●馬具【ばぐ】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
馬具
ばぐ
harness and saddlery
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デジタル大辞泉
ば‐ぐ【馬具】
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防府市歴史用語集
馬具
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世界大百科事典 第2版
ばぐ【馬具】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
馬具
ばぐ
人類は最初、ウマの肉を食料とし、次に馬を家畜化して運搬用(輓馬(ばんば))、乗馬用、荷馬用(駄馬)、農耕用として利用するようになった。その際、ウマを効率よく利用するための道具が馬具である。
馬具の発明や発展の過程を調べてみると、人類文化の進展に大きく関係していることを知ることができる。乗用馬具を自動車の部分と比較してみると、轡(くつわ)と手綱(たづな)はハンドルに、鞍(くら)は運転席に、鞍の上の人間の腰と膝(ひざ)はアクセルの働きに、そして蹄鉄(ていてつ)はじょうぶなタイヤにあたる。したがって、馬具のなかでもっとも重要なものは轡、手綱と鞍である。また、轡のほうが鞍より早く発明されている。一般に馬具といえば、乗馬用のものを思い浮かべるが、そのほかに荷馬、運搬、農耕用などの馬具がある。
人類は、ウマに馬具をつけて、長年月の間、ウマの優れた力を多方面に利用してきた。しかし、近年はウマのかわりに、自動車、電車、トラクター、航空機などの機械力が使用されるようになり、家畜としてのウマの価値は著しく低下している。なお、明治以前の日本の乗馬用馬具は、現代では優れた美術工芸品としての価値が高くなっている。
[松尾信一]
乗馬用馬具
乗馬用馬具のなかで重要なものは頭絡部と鞍部(あんぶ)とにある。洋式馬具の頭絡部には、轡、小勒(しょうろく)手綱、大勒手綱、額革(ひたいかわ)、頂革(うなじかわ)、頬革(ほおかわ)、咽革(のどかわ)、鼻革、マーチンゲールなどがある。鞍部には鞍のほかに鞍褥(くらしき)、腹帯などがある。前・後肢には脚保護帯、肢巻、ブーツ(わんこ)、尾には尾巻がある。東アジアの乗馬用馬具は、中国六朝(りくちょう)時代に発達し、ヨーロッパのものより複雑華麗である。日本には古墳時代中期(5世紀)に中国や朝鮮半島から渡来している。福岡県の玄界灘(なだ)の沖ノ島は「海の正倉院」とよばれ、その出土品は、4世紀から9世紀にかけての優れた鞍、雲珠(うず)、杏葉(ぎょうよう)、帯金具などの馬具があり、国宝になっている。5世紀から6世紀になると、日本でも馬具がつくられるようになり、古墳の副葬品になっている。その後、律令(りつりょう)制定により、唐式の飾り馬が用いられた。
馬具の名称は時代とともに変わっているが、平安時代のものを基本として記してみると、頭部には轡、鏡板(かがみいた)、鈴、辻(つじ)金具、面繋(おもがい)、手綱、背部には鞍橋(くらぼね)(前輪(まえわ)、居木(いぎ)、後輪(しずわ))、下鞍、障泥(あおり)、鐙靼(みずお)、鐙(あぶみ)、胸繋(むながい)(胸懸)、馬鐸(ばたく)、腰部と尾部には尻繋(しりがい)、雲珠、杏葉、馬鐸がある。戦争用馬具として、和歌山市の大谷(おおたに)古墳から、大陸的色彩の濃い金銅製の馬冑(うまかぶと)と馬甲(うまよろい)(胴体を覆う)が出土している。時代とともに鞍も唐鞍から変化した和鞍となり、鐙も壺(つぼ)鐙から舌長(したなが)鐙と変化し、日本独特の騎馬術による戦闘用へと改良され、明治初期まで用いられた。西南(せいなん)の役では洋式と和式の両方の馬具が用いられている。日本では拍車は明治になるまで用いられていない。
