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騎士【きし】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

騎士
きし
knight; Ritter; chevalier
ヨーロッパ中世の武装騎乗戦士。広義には,国王と全封臣団を含み,狭義では下級貴族をさす。カロリング朝時代のフランク王国における土地知行制の発達とともに農民層から法的に分離し,封建社会における支配層を形成した。その特有な精神類型と行動様式を騎士道と呼んだ。騎士道ではキリスト教倫理の影響が強く,イスラム教徒との戦いは,騎士最高の義務の一つとみなされ,11世紀末から数次にわたる十字軍はヨーロッパの全キリスト教国の騎士を集めて結成された。その生活は,特権身分としての誇りに満ち,麗な闘技 (トーナメント) と高貴な女性への奉仕が基調をなしたが,のちには初期の倫理から変って形式的に体系化された。しかし,中世末期には,軍事的意味とともに政治的支配権を失って微した。現在,イギリスなどで称号としてその名をとどめているのは,国家社会に対する貢献を認められた人々が任命されて加入する勲位団体である。なお古代ローマ共和制末期の騎士,騎士身分 (→エクイテス ) は中世騎士層とは異質の社会層である。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉

き‐し【騎士】
馬に乗っている武士。
中世ヨーロッパにおける戦士階級の呼称。領主に仕え、武芸・礼節などの修業を通じて、騎士道を実践した。ナイト

出典:小学館
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世界大百科事典 第2版

きし【騎士】
騎乗して戦闘する特有の身分の者。古代ローマにも貴族に準ずる身分として騎士(エクイテスequites)があったが,一般には西欧中世の武士を指し,フランス語のシュバリエchevalier,ドイツ語のリッターRitter,英語のナイトknightの訳語として用いられる。語義的には前2者が騎乗者,後者侍者の意である。中世の公式表現はミーレスmilesだが,これは単に戦士を意味するにすぎない。中世,重装備の騎兵が勝敗の鍵を握るようになり,そしてさらに重要なことは,彼らだけが完全な戦闘員,もっぱら武技によって生きる者と観念されるようになって,聖職者,農民,市民とは区別された一つの身分としての騎士が成立した。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

騎士
きし
knight 英語
chevalier フランス語
Ritter ドイツ語

中世ヨーロッパの騎馬の戦士で、キリスト教の規範意識をもつことを特色とする。騎士身分そのものは古代にもみられ、ローマ時代の財力に優れたエクィテスは、元老院貴族と平民との中間にある準貴族身分とみなされたが、軍事的な意味は失われていった。中世の騎士はこれと異なり、封建制という時代環境のなかから生まれ、独特な叙任式を発展させた。

 騎馬戦術は、8世紀のフランク社会に登場するが、蹄鉄(ていてつ)や鐙(あぶみ)を伴う乗馬術は、東方ステップの騎馬遊牧民からヨーロッパに伝わったものであろう。乗馬術が鉄とともに、まずもって農民を搾取して生活する「馬に乗った人間」たる騎士階層によって独占されたことは、中世社会の「兵農分離」の開始を意味する。騎士身分は一挙に成立したものではなく、9、10世紀ごろには、土地領主としての財産の性格、領民に対する支配権、職業的戦士としての生活様式といった点で、社会的な優位にたつ「事実上の貴族」にすぎなかった。また11、12世紀ごろの封建社会では、富や権力の大小によって、門閥貴族たる城主ないしバン領主層と、彼らに臣従する狭義の平騎士(ミリテース)層という、貴族内部の階層分化もみられた。それにもかかわらず、両者は全体として、農民身分とは異なる支配階層として、広義の騎士身分に融合していた。その理由は、彼らの身分が封土と同様に世襲化され、特別な儀式、すなわち騎士叙任式によって継承されたからにほかならない。事実上の貴族が法的に明確化された騎士身分に転成するためには、キリスト教による一種の「聖別」が不可欠であった。教会は、ゲルマン戦士の伝えた好戦的気風を和らげようとして、戦闘行為の制限(「神の平和」など)に努めるとともに、騎士叙任式に介入して、騎士制度を教会本来の目的に役だたせようとした。

