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高速増殖炉【こうそくぞうしょくろ】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

高速増殖炉
こうそくぞうしょくろ
fast breeder reactor; FBR
高速中性子による核分裂連鎖反応を利用し,核分裂エネルギーを生み出しながら,他方では消費した燃料以上に新しい核分裂性物質をつくりだす原子炉(→増殖炉)。主としてウランプルトニウムの混合酸化物 MOX(Mixed Oxide)を燃料に,冷却効率のよい液体金属ナトリウム冷却材に用いるタイプが開発されている(→液体金属冷却材)。中性子の速度を遅くする減速材は使用せず,核分裂で発生したままの高速中性子によるプルトニウムの核分裂でエネルギーを生成する。燃料増殖用には燃料集合体や制御棒集合体のまわりにブランケットと呼ばれる天然ウランなどを入れた構造物で覆う。高速中性子は天然ウランの 99%以上を占める非核分裂性のウラン238を核分裂性のプルトニウム239に変えることができるため,使用済みの燃料を再処理すれば天然ウランの大半を利用できることになり,高速増殖を中心に据えた核燃料サイクルの構築が待望された。しかし,核兵器の拡散防止の観点からアメリカ合衆国がこの路線を中止。フランスで原型炉フェニックス」,実証炉スーパー・フェニックス」が,また日本で原型炉「もんじゅ」が建設されたが,「スーパー・フェニックス」はトラブルが相次ぎ運転停止,1998年即時廃止が決定された。(→原子力発電所

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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知恵蔵

高速増殖炉
プルトニウム(PU)を燃料とする原子炉。消費したものより多いプルトニウムが生じるので増殖炉という。燃料に核分裂しないウラン238を混ぜておく。プルトニウムが核分裂すると複数の中性子が飛び出す。そのうちの1個が次のプルトニウムの核分裂に使われ、残りの1個以上がウラン238をプルトニウムに変える。1個のプルトニウムの核分裂で新たに何個のプルトニウムが生じているかを転換比と呼ぶ。高速増殖原型炉「もんじゅ」の当初の設計では12。増殖はしないが、軽水炉より多量のプルトニウムを生み出す原子炉を新型転換炉(ATR)という。1978年、動力炉核燃料開発事業団(動燃・当時)が敦賀市に軽水冷却の新型転換原型炉「ふげん」を建設した。しかし、動燃解体に伴い、2003年3月に運転を終了した。青森県大間町に国と電力会社が出資した国策会社Jパワーが実証炉を建設する予定だったが、費用の見積額の高騰で95年に中止になり、予定地には混合酸化物(MOX)燃料だけを使う原発を造ることになった。「もんじゅ」は改造工事を進めており、08年に運転再開する予定。
(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)

出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」

朝日新聞掲載「キーワード」

高速増殖炉
発電用の熱を炉心から取り出す冷却材としてナトリウムなど液体状の金属を使う原子炉。水を使う通常の原発と異なり、核燃料から飛び出す中性子が減速しない。それを利用して核分裂を起こしにくいウラン238をプルトニウム239に変え、核燃料を増やすことができる。ナトリウムが空気中の水分に触れると爆発的に反応することから、安全性への懸念が根強い。
(2013-09-27 朝日新聞 朝刊 2外報)

出典:朝日新聞掲載「キーワード」

デジタル大辞泉

こうそく‐ぞうしょくろ〔カウソク‐〕【高速増殖炉】
高速の中性子を利用し、発電しながら消費した量以上の燃料を生み出すことができる原子炉ウランプルトニウムを混合したMOX燃料を使用し、冷却材としてナトリウムや鉛ビスマス合金などの液体金属を用いる。日本・ロシア・フランス・中国・インドなどで研究開発が続けられているが、実用化には至っていない。日本には実験炉の「常陽」、原型炉の「もんじゅ」がある。FBR(fast breeder reactor)。→高速炉
[補説]天然ウランの99.3パーセントを占めるウラン238は核分裂を起こしにくく、そのままでは核燃料として使えないが、中性子を吸収すると核分裂するプルトニウム239になる。高速増殖炉は、炉内で発生する中性子を減速せず「高速」のまま使うことによって、MOX燃料に含まれる燃えないウラン238を燃えるプルトニウム239に変え、燃料を「増殖」させる。もんじゅの場合、消費する燃料の約1.2倍の燃料を増殖できる。高速増殖炉は、原子力発電所の使用済み燃料から回収したプルトニウムを燃料として再利用する核燃料サイクルの中核を担う技術として実用化が期待されているが、ウランよりも放射能毒性が高く核兵器の原料にもなるプルトニウムを燃料として使用することや、冷却材として用いる液体金属の取り扱いが難しいことなどから、実現を疑問視する見方もある。米国・英国・ドイツなどはすでに開発を断念している。

