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食道アカラシア【しょくどうあからしあ】

家庭医学館

しょくどうあからしあ【食道アカラシア Esophageal Achalasia】
[どんな病気か]
 食道のはたらきに異常が生じ、飲食物を飲み込みにくくなった状態です。
[原因]
 胃に近い食道の部分の括約筋(かつやくきん)が広がらないのと、内容物を胃のほうに送る蠕動運動(ぜんどううんどう)の第1波がおこらないのが、おもな原因です。
 アカラシアとは「ゆるまない」という意味で、噴門無弛緩症(ふんもんむしかんしょう)とも呼ばれています。
[症状]
 飲食物を飲み込むときの「つかえ」が代表的な症状で、日によって強さが変わります。固形物よりも、流動物のほうが飲み込みにくいことがしばしばです。
 夜寝ているときに、食道内に残っていた食物が気管のほうに入り、激しいせき込みがおこることがあります。肺炎がおこっていることもあります。
 これらの症状は、ストレス、過労、冷たい飲食物の摂取で悪化します。
[検査と診断]
 食道造影検査で診断はつきますが、食道の運動機能の度合いを調べるため、食道内圧検査も必要です。
[治療]
 もっとも確実なのは、通過障害と逆流防止を同時に解決する手術です。これまでは、開腹手術がふつうでしたが、開腹しないですむ内視鏡手術が普及し始めています。
 食道内にバルーンを入れ、ふくらませて食道の内腔(ないくう)を広げる拡張術という治療法もありますが、再発するケースがかなりあります。
 拡張術で効果がなかったり、再発した場合は、手術を受けたほうがいいでしょう。
 狭心症(きょうしんしょう)の治療に用いるカルシウム拮抗薬(きっこうやく)や亜硝酸薬(あしょうさんやく)の舌下錠(ぜっかじょう)で治療する方法もありますが、これで治癒(ちゆ)させることはむりで、手術や拡張術を実施するまでのつなぎの治療として行なわれるのが原則です。

出典:小学館
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。この事典によって自己判断、自己治療をすることはお止めください。あくまで症状と病気の関係についてのおおよその知識を得るためのものとお考えください。

世界大百科事典 第2版

しょくどうあからしあ【食道アカラシア】

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

日本大百科全書(ニッポニカ)

食道アカラシア
しょくどうあからしあ
esophageal achalasia
食道下部には、下部食道括約帯(LES:lower esophageal sphincter)とよばれる機能的括約機構があり、胃食道逆流を防止している。食道アカラシアは、LESの弛緩不全による食物の通過障害や食道の異常拡張などが見られる機能的食道疾患である。食道アカラシアの発生頻度は、10万人に対して0.4~1.2人と稀(まれ)な疾患であり、やや女性に多く、20歳代からの発症も認められる。その病態としてアウエルバッハAuerbach神経叢(しんけいそう)の変性が指摘されているが、確固たる原因はいまだ明らかでない。[北川雄光]

症状

症状としては、嚥下(えんげ)時つかえ感が主であり、食道内貯留液の逆流により、咳嗽(がいそう)、誤嚥性肺炎などの気道系症状をきたすこともある。口腔内逆流は就寝中に多く、睡眠中に枕が汚れてしまうことも多い。また、異常収縮の出現によると思われる胸痛を訴える症例もある。検査としては、X線造影検査や内視鏡検査、食道内圧検査がある。[北川雄光]

