●高速増殖炉【こうそくぞうしょくろ】
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
高速増殖炉
こうそくぞうしょくろ
fast breeder reactor; FBR
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知恵蔵
高速増殖炉
(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)
出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
朝日新聞掲載「キーワード」
高速増殖炉
(2013-09-27 朝日新聞 朝刊 2外報)
出典:朝日新聞掲載「キーワード」
デジタル大辞泉
こうそく‐ぞうしょくろ〔カウソク‐〕【高速増殖炉】
[補説]天然ウランの99.3パーセントを占めるウラン238は核分裂を起こしにくく、そのままでは核燃料として使えないが、中性子を吸収すると核分裂するプルトニウム239になる。高速増殖炉は、炉内で発生する中性子を減速せず「高速」のまま使うことによって、MOX燃料に含まれる燃えないウラン238を燃えるプルトニウム239に変え、燃料を「増殖」させる。もんじゅの場合、消費する燃料の約1.2倍の燃料を増殖できる。高速増殖炉は、原子力発電所の使用済み燃料から回収したプルトニウムを燃料として再利用する核燃料サイクルの中核を担う技術として実用化が期待されているが、ウランよりも放射能毒性が高く核兵器の原料にもなるプルトニウムを燃料として使用することや、冷却材として用いる液体金属の取り扱いが難しいことなどから、実現を疑問視する見方もある。米国・英国・ドイツなどはすでに開発を断念している。
出典:小学館
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世界大百科事典 第2版
こうそくぞうしょくろ【高速増殖炉 fast breeder reactor】
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日本大百科全書(ニッポニカ)
高速増殖炉
こうそくぞうしょくろ
天然ウランの99%以上を占める「燃えない」ウラン238に炉内で中性子を吸収させ、プルトニウム239に変えることによって、消費した量以上の核燃料を生産する原子炉。ここから「増殖」の名がある。理論上はこの炉を用いれば、軽水炉に比較してウラン資源を100倍近く有効に利用することができる。軽水炉では減速した中性子を用いて核分裂を起こすのに対して、この炉では発生したままの高速(高エネルギー)の中性子を用いるため、「高速」と名づけられている。炉心から発生した熱を取り出す冷却材としては、現在のところ減速作用の小さい金属ナトリウムが用いられている。軽水炉に比較して炉内の圧力が低いため、冷却材喪失事故の起きる可能性は小さいが、炉内に発生した泡によって核反応が進む「正のボイド係数」による反応度(暴走)事故などの危険性が指摘されており、また水と激しく反応するナトリウムの扱いがむずかしく、技術的には未完成な炉である。
さらに、核兵器の材料であり、同時にきわめて毒性の強いプルトニウムを大量に扱う点でも問題がある。高速炉の開発にもっとも力を入れてきたフランスでは、実用炉の一つ前の段階の「スーパーフェニックス」炉に故障が続発し、アメリカやその他の国々では、実質的に開発を取りやめているが、それはコストが軽水炉の5倍程度かかるという経済的理由によるものとされている。日本には、日本原子力研究開発機構の「常陽(じょうよう)」(茨城県大洗(おおあらい)町)と「もんじゅ」(福井県敦賀(つるが)市)の2基がある(原子炉の開発は、一般に実験炉、原型炉、実証炉の段階を経て実用炉へと進み、「常陽」は実験炉、「もんじゅ」は原型炉である)。しかし、「もんじゅ」は1995年(平成7)12月のナトリウム漏れ事故(当時は動力炉・核燃料開発事業団が所有)と2010年(平成22)8月の炉内中継装置落下事故により運転休止状態が続き、「常陽」も2007年11月の実験装置トラブル以来停止している。高速増殖炉の実用化はますます遠いものとなった。
[舘野 淳]
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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化学辞典 第2版
高速増殖炉
コウソクゾウショクロ
fast breeder reactor
略称FBR.核分裂で発生する高速中性子を減速せずにそのまま利用して,核分裂と同時に核反応を起こさせて核燃料物質を増殖させる原子炉.実現されているFBRでは,燃料として,ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX)を用い,高速中性子による 239Pu の核分裂反応でエネルギーを得て,238U の中性子捕獲反応 238U + n→ 239U と2回のβ崩壊によって(239U→ 239Np→ 239Pu),プルトニウムを核分裂により消費された量以上(増殖比 > 1)に増殖する.減速材は不要であるからコンパクトな構造で,冷却材として溶融ナトリウムを使用する.ナトリウムが空気に触れて酸化されることを防ぐために,不活性雰囲気としてアルゴンが原子炉容器に充填される.炉心,ナトリウム一次循環ポンプ,熱交換器を原子炉容器におさめたタンク型と,循環ポンプ,熱交換器とを配管でつなぎ,原子炉容器の外におくループ型の2種類がある.炉出口温度は500~550 ℃ で,軽水炉より高い.日本原子力研究開発機構(旧核燃料サイクル開発機構)が開発を進めている「もんじゅ」(福井県敦賀市)はループ型で,熱出力71万kW,電気出力28万kW の高速増殖炉発電プラントの原型炉である.1994年4月に臨界に達したが,ナトリウム漏えい事故(1995年12月)のため,その後,運転を停止中で,再開に向けて工事が進められている.世界で合計14基のFBRが稼働したが,ナトリウムの取り扱いや,ほかの技術的な問題などから,あるいは設計寿命に達したことによって停止しているものが多い.フランスのスーパーフェニックス実証炉,アメリカのフェルミ1号実験炉などが有名であるが,両炉ともに運転を停止し,解体(デコミッショニング)の段階にある.ナトリウムの処理を先行するが,原子炉本体の解体撤去は放射能減衰を待って数十年後に行われる予定である.このような情勢のなかで,ロシアは核兵器解体によるプルトニウムの処理の必要性などから,FBRの計画が続行中で,原型炉BN-600を運転中である.インドも1985年に運転を開始したFBTR実験炉を受けて500 MW PFBR原型炉を建設中で,中国も実験炉CECRを建設中である.
出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
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