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骨髄異形成症候群【コツズイイケイセイショウコウグン】

デジタル大辞泉

こつずいいけいせい‐しょうこうぐん〔‐シヤウコウグン〕【骨髄異形成症候群】
造血幹細胞に異常が生じ、正常な血液細胞を十分に作ることができなくなる疾患総称。血液細胞の(がん)の一つ。赤血球白血球血小板のいずれかまたはすべてに形態・機能の異常がみられ、貧血、出血しやすい、感染症にかかりやすいなどの症状が現れる。急性骨髄性白血病に移行することがある。不応性貧血MDS(myelodysplastic syndromes)。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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朝日新聞掲載「キーワード」

骨髄異形成症候群
骨髄で血液細胞をつくる造血幹細胞に異常が起きる病気。放射線抗がん剤などが原因とされ、血球や血小板の形や機能などに異常を起こす。高齢者の発症が多く、貧血などの症状があり、血液検査で見つかることが多い。患者の10~40%が白血病に進行するとされる。今年、日本でも治療薬が処方できるようになった。
(2010-12-15 朝日新聞 朝刊 1総合)

出典:朝日新聞掲載「キーワード」

家庭医学館

こつずいいけいせいしょうこうぐん【骨髄異形成症候群 Myelodysplastic Syndrome】
[どんな病気か]
 以前から治療のむずかしい貧血で、急に白血病(はっけつびょう)(「白血病とは」)に移行するものがあり、不応性貧血(ふおうせいひんけつ)とか、前白血病(ぜんはっけつびょう)とか、くすぶり白血病(はっけつびょう)とかいわれていました。
 現在では、これらの病気は血球(けっきゅう)の量や質が異常になる病気として、まとめて骨髄異形成症候群と呼ばれます。
 原因はよくわかっていませんが、造血細胞が血球をつくるときに、成熟がうまくいかず、能力のない血球になってしまうためにおこると考えられています。
 そのため、赤血球(せっけっきゅう)、白血球(はっけっきゅう)、血小板(けっしょうばん)などが減少し、貧血の一般症状(貧血とはの「貧血の症状」)が現われるほか、感染症になりやすく、出血しやすい傾向がみられます。
 50歳以上の男性に多く、慢性に過ごしているうちに白血病化、感染、出血などで亡くなることもあります。
 治らない貧血、血球の異常、骨髄組織の異常などを検査しますが、専門医でも診断のむずかしい病気です。
[治療]
 この病気を治す方法は、今のところ、骨髄移植(「骨髄移植の知識」)しかありません。
 しかし、患者さんが高齢であることが多く、また、骨髄もなるべく適合性のよいものでなければならないなどから、手術ができない、あるいは手術がうまくいかないこともあります。
 したがって、白血病化したら急性骨髄性白血病(「急性白血病」)と同様の化学療法が行なわれたり、また、ビタミンなどの薬剤の使用、ステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)の使用など、症状を抑える治療が行なわれますが、あまり効果があるとはいえません。
 輸血は効果的ですが、何回もくり返している間に効果がなくなることがありますので(輸血不応症)、慎重にするべきです。

出典:小学館
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内科学 第10版

骨髄異形成症候群(造血幹細胞移植の適応の考え方)
(4)骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)
a.予後予測因子
 MDSの予後予測分類として最も広く用いられてきたのは骨髄中の芽球,染色体分析,血球減少に基づいて分類するinternational prognostic scoring system(IPSS)である.近年,WHO分類,輸血依存性などを時間依存性変数として含めた新しい予後予測(WPSS)が提唱されており,発症以降の経過観察中にも移植適応を判断できるモデルとして期待されている.
b.造血幹細胞移植の適応
 移植適応,あるいは移植を行うべき時期については,①診断直後に移植を行う,②AMLに進行したら移植を行う,③診断後ある一定の時点(2,4,6,8年後)で移植を行う,の3つの治療戦略の妥当性について検討された臨床決断分析の結果(Cutlerら,2004),IPSS lowあるいはint-1では,待機的にAMLに進展する直前に移植を行う方が,診断時にすぐに移植を行うよりもより長い生存期間が期待できることが示された.一方,int-2あるいはhighにおいては診断直後に移植を行うことによって,最も長い生存期間が期待できることが示された(図14-8-8).[神田善伸]
■文献
Koreth J, Schlenk R, et al: Allogeneic stem cell transplantation for acute myeloid leukemia in first complete remission: systematic review and meta-analysis of prospective clinical trials. JAMA, 301: 2349-2361, 2009.
Cutler CS, Lee SJ, et al: A decision analysis of allogeneic bone marrow transplantation for the myelodysplastic syndromes: delayed transplantation for low-risk myelodysplasia is associated with improved outcome. Blood, 104: 579-585, 2004.
Oliansky DM, Czuczman M, et al: The role of cytotoxic therapy with hematopoietic stem cell transplantation in the treatment of diffuse large B cell lymphoma: update of the 2001 evidence-based review. Biol Blood Marrow Transplant, 17: 20-47 e30, 2011.