治療

食道アカラシアの治療法は、障害された食道運動機能を完全に回復させるものではなく、食道の通過状態の改善を図ることを目的としており、(1)薬物療法、(2)ボツリヌス毒素注入療法、(3)内視鏡下バルーン拡張術、(4)手術(外科的治療)の四つに大別される。[北川雄光]
薬物療法
カルシウム(Ca)拮抗薬や硝酸薬は、LES圧低下作用を有し、嚥下時つかえ感、胸痛などの自覚症状に効果がある。いずれの薬剤も初回の症状改善率は50~90%と報告されているが、長期投与により耐性が生じ、効果が減弱する。薬物療法は、より根治的な治療法を行うためのつなぎとして、あるいは根治的な治療が禁忌である場合の治療法として位置づけられている。また、バルーン拡張術や手術療法を行った後でも、胸痛などの症状の遺残に対してCa拮抗薬を内服することがある。[北川雄光]
ボツリヌス注入療法
内視鏡的に(内視鏡を用いて)ボツリヌス毒素をLES内に注入する方法である。平滑筋内に注入されたボツリヌス毒素は、迷走神経末端のレセプターに結合し、シナプスからのアセチルコリン放出を妨げ、LES弛緩を引き起こす。
 ボツリヌス毒素注入療法は、簡便で治療早期に効果が期待でき、欧米を中心に有効性が報告されている。治療成績自体は手術療法には及ばないと考えら得るが、高齢者などの手術療法の適応にならない患者の治療法の選択肢の一つと考えられる。ただし、2008年(平成20)の時点では、食道アカラシアの治療としては日本で認可されておらず使用不可能である。[北川雄光]
内視鏡下バルーン拡張術
内視鏡下バルーン拡張術は、ポリエチレンバルーン(径30~40ミリメートル)を用いてLESの食道輪状筋を進展・断裂させ、LES圧の低下をはかる治療法である。手術に比べ、低侵襲であり、複数回の治療が可能である点が長所であるが、食道穿孔(せんこう)や胃食道逆流症などの合併症を起こす可能性が欠点として挙げられる。[北川雄光]
外科的治療
食道アカラシアに対する手術では、以下の二つの操作を行う。
(1)LES付近の筋層を切開し、LES圧を下げ、通過障害を改善する。
(2)胃食道逆流を防止するための噴門形成とよばれる処置をする。
全身麻酔下の手術であり、本項で提示した四つの治療の選択肢のなかでは侵襲は最大であるが、治療効果ももっとも優れていると考えられる。内視鏡下バルーン拡張術と外科的治療のどちらを第一選択とすべきかは、いまだ議論の余地があるが、近年、鏡視下手術手技の発達により、低侵襲で美容的にも優れた腹腔鏡下食道アカラシア手術が普及しつつある。このため、手術のリスクが低い場合には手術療法が第一選択とされることが多くなってきている。[北川雄光]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

