●AT&T
デジタル大辞泉
エー‐ティー‐アンド‐ティー【AT&T】[American Telephone & Telegraph]
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
AT&T
エーティーアンドティー
AT&T Inc.
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日本大百科全書(ニッポニカ)
AT&T
えーてぃーあんどてぃー
AT&T Inc.
アメリカ最大の電話電信会社。AT&Tは旧社名アメリカン・テレフォン・アンド・テレグラフ(アメリカ電話電信会社)The American Telephone & Telegraph Companyの略称。愛称はマーベルMa Bell。電話電信事業が民有民営にゆだねられているアメリカでは、純粋に民間企業のAT&Tがその事業を行っている。資産の点でAT&Tは1984年の分割以前はエクソンやGM(ゼネラル・モーターズ)を上回る同国第一の、すなわち世界第一の巨大企業であった。1876年グラハム・ベルが電話を発明したあと、ベルの義父ハッバードが同特許に基づいて各地にベル電話会社(総称してベル・システムとよぶ)を設立し、1878年セオドア・ベイルが同社総支配人になったあと急成長を遂げた。1880年ベル・システムの親会社アメリカン・ベル・テレフォンが設立され、1882年、電話機をはじめとする通信機器の供給を確保するため、それらの製造を行っていたウェスタン・エレクトリックを100%の子会社とした。1885年ニューヨークで設立されたAT&Tが、1900年にアメリカン・ベル・テレフォンの資産と事業を吸収し、ベル・システムの親会社となった。
[佐藤定幸・萩原伸次郎]
訴訟和解と1984年の分割
1956年以来何回となく独占禁止法違反訴訟の対象となったが、1974年から7年越しの訴訟において1982年1月、AT&Tにとって比較的有利な和解が成立した。すなわち、同社資産の3分の2を占める地方子会社22社を同社から分離するが、AT&Tは全国長距離電話網と地方子会社の都市間電話網を引き継ぎ、研究開発部門のベル・ラボラトリーズ(ベル研究所)と製造部門のウェスタン・エレクトリックを依然としてその支配下にとどめることで、法務省との間に最終的な合意をみた。こうして、1984年1月以降、AT&Tは規制分野の市外・国際通信サービスを行うAT&Tコミュニケーションズと、非規制分野の通信・情報機器の開発、製造、販売にあたるAT&Tテクノロジーズの二大部門に組織替えされた。ベル・ラボラトリーズとウェスタン・エレクトリックは後者に組み入れられた。
[佐藤定幸・萩原伸次郎]
1995年の再分割と事業展開
1990年代には、AT&Tは音声・データ通信の分野で世界的にも最大規模の会社となり、インターネットの普及に伴い接続サービスのAT&TワールドネットAT&T WorldNET Servicesの提供も行っている。1995年に規制緩和の影響による競争激化と産業の発展・変化に機敏に対応するため、AT&Tは非中核事業を分離したうえ、三つの上場企業に分割することを発表した。そのうち最大の中核事業であるAT&Tコミュニケーションズ部門は、1996年9月にAT&Tの名称を継ぐAT&T Corp.として独立し、長距離通信と携帯電話事業を柱としてベル・ラボラトリーズの25%の事業を引き継いだ。同社は、世界最大の長距離ネットワークとデジタル式ワイヤレス・ネットワークをもつ。二つめのAT&Tテクノロジーズ部門はルーセント・テクノロジーズLucent Technologies Inc.として1996年に独立し、ベル・ラボラトリーズの事業の75%を引き継いだ。コンピュータ事業部門のNCR(1991年合併)も、1997年1月に分離独立した。
1997年、長距離通信の新興勢力ワールドコムWorldCom Inc.が、AT&Tに次ぐ全米第2位の長距離電話・データ通信会社のMCIコミュニケーションズMCI Communications Corp.を買収したことを受けて、AT&Tは翌1998年にIBMのデータ通信部門を買収した(ワールドコムは巨額の粉飾決算を引き金に2002年7月倒産)。1998年、CATV(ケーブルテレビ)の当時全米第2位のテレ・コミュニケーションズTele-Communications, Inc.(TCI)を、1999年に大手CATVのメディアワンMediaOne Group Inc. を相次いで買収し、地域網を利用したインターネット接続サービスなどの展開を始めた。
一方、国際通信部門では1998年7月にイギリスの電気通信事業会社ブリティッシュ・テレコム(BT)と、両社の国際通信事業を統合した合弁会社コンサートConcert Communications Co.の設立に合意。2000年に正式発足したコンサートは、英米巨大通信企業の事実上の国際部門統合であり、当初年間100億ドルの売上げが期待されたが、回線容量の供給過剰、新興企業との価格競争などにより業績が悪化、2002年4月に合弁が解消された。また、買収したCATVは、回線の老朽化が進んでいたため、大幅な追加投資を迫られ、AT&Tは過剰負債と株価低迷に陥り、2000年にはCATV、法人向け長距離通信、個人向け長距離通信、携帯電話の4事業を切り離す新しい会社分割案を発表。本体である法人向け長距離通信を中核に、各事業を実質的な別会社にすることで、事業再編を図った。
[佐藤定幸・萩原伸次郎]
その後の動き
2005年にアメリカ通信大手SBCコミュニケーションズ(SBC Communications Inc.)がAT&Tを買収した。この合併は2006年に司法省ならびに連邦通信委員会(Federal Communications Commission:FCC)の承認を受けた。なお新会社は社名をAT&Tとし、本社を当初SBCコミュニケーションズの本拠地であるテキサス州サン・アントニオに置いたが、2008年に同州ダラスへ移した。2016年、AT&Tはメディア・娯楽大手のタイム・ワーナー(Time Warner Inc.)を買収すると発表。司法省は反対したが、アメリカ連邦地方裁判所が同省の訴えを退け、2018年に買収が完了した。これによりAT&Tはタイム・ワーナー(現、ワーナーメディア、Waner Media)傘下のCNN(Cable News Network)、有料CATV局のHBO(Home Box Office)、映画会社ワーナー・ブラザース(Warner Bros.Pictures)などを傘下に収めた。2017年の売上高は約1605億ドル、純利益は約298億ドル。
[矢野 武 2018年12月13日]
『ソニー・クレインフィールド著、喜多迅鷹・喜多元子訳『地球最大の企業AT&T』(1982・CBSソニー出版)』▽『関秀夫著『巨人AT&Tの全貌と戦略――世界一の電話会社、情報産業へ』(1983・官業労働研究所)』▽『福間宰著『もう一つの情報巨人AT&T』(1985・東洋経済新報社)』▽『P・テミン著、高橋洋文・山口一臣監訳『ベル・システムの崩壊――20世紀最大の企業分割』(1989・文真堂)』▽『バリー・G・コール編著、情報通信総合研究所訳『AT&T分割後――米国テレコム社会の新時代を評価する』(1992・情報通信総合研究所)』▽『小松崎清介著『ヴェイル――AT&T社長の椅子に2度座った男。』(1993・NECクリエイティブ)』▽『山口一臣著『アメリカ電気通信産業発展史――ベル・システムの形成と解体過程』(1994・同文館出版)』▽『松田裕之著『AT&T(アメリカ電話電信会社)を創った人びと――企業労務のイノベーション』(1996・日本経済評論社)』
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