ヨーロッパでは、ローマ時代になって馬具が発達し、中世の騎士は、金属製の鎖や板金の甲冑(かっちゅう)で身体を包み、長い槍(やり)を持って大形のウマに乗り、乗馬靴のかかとには歯車状の拍車がついていた。そのウマも甲冑をつけていた。それらは十字軍の重装備の騎士の姿である。一方、イスラム軍の騎士は、中形のウマに乗り、軽装備で、弓矢を持ち、一斉射撃をする戦法をとった。その後、鉄砲の発達によって、重装備の甲冑は姿を消してしまった。
[松尾信一]
荷物用(駄載用)馬具
荷物用の馬具も乗馬用の馬具とともに発達している。鞍のおもな構造は、荷台の鞍(駄載鞍)が乗馬用に比べて大型になっている。第二次世界大戦でも地形によっては駄馬が多く利用された。
[松尾信一]
馬車用馬具(輓馬具)
馬車用馬具は、人間や荷物を乗せた車をウマに引かせる道具類で、車両、轅(ながえ)、輓索(ひきつな)、頸環(くびわ)などからなる。最初に車を引いた家畜はウシで、次にオナガー(半驢(はんろ))、その次にウマが用いられた。人類はウマを用いることによって、地球上でもっとも速い交通手段をもつことになった。人類の歴史では、最初、ウマは紀元前2000年ころ馬車用に用いられ、前1200年ころ乗馬の発明によって、乗馬用にも利用されるようになった。戦争でも馬車が戦車として用いられ、その後に騎馬戦法に変わっている。
車は、前3500年ころメソポタミアのシュメール人によって発明され、胴引法(腹帯式)でウマに車を引かせた。しかしこれはウマの呼吸を圧迫して能率の悪い方法であった。一方、中国では、5世紀には肩引法(頸帯式)が用いられ、ウマの呼吸を圧迫することなく、両側の肩甲骨に牽引(けんいん)の支点があり、前者より合理的な方法であった。これは、イヌやトナカイがそりや車を引くのと同じ方法である。この方法はヨーロッパでは10世紀になってようやく採用されている。一方、ケルト人が発明した回転軸のある車が15世紀に普及して、馬車の利用が拡大し、近世経済の発展に大きく影響を及ぼしている。映画の西部劇の幌馬車(ほろばしゃ)などからその片鱗(へんりん)を知ることができる。日本では古代から明治になるまで、馬車は用いられていない。
[松尾信一]
農耕用馬具
農耕用馬具は、ウマの牽引力を農作業に利用するもので、犂(すき)、馬鍬(まぐわ)、砕土機、カルチベーター、ハロー、モーア、レーキなどである。現在ではトラクターに引かせる農機具類である。牽引の方法は、肩引法(頸帯式)と肩引胴引併用法に大別できる。
[松尾信一]
その他の馬具
馬具としてはほかに、手綱、鞭(むち)、馬衣などがある。
[松尾信一]
手綱
洋式は革紐(ひも)製である。日本固有のものは麻製の段だら染めで、種類も多く、優美なものがある。
[松尾信一]
鞭
洋式では乗馬用と馬車用がある。乗馬用は長さ約70センチメートル、木、竹、または革を組み合わせたものがある。馬車用は長さ約1.6メートルで、先端に細長い革紐がついている。日本固有の鞭も長短種々あり、木、竹、籐(とう)などでつくられ、なかには漆塗りや蒔絵(まきえ)のついたものがある。
特殊な馬具では、馬衣、頭巾(ずきん)、遮眼革などがある。
[松尾信一]
『日本乗馬協会編『日本馬術史 第3、4巻』(1940・大日本騎道会/1980・原書房)』▽『森浩一編『日本古代文化の探求・馬』(1979・社会思想社)』▽『加茂儀一著『騎行・車行の歴史』(1980・法政大学出版局)』▽『加茂儀一著『家畜文化史』(1973・法政大学出版局)』▽『C・E・G・ホープ、G・N・ジャクソン著、佐藤正人訳『エンサイクロペディア・馬』(1976・日本中央競馬会弘済会)』▽『野村晋一著『概説馬学』(1977・新日本教育図書)』
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精選版 日本国語大辞典
ば‐ぐ【馬具】
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