自然的・和声的・旋律的)ある。
(3)七音音階と五音音階 全音階のように7音よりなるものは七音音階(ヘプタトニック)、半音階のように12音からなるものは十二音音階という。五音音階(ペンタトニック)は東洋を中心に広く世界中にみられるが、半音を含むものと、含まないものとの2種に大別できる。
(4)素材音階と実用音階 素材音階とは使用されうるすべての音を並べた音階で、これはむしろ音列というべきである。実用音階は、素材音階のなかから主要な音を選択したもの。たとえば十二半音階が素材音階で、このうちの7音よりなる長音階が実用音階である。
[南谷美保・川口明子]
音階と旋法
音階と旋法(モードmode)とは混同されやすいが、一般に次のように使い分けられる。音階が構成音を音高順に並べた基本音列であるのに対し、旋法はある音楽に実際によく使われる特徴的な音程関係の様態を示すものである。たとえば、長音階は長調の音程関係を音高に従って配列したものであり、長旋法とよぶことができる。
[南谷美保・川口明子]
音階と音律
音律とは音程比(音の振動数の比)を物理的、数学的に規定するものであり、音階の基礎となるものである。したがって、譜面上は同じにみえる音階でも、用いられる音律によって音階内の音高関係は変化する。たとえば西洋の場合をみると、同じ曲を純正律で奏するのと平均律で奏するのでは響きが異なる。
[南谷美保・川口明子]
西洋の音階
古代ギリシアの音階は、テトラコード(両端が完全4度をなす枠組み)を基礎としており、これを二つ重ねることによってつくられるハルモニアといわれるオクターブは7種あった。
中世になって教会旋法とよばれる体系が徐々に発展した。ミラノ司教アンブロシウス(在位374~397)の時代にまず4種の旋法が定められ(正格旋法)、教皇グレゴリウス1世(在位590~604)の時代にさらに4種が加えられ(変格旋法)、8種類となった。教会旋法は終止音、全音と半音の位置、保続音、音域によって規定され、各名称はギリシアの音階に似ているが、ギリシアの音階がつねに中央イ音を中心音(メーサ)としていた点で、両者は根本的に異なる。
その後、多声音楽の発展に伴い、和声的感覚が強まって、変化音の使用や旋法上の終止音の移動などがおこった結果生じた新しい旋法を、1547年にグラレアーヌスがイオニア旋法とエオリア旋法として認めた。これらは今日の長音階および自然的短音階と同形であり、教会旋法はしだいにこれら2種の旋法へと統合されていった。
17世紀以後は長、短両音階が中心となり、十二平均律の理論のもとに12の調すべてのうえに音階がつくられるようになった。19世紀に入ると調性からの離脱を求めて、全音音階や十二音音楽などが生じた。また、ジプシー音階などの民族的音階への関心も19世紀末ごろから高まっている。
[南谷美保・川口明子]
東洋の音階
東洋と西洋の掛け橋としてまず西アジアから述べていく。西アジアは、古代にはギリシアと密接な関係にあったため、テトラコードや音程に関する理論が早くから発達した。この地域の大きな特徴は微分音程の存在で、これらは1/4音から1/9音まで細かく規定されている。これによって1オクターブは17、24、54の音に分割される。トルコでは1音を9等分した細かい音程が用いられるが、イラン、エジプトなどでは4分音を基礎とした二十四律が用いられている。
インドも、西アジアや後述する中国と並んで早くから独自の音階理論を発達させてきた。インドの音階は、サ・リ・ガ・マ・パ・ダ・ニの7音からなるが、古くは4世紀ごろの『ナーティヤ・シャーストラ』に、シュルティ(微小音程)の組合せによる2種の基本音階サ・グラーマとマ・グラーマが示されている。これをもとに、今日のインドの音楽理論の中心の一つであるラーガ(音階・旋法の理論)が発達してきた。ラーガ(北インドではラーグ)には多くの種類があるが、今日では南インドでは72種、北インドでは10種に整理されている。
中国では、古代から三分損益法による五声、七声という、五音および七音音階がある。五声、七声は階名で、音高の基準である律は時代によって七律、十二律、六十律などが考えられた。実際には五音音階が多く用いられ、雅楽では宮調(呂(りょ)音階)、俗楽では徴調(律音階)が多く用いられている。中国の音階およびその理論は、古くから朝鮮、日本、ベトナムなどに影響を及ぼしてきた。
東南アジアでは、五音音階と七音音階の考え方が混じっており、また打楽器アンサンブルの盛んなこの地域では、西洋のようには音律をあまり厳密に規定しないため、ドレミ……では表せないような独自の音階が存在している。たとえば、1オクターブを7等分し、そのうちの5音を用いるタイの五音音階や、インドネシアのガムラン音楽で聞かれるスレンドロ(オクターブをほぼ5等分した五音音階)やペロ(大小2種の音程からなる七音音階)の両音階などがよく知られている。
[南谷美保・川口明子]
日本の音階
日本では各ジャンルでそれぞれ独自の音組織が使われてきたため、それらを一律に論じることはむずかしい。
日本音楽史のなかで古来より音階論が盛んであったのは雅楽や声明(しょうみょう)である。これらは中国の理論に基づいたものであり、日本の実情との差異のためかえって混乱をきたしていた。雅楽の理論で用いられる音階は呂旋と律旋の2種であったが、現在では実際に使われるのは律旋のみとなっている。声明でも同様にほとんどの曲が律旋によっている。
一方、明治以後、民謡や近世邦楽も含めてあらゆる日本の音階を総括的に整理しようとする近代的な音階論が展開されるようになった。そのなかで今日もっともよく用いられるのは小泉文夫(1927―83)の理論である。日本の音階は基本的には五音音階で、従来は半音の有無で陽音階と陰音階の2種に分類されていた。それに対し小泉は、より基本的な単位として4度枠の核音構造(これをギリシアの音楽理論から援用してテトラコードとよんだ)を打ち出し、このテトラコードを2種重ねることによって音階が形成されていると説いた。テトラコードは中間音の位置によって4種に分類されるが、同種のものを二つ重ねた音階が四つの基本音階、つまり、民謡音階、都節(みやこぶし)音階、律音階、琉球(りゅうきゅう)音階である。これら4種はそれぞれ、民謡や童唄(わらべうた)、箏曲(そうきょく)などの近世邦楽、雅楽、沖縄の音楽に特徴的な音階である。このほかに、異なる2種のテトラコードを接合する例も多く、実際の音楽のなかにはこれらさまざまな音階または音列が現れている。
[南谷美保・川口明子]
『エリス著、門馬直美訳『諸民族の音階』(1951・音楽之友社)』▽『小泉文夫著『日本伝統音楽の研究』(1958・音楽之友社)』
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
精選版 日本国語大辞典
おん‐かい【音階】
出典:精選版 日本国語大辞典
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。
「音階」の用語解説はコトバンクが提供しています。
●音階の関連情報