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風刺【ふうし】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

風刺
ふうし
satire
個人の愚行,政治の欠陥,社会の罪悪などに対する批判や攻撃を,機知に富んだ皮肉,あざけり,あてこすりなどの形で表現した詩文。風刺文学はまずローマで栄えたが,その代表的作家はホラチウスユウェナリスである (→サトゥラ ) 。中世では動物譚など寓話形式の風刺物語がみられた。 18世紀は「風刺の世紀」と呼ばれ,イギリスでは詩人ポープがドライデンのあとをうけて古典的な風刺を完成させた。しかし風刺文学の本流は散文に移り,イギリスではスウィフト,フランスではボルテールが現れた。 19世紀以後は,たとえばバイロン,G.B.ショーらにたくましい風刺精神が認められるが,伝統的な風刺文学は分散する傾向にある。日本では特異な風刺詩として川柳や狂歌があり,広く大衆に愛好されたが,質量ともに本格的な風刺といえるものは少なかった。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

ふう‐し【風刺/×諷刺】
[名](スル)社会や人物の欠点・罪悪を遠回しに批判すること。また、その批判を嘲笑的に表現すること。「―のきいた小説」「時代を―する」

出典:小学館
監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

ふうし【風刺】
人間の愚かさや誤りを痛烈に指摘して正す一手段で,主として言葉を用いるが,絵画,音楽,舞踏ジェスチャーなどによる場合もある。単なる非難,批判と違って,直接的ではなく間接的に,皮肉やユーモアの衣をかぶせて目的をより効果的に達することが多い。英語,フランス語ではsatire,その語源はラテン語のsatira(satura)であるが,これがどのような起源から生まれたものであるかについてはまだ定説がない。かつてはギリシア神話の中に出てくるサテュロス(好色でいたずら好きな半人半獣の森の神)が起源であると考えられた。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

風刺
ふうし
satire 英語 フランス語
現実の社会や個人に対する批判的・攻撃的な精神の表現。Satireはラテン語のsaturaに由来する語で、これをギリシア神話の牧神サティロスSatyrosと結び付ける、ルネサンス期に行われた語源考は誤りである。Saturaは「満ちた」の意の形容詞に基づき、「盛り合せの料理」を意味し、転じて当初は、数種の詩形を組み合わせた詩をさしていた。それが風刺的な詩をさすようになった次第の厳密なところはわからない。皮肉な内容を詩と散文の混合形式で展開した紀元前3世紀の哲学者メニッポスMenipposの著作の様式は、前1世紀のローマの文人ウァローVarro(前116―前27)の模倣によって、メニッポス風またはウァロー風風刺文として知られている。また風刺詩の始祖とされるのは前2世紀のローマの詩人ルキリウスである。風刺の本質は、対象が現実であることと、それに対する精神の独特な態度の二つの面によって規定されている。まず、アイソポスの寓話(ぐうわ)のように、対象が人の生態一般であるようなものは、風刺とは区別される。現実を攻撃対象とすることは、風刺が憤りに発するものであるということであり、冷静な皮肉、モラリスト風の描写、さらにはパロディーを代表とする戯作(げさく)文学などとは一線を画している。だが反面において、憤りの直接的表現である呪(のろ)い、悪口、抗議なども風刺とはいえない。風刺であるためには、対象に対して距離をとり、憤りを抑制して表現する必要がある。この独特な態度こそが風刺の本質であり、その表現は対象の誇張的変形を伴い、機知を示すことが多い。[佐々木健一]

風刺詩

古代ギリシアにはイアンボス(短長格)による風刺詩が存在したが、このジャンルの伝統の源泉はローマにある。前掲のルキリウスを受けて上品で打ち解けた表現を風刺詩に与えたホラティウス、難解なペルシウス、情熱的な激しさをみせたユウェナリスが代表的詩人である。とくにユウェナリスは近世における風刺詩の模範とされた。中世にはさまざまな名称の風刺詩が存在したが、復興されたローマ的風刺詩の代表的詩人はフランスのレニエ、ボアロー、イギリスのB・ジョンソン、ドライデン、ポープらであり、大革命の最中、獄中でつづられたシェニエの風刺詩も特異な存在である。風刺詩の題材は人事全般にわたるが、主要なものとしては人々の生きざまや性格(とくに好まれた主題の一つは「女性」である)、政治、そして文学などである。詩のなかでは、風刺詩と区別すべきものとしてエピグラム(寸鉄詩)がある。エピグラムも風刺的な内容をもつが、短さを特色としており、言語表現のおもしろみに本領がある。これに対して風刺詩は物語的展開を含むほどの長さをもっている。そこで風刺詩には、風刺する主体が語り手として登場してくることになる。この風刺の主体は詩人とは区別される存在であり、前述した「対象との間の距離」を具現しているとみることができる。このことは、劇や対話編のような他の形式の風刺文学の場合により顕著である。これらの形式では作者の存在が行間に消えてしまうからであり、極端な場合には、モリエールの『人間嫌い』のアルセストやスウィフトのガリバーのように、最後には社会から疎外されるという形で否定される風刺の主体もある。ここに風刺特有の韜晦(とうかい)がみられる。[佐々木健一]

その他の風刺文学

そこで他の形式の風刺文学に注目するなら、戯曲のなかでまず第一にあげるべきはアリストファネスの古喜劇である。その生き生きとした力強さは類例がないが、近世以後の喜劇のなかにも、モリエールやジョンソン、ゴーゴリらに風刺的作品がある。風刺的対話編は前述したように重要な形式であるが、その原型は、やはりメニッポスの影響を受けたルキアノスにある。近世ではエラスムスやディドロがこの形式において才気を示した。対話と似た効果をもつのが書簡形式であり、宗教改革の闘士フッテンの『無名氏たちの手紙』、モンテスキューの『ペルシア人の手紙』などがある。また物語、小説の代表的な作家、作品をあげるなら、中世の『狐(きつね)物語』、16世紀ではS・ブラント『愚者の船』、ラブレーとチョーサーとセルバンテス、18世紀に下ってボルテール『カンディード』、スウィフトの『桶(おけ)物語』に『ガリバー旅行記』、より近くはディケンズ『荒涼館』、ジョイス『ユリシーズ』の一部分、オーウェル『一九八四年』などがある。[佐々木健一]

視覚的な風刺

初めに示した風刺の本質は、言語によってもっともよく現実化することができるとはいえ、造形的な表現を拒むものではない。「風刺画」は別項があるが、風刺漫画について一言するならば、落書きのようなものを除けば、宗教改革期に盛んとなり、マスコミの発達とともに発展してきたとみてよい。言語の場合以上に複製手段が重要だからである。最後に風刺的映画に目を転ずるなら、チャップリンの『モダン・タイムス』と『独裁者』が代表作であることは、衆目の一致するところである。[佐々木健一]
『N・フライ著、海老根宏他訳『批評の解剖(第三エッセイ)』(1980・法政大学出版局) ▽M・ホジャート著、山田恒人訳『諷刺の芸術』(1983・平凡社)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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