●RSウイルス感染症【あーるえすういるすかんせんしょう】
日本大百科全書(ニッポニカ)
RSウイルス感染症
あーるえすういるすかんせんしょう
RS virus infection
パラミクソウイルス科に分類されるRSウイルスrespiratory syncytial virusによる急性呼吸器感染症。おもに乳児や幼児が感染することが多く、2歳までにほぼすべての乳幼児が感染するといわれている。冬季に流行し、2日から1週間ほどの潜伏期間の後、鼻汁や咳(せき)などの症状がでる。38~39℃の発熱を伴うこともあり、1歳未満の乳児では気管支炎や肺炎に至ることもある。先天的に肺や心臓に疾患をもつ小児や、免疫能に劣る新生児が感染すると重症となり、脳炎・脳症を急性に発症して突然死することもある。感染抗体が長く持続せず、再感染をくり返すことが多い。また母親の移行抗体も感染防御には作用しないが、年長になるにしたがって免疫を獲得し、やがて感染しても症状は軽くなる。ただし、成人になって再感染することもあり、とくに体力や免疫機能が低下した高齢者への感染に警戒が必要である。予防のためのワクチンはまだ開発されていない。また、特効薬もなく、治療は対症療法を行う。感染経路は飛沫(ひまつ)感染と接触感染であるため、予防には、一般のかぜと同様に手洗いやうがいが効果的である。
[編集部]
出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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六訂版 家庭医学大全科
RSウイルス感染症
アールエスウイルスかんせんしょう
RS virus infection
(感染症)
どんな感染症か
RSウイルスによる乳幼児の代表的な呼吸器感染症です。毎年、冬季に流行し、乳児の半数以上が1歳までに、ほぼ100%が2歳までに感染し、その後も一生、再感染を繰り返します。
症状の現れ方
感染後4~5日の潜伏期ののち、鼻汁、
すべての患者さんの1~3%が重症化し、入院治療を受けます。心肺に基礎疾患がある小児は重症化しやすいとされます。通常は数日~1週間で軽快します。
新生児も感染して発症し、がんこな無呼吸を起こすことがあるので注意が必要です。また、細気管支炎にかかったあとは、長期にわたって喘鳴を繰り返しやすいといわれています。
検査と診断
冬季に乳児が鼻汁、咳に引き続いて「ぜいぜい」してきたような場合には、その30~40%がRSウイルス感染症によると考えられます。鼻汁材料を用いたRSウイルスの抗原検出キットが使用可能ですが、入院児のみが保険適応になります。
治療の方法
対症療法が主体になります。発熱に対しては冷却とともに、アセトアミノフェン(カロナール)などの解熱薬を用います。喘鳴を伴う呼吸器症状に対しては
脱水気味になると、
予防の方法
早産未熟児、慢性肺疾患児、さらに血行動態に異常がある先天性心疾患児に対して抗RSウイルス単クローン抗体(パリビズマブ〈シナジス〉)が予防的に投与される場合があります。入院率の低下などの効果が確認されています。
病気に気づいたらどうする
RSウイルス感染症は、保育所などで施設内流行を生じやすいので、注意が必要です。また、家族内感染も高い率で起きます。飛沫や接触により感染するので、患者さんの気道分泌物の付着した物の扱いに注意し、手洗いとうがいを励行してください。
堤 裕幸
出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
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