出典:内科学 第10版
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骨髄異形成症候群(造血不全)
(4)骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)
定義・概念
 骨髄異形成症候群(MDS)は多能性造血幹細胞の形質転換で生じたクローン性の造血障害で,血液系細胞の形態系細胞の異形成と骨髄での無効造血を特徴とする.臨床的には1~3系統の血球減少,骨髄もしくは末梢血の芽球比率が急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia:AML)より高くない疾患群で,AMLへの移行のリスクが高い特徴をもつ.
分類
 従来FAB分類およびWHO分類が用いられていたが,2008年には改変WHO分類が報告された.2008年WHO分類では①異形成の頻度が10%未満のものはidiopathic cytopenia of undetermined significance(ICUS)としてMDSより分離させたこと,②RCMD-RSをRCMDと一括したこと,③RAの名称をRCUD(refractory cytopenia with unilineage dysplasia)の1病型として,RCUDにRA(refractory anemia),RN(refractory neutropenia),RT(refractory thrombocytopenia)として分類すること,④MDS-U (MDS-unclassified)を比較的詳細に規定していることが大きな変更点である(表14-9-8).
疫学
 MDSの有病率は10万人あたり2.7人で欧米との差は顕著でなくしだいに増加傾向にある.わが国でのMDS発症年齢の中央値は64歳で,欧米に比べ10歳ほど発症年齢は若い.男女比は1.9:1と男性に多くみられる.
病態生理
1)治療関連骨髄異形成症候群:
MDSには原因が不明なものと,放射線・アルキル化薬やトポイソメラーゼⅡ阻害薬などの抗腫瘍薬投与後に発症するもの(治療関連MDS)がある.WHO分類では治療に起因するMDSは治療関連AML/MDSとして一括してAMLの中に分類されている.前治療の薬剤により特徴的な染色体異常や臨床経過が知られ,アルキル化薬関連AML/MDSとトポイソメラーゼⅡ阻害薬関連AML/MDSに分類される.
2)染色体異常と遺伝子異常:
MDSの半数に染色体異常がみられ,予後との関係が知られている(表14-9-9).遺伝子異常として受容体型チロシンキナーゼ遺伝子FLT3(MDSの2〜5%),RAS癌遺伝子(MDSの10〜15%),転写制御因子遺伝子AML1(MDSの10〜15%),p53癌抑制遺伝子異常(MDSの5〜10%)がみられるが,AMLとは異なる遺伝子異常を背景にもつと考えられる(表14-9-10).
 近年,DNAメチル化の研究が進められ,MDS患者ではDNAやヒストンのメチル化に関与する遺伝子の変異が知られ,脱メチル化薬による治療反応性との関係が検討されている.代表的な変異としてはシトシン残基の5位の部位に生じたメチル基をヒドロキシメチル基に置き換えるときに働くTET2遺伝子の変異やTET2のコファクターとして働く2-hydroxyglutarateの産生を阻害するIDH1/2の変異が知られ,MDSの進展に重要な意義をもつことが報告されている.さらに多くのRARS(refractory anemia with ringed sideroblasts,環状鉄芽球を伴う不応性貧血)ではRNAスプライシング関連蛋白であるSF3B1の遺伝子変異が知られ,注目を集めている.
 3)MDS芽球:
芽球の性状はCD34CD38HLA-DRCD13CD33である一方,ミエロペルオキダーゼは過半数例が陰性であることよりAMLの芽球よりも幼若な段階にあることが推定されている.
臨床症状
