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Behçet病

内科学 第10版

Behçet病(膠原病および類縁疾患)
(6)Behçet病
 Behçet病は4つの主症状と5つの副症状により診断される.副症状の1つに“回盲部潰瘍で代表される消化器病変”があり,腸管(型)Behçet病は特殊型の1つで,その頻度は全Behçet病の約5%といわれる.消化管病変は全消化管に生じうるが,特に回盲部に好発し,典型病変は円形または類円形の抜き打ち様深掘れ潰瘍(図8-11-2)で,急性の激しい腹痛や下血,ときに穿孔腹膜炎を発症することがある.治療は中心静脈栄養や経腸栄養療法などによる腸管安静と全身管理のほかステロイド,コルヒチンメサラジン製剤アザチオプリンなどの薬物療法が行われる.また近年は抗TNF抗体製剤が有効であるとの報告もある.穿孔例は手術適応となるがしばしば術後再発がみられるため注意を要する.[安藤貴文・後藤秀実]

出典:内科学 第10版
©Asakura Publishing Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの用語は原書刊行時(2013年)の時点での最新のものです.常に最新の内容であることを保証するものではありません。また,権利関係の都合で一部表示できない図や画像があります。

Behçet病(血管炎症候群)
(11)Behçet病
【⇨10-11,15-12-6)-(3)】[尾崎承一]
■文献
Falk RJ, et al: Granulomatosis with polyangiitis (Wegener's): An alternative name for Wegener's granulomatosis. Ann Rheum Dis, 70: 704, 2011.
Jennette JC, Falk RJ, et al: 2012 revised international Chapel Hill consensus conference nomenclature of vasculitides. Arthritis Rheum, 65: 1-11, 2013.
Mukhtyar CL, et al: EULAR recommendations for the management of primary small and medium vessel vasculitis. Ann Rheum Dis, 68: 310-317, 2009.