内科学 第10版

食道アカラシア(食道疾患)
定義・概念
 食道アカラシアは,噴門痙攣症(cardiospasm)とよばれていた疾患群をHurstらが下部食道括約部(lower esophageal sphincter:LES)が弛緩しないという意味のギリシャ語でachalasiaと命名して報告したことに由来する食道運動障害である.その由来のようにLESの弛緩不全と,食道体部の正常蠕動波の消失という食道運動機能障害のために,嚥下障害と食道からの逆流を主症状とする疾患である.
病因・病理
 LES部の組織学的研究ではAuerbach神経叢に炎症性細胞浸潤や線維化が認められ,神経節細胞の消失や神経線維の変性が認められることが報告されている.それらの原因はいまだに不明であるが,遺伝的素因,退化現象,自己免疫説,感染因子などが提唱されており,後二者が有力視されている.炎症の結果,nitric oxide(NO)やvasoactive intestinal polypeptide(VIP)を含む後神経節抑制性ニューロンを選択的に傷害し,抑制性神経の障害が起こり,LESの弛緩障害と食道体部の蠕動運動が消失すると考えられている.
疫学・頻度
 本症の発生頻度は米国では年間約0.6人/10万人,有病率は約10人/10万人程度とされている.小児から高齢者まで幅広い年齢層で発症し,男女差はない.
臨床症状
 嚥下障害が主症状で慢性進行性である.初期には固形食がつかえるが,進行すると流動食もつかえるようになる.食道壁の進展や異常収縮により胸痛を引き起こすことがあり,心臓疾患と間違えられやすいことから,区別して非心臓性胸痛とよばれる.その他,食物の逆流,嘔吐,慢性進行性の体重減少,誤嚥による肺炎,まれではあるが胸やけなども主訴となり得る.食物の逆流は仰臥位で増強し夜間の喘鳴や咳の原因となる.若年者(特に女性)では,体重減少を伴うときは神経性食思不振症と診断される場合もあるので注意が必要である.
診断・鑑別診断
 下記の諸検査を組み合わせて診断を行う.確定診断を行うには内圧検査法が必要である.
1)X線診断:
胸部単純撮影で典型例では,縦隔陰影の拡大,食道内での鏡面形成,胃泡の消失,誤嚥性肺炎像などが観察されることがある.進行するとLESが弛緩しないため下部食道での特徴的な狭窄像(bird beak appearance:鳥のくちばし像 図8-3-20左)やバリウムの排出遅延,通過障害に伴う食道の拡張,食道内残渣陰影や唾液貯留影などがみられる.
2)内視鏡検査:
食道下端の狭窄部位に悪性腫瘍などの器質的疾患が存在しないことを確認することが重要である.食道内腔の拡張と液体や食物残渣の貯留食道下端の狭小化を認める(図8-3-20右A,B).食道内には食物残渣による炎症で,粘膜の白色肥厚像が認められることもある.胃内からの反転観察においては噴門部に食道粘膜が引き込まれる所見(巻きつき像)が認められることがある(図8-3-20右C).初期の症例では食道の拡張や食道内残渣などが認められない症例もあり,嚥下障害を訴える患者では内視鏡検査で典型的な所見を認めなくともバリウム造影や内圧検査などのほかの検査を施行すべきである.
3)食道内圧検査:
本症の確定診断には不可欠な検査である.①LESの弛緩不全と②正常な一次蠕動波(嚥下に伴う食道蠕動運動のこと.嚥下によらず食物塊などの進展刺激による蠕動波を二次蠕動波とよぶ)の消失をもってアカラシアと診断する.その他,LES圧の上昇(>45 mmHg)や食道体部静止圧の上昇などがみられることもある.図8-3-21は近年開発された高解像度内圧測定装置による内圧所見である.本法により,アカラシアは食道体部の収縮の状態から3つのサブタイプに分けて検討する試みが始まっている(図8-3-21-B,C,D).アカラシア以外で嚥下障害をきたす食道運動障害との鑑別(表8-3-9)にも食道内圧検査が必須である.
4)CTスキャン:
悪性腫瘍に伴いアカラシア様症状を訴えることがあり,これを偽性アカラシア(pseudoachalasia)とよぶ.下部食道から噴門部領域の悪性腫瘍のほか,肺癌,悪性リンパ腫を含む各種悪性腫瘍に伴うものの検索を目的としてCTスキャンが行われることがある.下部食道壁の肥厚,食道体部の拡張,食物や液体の貯留が観察されることがある.
合併症
 栄養障害による体重減少が80%程度の症例で認められる.また,下部食道の圧出性憩室のほか,食道扁平上皮癌の発生(2~7%),食道内からの逆流による誤嚥性肺炎,肺膿瘍,食道気管支瘻などの呼吸器合併症が問題となる.呼吸器合併症の予防として睡眠時の上半身挙上が勧められる.
治療
 現在のところ,根治的治療法はなく,強制的にLES部の狭窄を解除する姑息的治療法となる.
1)薬物療法:
下部食道括約部を弛緩させる薬剤として,カルシウム拮抗薬や硝酸薬が使用されているが,カルシウム拮抗薬は保険適用外である.胸痛発作には硝酸薬の保険適用がある.
2)バルーン拡張術:
LES部に挿入したバルーンを拡張させることにより強制的に狭窄を解除させるものである.結果的に,LESの筋線維を断裂させてLES圧を低下させることが可能である.バルーン拡張術を実施する上で,急激な拡張は穿孔の危険性(1~3%)があり,細径のバルーンから始め徐々に加圧することが重要である.
3)手術療法:
前述の1),2)の治療で効果が不十分な場合や,はじめから効果が確実な手術治療を希望する場合には外科的治療法が選択される.近年では腹腔鏡下手術が主体で,基本はLES圧の低下を目的とした下部食道の筋層切開(Heller法)と逆流防止を目的とした噴門形成術である.噴門形成術はLES圧の低下による術後の胃食道逆流の防止を目的として,Dor法(筋層切開部に胃底部を逢着)やToupet法(270度の噴門形成)などが行われる.
4)その他の治療法:
保険適用外ではあるが,ボツリヌス毒素の内視鏡的局注治療や,内視鏡下筋層切開術peroral endoscopic myotomy(POEM)などの新しい治療がある.[保坂浩子・草野元康]
■文献
Hirano I: Achalasia. Clinical Perspectives in Gastroenterology, 5: 165-172, 2002.
草野元康, 他: 食道運動機能とアカラシア関連疾患.日本消化器病学会誌,100:1095-1105,2003.
Pandolfino JE et al: Achalasia: A new clinically relevant classification by high-resolution manometry, Gastroenterology, 135:1526-1533, 2008.Wong RKH, et al: Achalasia. In: The Esophagus (Castell DO, et al eds), pp185-213, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 1999.