 一般に発症時は臨床症状に乏しいことも少なくない.血球減少の程度により貧血症状,出血傾向,感染症の合併がみられるが,臓器腫大はほとんどの例でみられない.
検査成績
1)末梢血:
貧血(正球性あるいは大球性貧血)を中心とする汎血球減少がみられる.RARSではまれに血小板増加がみられることもある(RARS with thrombocytosis:RARS-T).
2)骨髄:
正形成~過形成を原則とするが,10%程度の症例では低形成髄で再生不良性貧血との鑑別が問題となるため,骨髄MRIや骨髄シンチグラフィが必要な場合もある.
 MDSの診断ではdysplasiaとよばれる血球の形態異常の存在が重要であるが(図14-9-9),巨赤芽球性貧血や抗悪性腫瘍薬投与後,骨髄増殖性腫瘍などでもみられる変化のためほかの要因を十分に考慮する.WHO分類では当該血球系列の10%以上の異形成所見を有意と定義している.鉄芽球性貧血(RARSおよびRCRS)では特徴的な環状鉄芽球がみられる. また,無効造血として血清鉄の上昇,血清フェリチンの高値,LDHの上昇,エリスロポエチンの上昇がみられる.
診断
 血球減少をみた場合,MDSを念頭におき除外診断を進める.二次性貧血の除外が重要で,骨髄塗抹標本での形態異常を中心に診断を下す.骨髄染色体検査も重要で約半数の患者では染色体異常が確認でき診断根拠となるが,染色体異常がなく形態診断のみとなることも多く,経過を追っての血球減少の確認および骨髄検査が必要なことも多い.また異形成像が軽微なものや,境界領域との鑑別を要するものも存在することを忘れてはいけない.
鑑別診断
 血球減少をきたすすべてのものとの鑑別診断が必要であるが,造血細胞の異形成がみられる場合が特に問題となる.芽球頻度が低く異形成のみられるものとして悪性リンパ腫などで遭遇するサイトカインストームによる異形成が代表的なものである.
 境界領域との鑑別として再生不良性貧血があげられるが,オーバーラップする病態も知られていることより必ずしも明確な区別ができない症例も存在する.また,再生不良性貧血に対する免疫抑制療法後にみられるMDSもある(治療後の7%程度,7モノソミーを示すことが多い).WHO-2008分類ではICUSを設け,MDSと再生不良性貧血の中間的な存在として位置付けている.
 MDSとAMLの境界は骨髄での芽球比率20%であり,造血細胞に異形成がみられるもので,芽球が20%以上のものはAML with dysplasiaとして分類される. 骨髄増殖性疾患の要素が大きい場合は骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)の診断となるため,骨髄異形成と血球増加のみられる場合には,注意して鑑別することが必要である.
合併症
 進展様式としては約1/3にAMLへの移行がある.MDSそのものの合併症として好中球減少に基づく細菌感染症や真菌感染症がある.特に芽球の多い症例での化学療法による寛解導入療法期に注意する必要がある.血小板減少による出血,支持療法としての低リスクMDS患者における輸血療法に伴ってみられる二次性ヘモクロマトーシスの管理も重要である.芽球頻度の少ない症例や化学療法施行例では顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与が行われるが,MDSに伴ってみられるSweet病(病的好中球の皮膚浸潤)はG-CSF投与により悪化する.呼吸器の合併症としてまれに閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)がみられ,呼吸器感染症との鑑別が必要である.
予後