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Behçet病(リウマチ性疾患)
定義・概念
 Behçet病は,再発性口腔内アフタ性潰瘍,皮膚病変,外陰部潰瘍,眼病変を4大主症状とする原因不明の炎症性疾患である.特殊な場合を除き,一定の部位の炎症が慢性に持続するのではなく,急性の炎症が反復し,増悪と寛解を繰り返しつつ遷延した経過をとるのが特徴である.
分類
 本症は,上記4主症状を示す完全型とそうでない不全型に分類される.また特殊病型として,腸管Behçet病 (entero-Behçet's disease),血管Behçet病 (vasculo-Behçet's disease),神経Behçet病 (neu­ro-Behçet's syn­drome [disease])の3型がある.
原因・病因
 本症の病因は不明であるが,HLA-B51・HLA-A26およびその他の遺伝的素因と何らかの外因が発症に関与すると考えられている.最近,本症の疾患関連遺伝子としてIL-10,IL-23R/IL-12Rβ2が同定された.本症患者には扁桃炎・齲歯の既往が多く,手術・外傷・抜歯などでの増悪がみられることから,ある種の細菌抗原が外因として作用する可能性が考えられている.
疫学
 本症はトルコ,中東,中国,日本を結ぶ帯状のシルクロードに沿った地域に多く,欧米では少ない.わが国における推定患者数は15000人で,男女比はほぼ1:1であり,発病年齢は30歳代にピークがある.HLA-B51との相関が認められ,その陽性率は約53.8%(完全型58.2%,不全型51.0%)である.近年わが国では患者数の減少と軽症化の傾向がある.
病理
 Behçet病の一般的な病理学的所見は,非肉芽腫性の非特異性炎症である.好中球の浸出像が1つの特徴であるが,リンパ球を中心とする反応がより主体的である.
病態生理
 本症の病態形成にあたっては,多少の例外はあるものの,Tリンパ球の異常反応に基づくサイトカインの産生による好中球の機能(活性酸素産生能・遊走能)の亢進が中心的役割を果たすものと考えられている.
臨床症状
 Behçet病の臨床症状は,診断の決め手として重要な主症状と,重篤な臓器障害をきたしうる副症状に集約される.発症当初からすべての症状がそろうことはまれであり,慎重な病歴の聴取と,経過の観察が重要となる.
1)主症状:
a)口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍:口腔粘膜のアフタ性潰瘍はほぼ必発で,初発症状である場合が多い.発赤を伴う境界鮮明で白苔を付着する円形または楕円形の小潰瘍である.痛みを伴い,口唇・歯肉・頬粘膜・舌・咽頭にみられる.通常は約1週間程度で治癒する.
 b)皮膚症状:結節性紅斑と毛囊炎様皮疹が最も多くみられる.皮下の血栓性静脈炎は下肢に好発する索状の皮下硬結で,結節性紅斑を合併することが多い.また,皮膚の被刺激性が亢進しており,虫刺され・外傷などにより容易に化膿する傾向がある.
 c)眼症状:炎症が前眼部のみに起こる虹彩毛様体炎型と,眼底の病変を伴った網膜ブドウ膜炎型に大別される.前者では,視力低下・羞明感を自覚し,前房中に炎症細胞を認め,ときには前房蓄膿(hypopyon)を生じる(図10-11-1).一方,後者では霧視・飛蚊症をきたし,視力低下の程度が強く,ときに視力予後を左右する.
 d)外陰部潰瘍:一般に発病初期に多くみられ,陰茎・陰囊・小陰唇・膣壁などに口腔内アフタに似た境界鮮明の潰瘍を生じる(図10-11-2).ときに鼠径部の皮膚にも潰瘍形成が及ぶことがある.
2)副症状:
 a)関節炎:一般に四肢の大小関節に非対称の腫脹・疼痛(ときに発赤)をきたし,約1~2週で消失し,関節の変形・強直や骨破壊をきたすことはまれである.
 b)副睾丸炎:HLA-B51と強く相関する傾向がある. c)消化器病変(腸管Behçet病):食道から直腸までのすべての部位に潰瘍性病変を生じうる.最も多い腸管病変では,定型的には回盲部に深い潰瘍を形成し,腹痛・下血・腹部腫瘤を示し,ときに発熱を伴う.
 d)血管病変(血管Behçet病):静脈系が侵されやすく,大静脈や主幹分枝の血栓性閉塞が典型的で,特に下肢深部静脈に好発し,下肢の腫脹・疼痛・浮腫をきたし,ときに肺塞栓を併発する.また,胸腹部大動脈・股動脈での動脈瘤形成や中型主幹動脈の血栓性閉塞が認められる.肺動脈瘤による喀血はまれだが多くは致命的である.
 e)神経病変(神経Behçet病):神経病変は約10%の患者に出現する.定型的には,脳幹・基底核周辺部・小脳を好発部位として比較的急性に発症し,発熱・頭痛などの髄膜炎様症状を伴う(急性型).髄液検査では細胞数・蛋白濃度の上昇を示す.MRIでは,病変部位がT2強調画像あるいはFLAIR画像の高信号域として描出される(図10-11-3).ときに多発性硬化症との鑑別が問題となる.一方,一部の患者では,慢性進行性の小脳失調・認知症様の精神神経症状がみられ,治療抵抗性で徐々に進行し,ついには人格の荒廃をきたしてしまう(慢性進行型).こうした例では持続的に脳脊髄液中のIL-6が高値を示し,MRIでは脳幹の萎縮が特徴的である(Hirohata,2012).