出典:小学館
監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

こうそくぞうしょくろ【高速増殖炉 fast breeder reactor】
略称FBR。原子炉のうち,その核分裂の連鎖反応が主として高速中性子により引き起こされるものであって,連鎖反応により消滅する核分裂性物質よりもその過程で転換により生成する核分裂性物質のほうが多いものをいう。高速増殖炉の可能性は,マンハッタン計画のなかでE.フェルミジンWalter H.Zinnらにより指摘され,1946年ころからジンによって計画された増殖実験炉EBR‐Iは51年に完成した。この原子炉は235U燃料を238Uのブランケットで囲んだ炉心を液体金属NaK(ナク)(ナトリウムとカリウムの合金)で冷却しているもので,世界で初めての高速増殖炉であると同時に世界で初めて原子力発電を行った炉でもある。

出典:株式会社平凡社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

高速増殖炉
こうそくぞうしょくろ

天然ウランの99%以上を占める「燃えない」ウラン238に炉内で中性子を吸収させ、プルトニウム239に変えることによって、消費した量以上の核燃料を生産する原子炉。ここから「増殖」の名がある。理論上はこの炉を用いれば、軽水炉に比較してウラン資源を100倍近く有効に利用することができる。軽水炉では減速した中性子を用いて核分裂を起こすのに対して、この炉では発生したままの高速(高エネルギー)の中性子を用いるため、「高速」と名づけられている。炉心から発生した熱を取り出す冷却材としては、現在のところ減速作用の小さい金属ナトリウムが用いられている。軽水炉に比較して炉内の圧力が低いため、冷却材喪失事故の起きる可能性は小さいが、炉内に発生した泡によって核反応が進む「正のボイド係数」による反応度(暴走)事故などの危険性が指摘されており、また水と激しく反応するナトリウムの扱いがむずかしく、技術的には未完成な炉である。

 さらに、核兵器の材料であり、同時にきわめて毒性の強いプルトニウムを大量に扱う点でも問題がある。高速炉の開発にもっとも力を入れてきたフランスでは、実用炉の一つ前の段階の「スーパーフェニックス」炉に故障が続発し、アメリカやその他の国々では、実質的に開発を取りやめているが、それはコストが軽水炉の5倍程度かかるという経済的理由によるものとされている。日本には、日本原子力研究開発機構の「常陽(じょうよう)」(茨城県大洗(おおあらい)町)と「もんじゅ」(福井県敦賀(つるが)市)の2基がある(原子炉の開発は、一般に実験炉、原型炉、実証炉の段階を経て実用炉へと進み、「常陽」は実験炉、「もんじゅ」は原型炉である)。しかし、「もんじゅ」は1995年(平成7)12月のナトリウム漏れ事故(当時は動力炉・核燃料開発事業団が所有)と2010年(平成22)8月の炉内中継装置落下事故により運転休止状態が続き、「常陽」も2007年11月の実験装置トラブル以来停止している。高速増殖炉の実用化はますます遠いものとなった。

[舘野 淳]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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化学辞典 第2版

高速増殖炉
コウソクゾウショクロ
fast breeder reactor

略称FBR.核分裂で発生する高速中性子を減速せずにそのまま利用して,核分裂と同時に核反応を起こさせて核燃料物質を増殖させる原子炉.実現されているFBRでは,燃料として,ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX)を用い,高速中性子による 239Pu の核分裂反応でエネルギーを得て,238U の中性子捕獲反応 238U + n239U と2回のβ崩壊によって(239U→ 239Np→ 239Pu),プルトニウムを核分裂により消費された量以上(増殖比 > 1)に増殖する.減速材は不要であるからコンパクトな構造で,冷却材として溶融ナトリウムを使用する.ナトリウムが空気に触れて酸化されることを防ぐために,不活性雰囲気としてアルゴンが原子炉容器に充填される.炉心,ナトリウム一次循環ポンプ,熱交換器を原子炉容器におさめたタンク型と,循環ポンプ,熱交換器とを配管でつなぎ,原子炉容器の外におくループ型の2種類がある.炉出口温度は500~550 ℃ で,軽水炉より高い.日本原子力研究開発機構(旧核燃料サイクル開発機構)が開発を進めている「もんじゅ」(福井県敦賀市)はループ型で,熱出力71万kW,電気出力28万kW の高速増殖炉発電プラントの原型炉である.1994年4月に臨界に達したが,ナトリウム漏えい事故(1995年12月)のため,その後,運転を停止中で,再開に向けて工事が進められている.世界で合計14基のFBRが稼働したが,ナトリウムの取り扱いや,ほかの技術的な問題などから,あるいは設計寿命に達したことによって停止しているものが多い.フランスのスーパーフェニックス実証炉,アメリカのフェルミ1号実験炉などが有名であるが,両炉ともに運転を停止し,解体(デコミッショニング)の段階にある.ナトリウムの処理を先行するが,原子炉本体の解体撤去は放射能減衰を待って数十年後に行われる予定である.このような情勢のなかで,ロシアは核兵器解体によるプルトニウムの処理の必要性などから,FBRの計画が続行中で,原型炉BN-600を運転中である.インドも1985年に運転を開始したFBTR実験炉を受けて500 MW PFBR原型炉を建設中で,中国も実験炉CECRを建設中である.

出典:森北出版「化学辞典(第2版)」
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