 予後を決定する因子として,IPSS(international prognostic scoring system)による予後スコアリングシステムが用いられる.IPSSでは末梢血液の血球減少(なし・1血球系統のみ・2血球系統・汎血球減少),骨髄での芽球比率(<5%・5〜10%・11〜20%・20%以上[ただしFAB分類を用いた場合]),染色体異常(良好核型・中間核型・不良核型)により点数をつけ50%生存期間および白血病移行率を割り出す(図14-9-10,表14-9-11).現在,詳細な染色体異常に基づく予後判定が提案されており,個々の症例における予後判定がさらに明瞭化されつつある(表14-9-12).予後を決定する因子は急性白血病への移行,感染症・出血であるとともに,年齢の要素が大きくかかわってくる.
治療
 治療方針として,低リスク群では輸血依存からの離脱,高リスク群では白血病移行の阻止を目的とするが,基本的には同種造血幹細胞移植が根本的な治療法である.
1)低リスク群MDS(IPSSでlowおよびint-1):
この群に含まれる患者はFAB分類でRAとRARSの大多数に相当し,血球減少への対応が主となる.症状を有する貧血に対しては赤血球輸血で対応するが,輸血による鉄過剰症は肝臓・心臓など重要臓器の障害をきたすため,鉄キレート剤が併用される.出血症状に対しては血小板輸血を行うが,反復する輸血による同種抗体の産生を防ぐため,高度の血小板減少を認める患者以外では予防的血小板輸血を行わない.感染症併発時には十分量の抗菌薬とともにG-CSFの併用が勧められる.
 輸血依存の例(70歳未満)の患者にはシクロスポリンの経口投与や抗胸腺細胞グロブリン(ATG)による免疫抑制療法が有効なこともある(有効率50~60%)(保険適応なし).また,エリスロポエチン濃度の比較的低い例(500 mU/mL未満)にはエリスロポエチン投与の有効性も知られている(保険適応なし).immunomodulatory derivertives of thalidomide(IMiDs)としてレナリドミドは5q−異常の患者に有効である(貧血改善率70~80%)が,5q−の欠失部位により有効性は異なることがある.
 わが国では副腎皮質ステロイドホルモン,蛋白同化ステロイドが用いられるが,効果は一時的なことが多い.また30%程度の患者ではビタミンK2・ビタミンD3療法で赤血球および血小板の改善が期待できる.
 同種造血幹細胞移植はこの群においても治癒を期待できる有望な治療法であり,高度の輸血依存性,繰り返す感染症,IPSSで予後不良染色体,血球形態異常の著しい例および免疫抑制療法によっても造血回復の得られない例で考慮される.
2)高リスク群MDS(IPSSでint-2およびhighの全例):
FAB分類でRAEBの一部とRAEB-Tの大部分に,WHO分類では予後不良染色体をもつRAEB-1,RAEB-2の大部分に相当する.この群は白血病移行が生命予後を左右することから,化学療法と同種造血幹細胞移植が治療選択肢となる.予後不良染色体をもたずFAB分類でRAEB-Tに当たる患者には,AMLに準じた化学療法を行う.
 ドナーが存在し同種移植に耐えられる年齢および全身状態であれば,同種造血幹細胞移植が第一選択である.同種造血幹細胞移植の予後不良因子として予後不良染色体異常,骨髄芽球比率が高いこと,診断から移植までの期間が長いこと,ならびに年齢があげられる. 低リスク群における輸血依存からの離脱を含む血液学的改善(有効率50%)および高リスク群における白血病移行の阻止(20%程度の有効性)を期待して,脱メチル化薬による治療法(アザシチジン:75 mg/m2
,7日間)がある.合併する感染症などの回避と治療有効性との関係から最適な治療法は現在模索中である.[大屋敷一馬]
■文献
不応性貧血(骨髄異形成症候群)の診断基準と診療参照ガイド作成のためのワーキンググループ:不応性貧血(骨髄異形成症候群)診療の参照ガイド.臨床血液,47: 47-68,2006.
Vardiman JW, Harris NL, et al: The World Health Organization (WHO) classification of the myeloid neoplasms. Blood, 100: 2292-2302, 2002.