検査成績
 皮膚の被刺激性の亢進を反映する針反応(pathergy test)は本症に特異性が高い.無菌の注射針を前腕部の皮膚に刺入し,24~48時間後に同部の発赤・膿疱の形成を認めれば陽性である.活動期には末梢血白血球増加・赤沈の促進・血清CRP陽性・血清補体価の上昇などがみられる.抗核抗体などの自己抗体は通常陰性である.
診断
 診断は1987年に改訂された厚生省特定疾患調査研究班の診断基準により行われている(表10-11-1).
鑑別診断
 Behçet病の鑑別診断は,1987年の厚生省研究班の診断基準の補遺に詳細に記載されている(表10-11-1).その中でSweet病は,高熱・末梢血好中球増加・顔面および上肢の境界鮮明な浮腫性隆起性紅斑・真皮中層の好中球浸潤を特徴とする疾患で,口腔内アフタや陰部潰瘍などのBehçet病の主症状も生じることから鑑別上問題となる.Sweet病では上記のすべての症状が同時に出現する傾向があり,悪性腫瘍や自己免疫疾患(関節リウマチ・Sjögren症候群)の合併が多い.
経過・予後
 口腔内アフタで初発することが多い.急性の炎症が反復し,増悪と寛解を繰り返しつつ遷延した経過をとるのが特徴である.神経・血管・腸管の病変は遅発病変であり,Behçet病発症後数年を経過して出現することが多い. 眼病変は視力障害を残し患者のQOLを著しく阻害する.生命的予後に影響を及ぼすのは,神経・血管・腸管の特殊病型である.
治療
1)治療の基本方針:
視力障害を残す眼病変,生命予後に影響を及ぼす特殊病型(神経・血管・腸管)に対しては積極的な薬物療法を行うが,口腔内アフタ,外陰部潰瘍,皮膚病変に対してはステロイドの外用を中心とした局所療法で対応する.コルヒチンは好中球機能を抑制することから,基本治療薬として頻用されるが,副作用として下痢・乏精子症・月経異常・催奇性・筋症状に注意する必要がある.
2)病態に応じた治療の実際:
 a)眼病変:眼病変に対しては,散瞳薬の点眼,副腎皮質ステロイドの点眼や結膜下注射などに加えて,発作予防として薬物の全身投与を行う.この際,コルヒチンやシクロスポリンで効果が不十分な場合は,インフリキシマブに切り換える.副作用として,シクロスポリンでは腎障害・髄膜脳炎様症状,インフリキシマブでは投与時アレルギー反応や結核の再活性化に注意が必要がある. b)神経・血管・腸管病変への対応:コルヒチンに加えて,ステロイドの全身投与が行われる.症状が軽快し安定したらステロイドを減量するが,急激な減量は眼病変の増悪を誘発するので注意が必要である.慢性進行型の神経Behçet病に対してはメトトレキサートの少量パルス療法やインフリキシマブが有効である. さらに,血管病変に対しては抗凝固療法や抗血小板療法を行う.また腸管病変に対してはサラゾスルファピリジンやメサラジンの投与が有効な場合が多い.難治性の腸管病変にはインフリキシマブが用いられる.血管病変や腸管病変においては外科的治療の適応となる場合がある. c)日常生活の管理:本症の増悪因子である気象条件・感染・手術・外傷・月経・ストレスについて指導する.また,齲歯やその他の感染巣がある場合は必ずその治療を行わせる.さらに,毎食後必ず歯磨きと口腔内の洗浄を欠かさないで行うよう指導する.[廣畑俊成]
■文献
Behçet病-最近の進歩と明日への展望.医学のあゆみ,164(1),1993.
広畑俊成:医学と医療の最前線:Behçet病に対する新規治療. 日内会誌,98: 1140-1146, 2009.
Hirohata S, Kikuchi H, et al: Clinical characteristics of Neuro-Behcet’s disease in Japan: a multicenter retrospective analysis. Mod Rheumatol, 22: 405-413, 2012.

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Behçet病(膠原病・炎症性疾患に伴う神経系障害)
(3)Behçet病
 再発性口腔内アフタ,結節性紅斑,ブドウ膜炎,陰部潰瘍を4大症候とする原因不明の炎症性疾患であり,ときに神経症状が先行・主徴となることがある(神経Behçet病).髄膜炎や散在性脳脊髄炎の病像を呈し,静脈系に目立つ白血球集簇を伴った血管炎の病理像を呈する.HLAB 51を有することが多い.神経Behçet病の場合はステロイド療法が優先的に行われるが,治療抵抗例には免疫抑制薬の一種であるメトトレキサートの投与やTNF-α阻害薬であるインフリキシマブの注射が試みられている.しばしば鑑別に苦慮する病態として,HLAB 54を背景にすることが多い神経Sweet病がある.発熱,皮膚の浮腫性紅斑,髄膜脳症を呈するが,本疾患はステロイド薬によく反応する.【⇨10-11】[池田修一]
■文献
膠原病に伴う神経・筋障害.日本内科学会雑誌,99(8), 2010.
膠原病と神経疾患—基礎から臨床まで.Clinical Neuroscience, 28(2), 2010.

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