●飛翔【ひしょう】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
飛翔
ひしょう
flight
飛翔には基本的に運動のエネルギーによるはばたき飛行 winged flightと,位置のエネルギーによる滑空 glidingの2種類がある。定温動物 (鳥類とコウモリ) がはばたき飛行をするためには,進化の過程で体の構造をさまざまに変化させる必要があった。鳥類を例にとれば,一対の前肢が翼に変形した。骨は中空になって軽量化するとともに,胴部の骨格が融合して箱型になり,はばたきの力を有効に使えるようになった。食べた物をすぐに排泄することで大腸を省略し,生殖器官も非繁殖期には縮小するなど,内臓の減量化に成功している。重心の面では,歯や顎の筋肉は嘴に置換され,頭部が軽くなったので安定が良くなった。また比較的重い消化器官を翼と脚の付根にくるように配置し,飛翔と歩行時の重心のずれを解決している。さらに,はばたきの力を生みだす心臓と胸筋の強化,安全に飛翔するための視覚や聴覚の発達などあらゆる面で変化が起った。一方,昆虫では翅が発達したが,これは肢が変化したものではなく,体表全体をおおっている角質が特殊化したものである。これらのはばたき飛翔する動物にもたらされた恩恵は大きい。種の多さや個体数の多さを考えてみると,昆虫,鳥類,コウモリは最も繁栄した動物グループといえるからである。
滑空には,いわゆる重力による滑空とソアリング (帆翔あるいは滑翔。 soaring) の2種類がある。さらに重力による滑空には,方向を定めて飛立つものと,水平の動きは風にまかせてゆっくり降下する受動的なものがある。方向を定める重力滑空を行う動物には,体のさまざまな部位に,翼の代りとなる特殊な器官を備えたものが多い。例えば,魚類では胸鰭を大きく発達させたトビウオ,両生類では大きな蹼 (みずかき) をもつトビガエル,爬虫類では伸縮自在の皮膜を体側にもつトビトカゲ,哺乳類では前肢と後肢の間に皮膜を発達させたヒヨケザルやムササビ,モモンガなどである。トビトカゲで約 60m,ヒヨケザルで 130m以上滑空できるといい,尾や手足が方向舵の役目をしている。ソアリングは長時間はばたかずに滞空することである。コンドルやアホウドリなどの大型の鳥とオオカバマダラなどの昆虫が,この方法を獲得した。風が一様に吹いているときにソアリングを試みる動物に必要なのは,自分の沈下速度を超える上昇速度をもつ気流を捉えることである。風の進路が妨げられて上昇気流が生れる山脈や海辺の崖縁付近,また太陽光によって大地が暖められ,大気中に熱の循環が起るときがソアリングに適した条件といえる。また大気中の小さな気流の乱れからも,鳥たちは飛翔のエネルギーを得ることができる。アホウドリの体重は約 7kgに達するが,翼開長約 2.4mという巨大な翼で海面近くの風速の勾配をとらえ,次々と旋回しながら上昇と降下を繰り返すことで,かなりの距離を滑翔することができる。
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デジタル大辞泉
ひ‐しょう〔‐シヤウ〕【飛×翔】
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ひしょう【飛翔】
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世界大百科事典 第2版
ひしょう【飛翔 flight】
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精選版 日本国語大辞典
とび‐かけ・る【飛翔】
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ひ‐しょう ‥シャウ【飛翔】
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