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六訂版 家庭医学大全科

骨髄異形成症候群
こつずいいけいせいしょうこうぐん
Myelodysplastic syndromes
(お年寄りの病気)

どんな病気か

 造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)(血液のなかに含まれる赤血球、白血球、血小板の元になる細胞)に原因不明の異常があり、血液細胞の形態異常を生じて、正常な血液細胞を作れない状態(無効造血(むこうぞうけつ))を特徴とする病気です。この病気のなかには急性白血病(きゅうせいはっけつびょう)に移行するものも多いため、治療法の確立が急がれています。

 発症年齢のピークは60~70代で、人口の高齢化に伴い増えつつあります。高齢者の貧血で原因が明らかでない場合(貧血)は、考慮しなければならない重要な病気です。

症状の現れ方と診断

 症状としては、一般の貧血症状(動悸(どうき)、息切れ、倦怠感(けんたいかん)など)があります。慢性に進行する貧血では自覚症状に乏しい場合があり、健診やほかの病気で通院中に発見されることもあります。皮下出血、鼻出血、歯肉出血などの出血傾向、白血球の減少で肺炎などに感染しやすくなり、発熱がみられる感染症状で発見されることも少なくありません。

 末梢血の赤血球、白血球、血小板の数、形態、骨髄穿刺(こつずいせんし)(針で骨髄血をとる)で得た骨髄細胞の数、形態、染色体異常などを参考に診断します。

 この病気にみられる無効造血の本態は、アポトーシスと呼ばれる細胞死であり、造血幹細胞の分化や成熟障害を起こし、血球減少から貧血、感染、出血などを起こすと考えられています。骨髄細胞の染色体検査では約70%の患者さんに異常がみつかります。

 定期的に受ける健診の結果で、貧血が進行(赤血球、ヘモグロビンの値が減少)していたり、白血球や血小板の数が減少している場合は注意が必要です。

治療とケアのポイント

 標準的治療法は確立されていないのが現状ですが、蛋白同化ホルモン、抗胸腺(こうきょうせん)細胞グロブリン、シクロスポリンなどの免疫抑制薬が用いられることがあります。貧血が強い場合には赤血球輸血が、また血小板が減少して出血傾向がみられる場合には血小板輸血が行われます。活性型ビタミンD、ビタミンAの誘導体、ビタミンKが血液細胞の分化誘導を目的に用いられますが、有効率は低いとされています。

 血液細胞の形態異常が高度で、骨髄で未熟な細胞(芽球(がきゅう))が増えて、急性白血病に移行しつつある場合(高リスク群)には、抗がん薬を少量用いた化学療法が行われることがあります。

 高齢者では生活の質(QOL)を考慮し、シタラビン(Ara­C)、アクラルビシン(ACR)の少量療法、シタラビンオクホスファート(SPAC)の経口投与が行われます。芽球の増加を抑制するのが目的ですが、急性白血病の治療と同じように無菌管理などの支持療法が必要になります。

 急性白血病へ移行した場合には、抗がん薬を複数組み合わせて用いる多剤併用化学療法が行われますが、寛解(かんかい)(骨髄の状態が改善する)に至る割合は約25%と不良です。

 造血幹細胞移植法もありますが、高リスク群で50歳以下の場合には同種骨髄移植の適応となります。70歳くらいまでの高齢者に対しては「ミニ移植」と呼ばれる骨髄非破壊的同種移植(こつずいひはかいてきどうしゅいしょく)が条件が整えば実施されるようになってきており、今後の治療成績の動向をみる必要があります。

 この病気の治療への反応性や予後は、芽球の比率、染色体異常、血球減少の程度により点数化した国際スコアリングシステムで予測することができます。

 この病気が疑われた場合は、血液内科専門医がいる病院(血液科、血液内科、血液腫瘍科など)を受診してください。

大田 雅嗣

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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骨髄異形成症候群
こつずいいけいせいしょうこうぐん
Myelodysplastic syndrome
(血液・造血器の病気)

どんな病気か

 骨髄異形成症候群(MDS)はその名のとおり、骨髄中の細胞に形態異常が生じるとともに、血球数の減少を来す病気です。血液細胞の種にあたる造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)自身に異常が起こったため、血液細胞がうまくつくられないことが血球減少の原因と考えられています。

 この病気の特徴は、血球減少の経過をみているうちに、白血病に移行する例があるという点です。このため、かつては前白血病(ぜんはっけつびょう)と呼ばれていました。

原因は何か

 造血幹細胞の遺伝子に異常が起こる原因はよくわかっていません。放射線照射や抗がん薬の投与を受けた患者さんに、二次的にMDSが起こることがあります。全体の約50%に染色体異常があり、がん遺伝子がん抑制遺伝子の異常が証明される例もあります。

 これらの遺伝子異常のために遺伝子が不安定な状態になり、当初はつくられた血液細胞が早く死んでしまう(アポトーシスを起こす)ために血球が減ります。しかし、やがて増殖能力の高い変異細胞が生まれ、その結果、急性白血病に移行すると考えられています。