出典:内科学 第10版
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六訂版 家庭医学大全科

食道アカラシア
しょくどうアカラシア
Esophageal achalasia
(食道・胃・腸の病気)

どんな病気か

 食道から胃に移行する部分、すなわち食道胃接合部(しょくどういせつごうぶ)の部分が嚥下(えんげ)(飲みくだす)によっても弛緩(しかん)しないため、食道が拡張する病気です。アカラシアはラテン語で、弛緩が欠如したという意味です。

原因は何か

 食道平滑筋部(へいかつきんぶ)にある壁内のアウエルバッハ神経(そう)内の節細胞が変性したため、食道胃接合部が弛緩不全を起こし、収縮したままの状態となったため食道が拡張すると考えられています。神経細胞が変性する原因は明らかでなく、神経の変性疾患であるとの報告や、ウイルスが関与しているなどの報告があります。

症状の現れ方

 嚥下困難感が現れます。固形物より液体がつかえたり、時期により、つかえる場合とつかえない場合があるなど、症状が変動します。食道がんでは、嚥下困難が持続、または増強します。このほか、嚥下時痛、胸痛などがあります。食道内に詰まった食事が、横になった時に逆流し、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こすこともあります。

検査と診断

 食道X線検査で、拡張した食道と、食道胃接合部のスムーズな狭窄(きょうさく)像(凸凹のない狭窄像、図12)で診断します。しかし、X線診断では腫瘍の可能性を否定できないため、内視鏡検査を行い、食道壁に腫瘍がないことを確認する必要があります。

 また、アカラシアは食道がんを合併することもあり、定期的な内視鏡検査が必要です。このほかに、食道内圧検査で食道壁に蠕動(ぜんどう)運動があるかどうかをみます。

治療の方法

 軽度の場合は、カルシウム拮抗薬を内服します。また、バルーン拡張術により狭窄部を拡張する方法が有効です。食道の拡張が大きい場合や、食道が蛇行している場合、バルーン拡張術が効果のない場合は、手術が必要です。

病気に気づいたらどうする

 食物がのどにつかえる、通過しない、吐く、食べると痛いなどの症状がある場合は、早い時期に食道の専門医への受診をすすめます。

村田 洋子

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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デジタル大辞泉

しょくどう‐アカラシア〔シヨクダウ‐〕【食道アカラシア】

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
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