 騎士叙任式とは、ゲルマン古来の武器授与を中心とする成年式の発展したもので、教会はこの武器授与を武器の祝別式に改め、武器を手渡す名誉も、年長の俗人騎士から祭式執行者たる聖職者へ移行する。このような変化は12世紀の中ごろまでにほぼ達成され、騎士叙任式の古いゲルマン的しきたりは、いまやキリスト教の秘蹟(ひせき)に転化し、「キリスト教騎士」としてのモラルや作法も定着してくる。ゲルマン戦士の好戦本能にしても、「戦争と信仰の一致」ないし「聖戦」というスローガンで合理化される必要があり、その典型的なケースが十字軍の運動であった。十字軍は西欧各国の騎士の相互接触、キリスト教騎士団の結成を通して、騎士道文化の形成を促進する結果になった。

 騎士道の最盛期を現出した13世紀には、早くもその俗化と衰退の過程が始まった。それは「宮廷風恋愛」(アムール・クルトア)にみられるような、西欧文化に芽生えてきた女性の影響力によるだけではない。十字軍時代に生まれた多くの騎士団がしだいに草創期の求道的性格を失ってセクト化し、党派的利益の追求に走るようになったこともその一因である。しかし、より重要なことは、中央集権化の政策に乗り出した国王や大諸侯が、彼らにのみ奉仕すべき直臣層を騎士階層に求めるようになり、そのため騎士叙任権の独占を図ろうとしたことである。

 他方、このころになると、騎士系の子孫でない者に社会的上昇の道を閉ざす騎士身分の封鎖化の傾向も著しく、世襲特権階級としての貴族が形成されつつあった。この世襲の原則を破りうる者は君主のみで、君主は自らの政治的、経済的目的に役だつような者を、その戦士としての適格性とはかかわりなく、騎士身分に取り立てることができた。中世末期における戦術の転換がこの傾向に拍車をかける。重装備の騎兵にかわって、歩兵や弓兵の意義が増加し、さらに火砲の出現が騎士隊の戦術的役割を無価値にする。領主財産の危機に瀕(ひん)して没落した古い騎士系貴族にかわって、アンシャン・レジームのフランスにみられるように、高等法院や会計院などに席をもつ官職ブルジョアの新貴族が台頭してくる。こうして騎士制度は、もはや武人としての能力や資格の問題ではなくなり、世襲により引き継ぐ特権か、君主から賜る特権か、いずれにしても特権身分としての貴族制度へと変質していった。

[井上泰男]

『P・d・クランシャン著、川村克己・新倉俊一訳『騎士道』(白水社・文庫クセジュ)』『新倉俊一著『騎士道』(堀米庸三編『西欧精神の探究――革新の十二世紀』所収・1976・日本放送出版協会)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

き‐し【騎士】
〘名〙
① 馬に乗っている兵士。騎馬による戦闘を行なう兵。騎馬の士。
※続日本紀‐大宝元年(701)一〇月己未「免駕諸国騎士当年調庸及担夫田租
※太平記(14C後)一三「馬をば鼓車に駕し、劔をば騎士(キシ)に賜ふ」 〔漢書‐百官公卿表〕
② ヨーロッパ中世の武人の称。領主に仕え、忠義・勇気・廉恥・任侠等を理想的道徳として貴び、武芸を練磨して武功をたてることを名誉とした。ナイト。
※薤露行(1905)〈夏目漱石〉三「アーサー王の催(もよほし)にかかる晴の仕合に参り合はせずば、騎士の身の口惜しかるべし」

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旺文社世界史事典 三訂版

騎士
きし
knight (イギリス)
chevaliar (フランス)
中世西ヨーロッパの封建社会における最下級の封建領主
ゲルマン人の古代社会における従士制に始まるといわれ,フランク王国時代に形を整えた騎馬戦士階級でもある。いわゆる中世三身分のうちの「戦う人」。国王より与えられた土地と農民を支配するとともに,いったん事あるときには武器をとり,戦争に参加した。装備や武術鍛練のための資力が必要であったから,事実上は領主・貴族階級であった。また団結して騎士団をつくることもあった。14世紀ごろからの貨幣経済の発展と荘園制の崩壊,火薬の発明による戦術の変化と傭兵 (ようへい) 隊の採用などのためにしだいに没落した。勇気・礼儀・名誉・節度,そして貴婦人を敬う道徳は騎士道と呼ばれ,中世の華 (はな) と美化された。彼らの武具から紋章も発達した。

出典:旺文社世界史事典 三訂版
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