症状の現れ方

 ひとつあるいは複数の血球減少のため、息切れ・動悸(どうき)倦怠感(けんたいかん)などの貧血症状、発熱、出血傾向などがみられます。これらは何年も変わらないこともあれば、数カ月で進行することもあります。

 MDSは、主に芽球(がきゅう)の比率、形態異常を示す血球の系統数、芽球の割合、染色体異常の種類などによって表5のように7つの病型に大別されます。一般に、芽球の割合が高いほど白血病に移行する確率が高くなります。治療方針を決定するためには、国際予後判定システム(IPSS、表6)を用いて予後を予測する必要があります。スコアによって生存期間が大きく異なることがわかります(表7)。

検査と診断

 末梢血では、貧血を中心とする2血球系統以上の血球の減少がみられます。それにもかかわらず骨髄の細胞密度は正常か、正常よりも高いことが特徴です。最も重要な特徴は、2血球系統以上の血液細胞に形態異常がみられる点です。

 これを判定するためには、末梢血だけでなく、骨髄の細胞を詳しく観察する必要があります。代表的なものに赤芽球(せきがきゅう)の多核化、巨赤芽球(きょせきがきゅう)様変化、顆粒球(かりゅうきゅう)における顆粒の減少、核の過分葉、()ペルゲル核異常を含めた低分節の核異常、巨大血小板、微小巨核球、円形の分離多核の巨核球などがあります。

 この病気で頻度の高い染色体の異常には、第8染色体トリソミー(+8)、第7染色体モノソミー(-7)あるいは長腕部分欠失(7q)、第12染色体短腕欠失(12q)、第5染色体長腕部分欠失(5q)、などがあります。

治療の方法

 低リスクMDSでは予後を左右するのは骨髄機能の低下であるため、蛋白同化ステロイド薬や免疫抑制療法などの再生不良性貧血に準じた治療が行われます。また、活性化ビタミンDやビタミンKなどの分化誘導療法が効く例もあります。

 エリスロポエチンという赤血球産生刺激ホルモンが効いて輸血が不要になる例もありますが、日本では保険が適用されていません。輸血が必要な若年の患者さんに対しては同種造血幹細胞移植が考慮されます。

 高リスクMDSでは、イダルビシンとシタラビン(キロサイド)という抗白血病薬を組み合わせた治療によって50~70%に寛解(かんかい)(症状がおさまった状態)が得られます。ただし、通常の急性骨髄性白血病とは違って、寛解が維持できる例はまれとされています。高齢の患者さんが多いため、シタラビンやエトポシドなどによる少量療法も試みられていますが、治療関連死亡は少ないものの寛解導入率は20~30%にとどまっており、生存期間の延長にはつながらないとされています。

 根治を期待できる唯一の治療方法は、同種造血幹細胞移植です。かつては同種移植の年齢の上限は50歳とされていましたが、最近の支持療法の進歩や、骨髄非破壊的(こつずいひはかいてき)同種造血幹細胞移植(いわゆるミニ移植)の開発によって、70歳くらいの患者さんまで適応が広がっています。

 近年では、アザシチジンやデシタビンなどの脱メチル化薬によって、支持療法単独よりも生存期間が有意に延長されることが示されています。また、レナリドマイドという新薬は5q染色体異常をもつMDSに著効を示します。これらの薬剤は、日本でも臨床試験が終了しており、間もなく保険薬として認可されると思われます。

病気に気づいたらどうする

 MDSといってもその病態はさまざまです。すべてが白血病に移行するわけではないので、病気と長く付き合っていくという姿勢も大切です。

 芽球割合と血小板数が少ないタイプのMDSのなかには、一見前白血病状態のようにみえても、免疫抑制療法によって完治する「MDSもどき」(実体は再生不良性貧血)が含まれています。これを鑑別するためには、発作性夜間血色素尿症(PNH)で認められる特定の膜蛋白が欠失した血球(PNH型血球)が末梢血中に増えていないかどうかを、特殊な検査方法を用いて調べる必要があります。このような特殊検査や治療方針、予想される予後については専門医とよく相談してください。

中尾 眞二

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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